歴史ノンフィクション(読書録)
長崎に原爆が落とされた翌日、B29搭乗員だった米兵捕虜が斬首された。 見習士官として上官の命令に従った青年左田野は、戦後、絞首刑をおそれ逃亡をはかる。 潜伏、残された家族への過酷な取り調べ、そして―。 戦争の罪と罰を問う緊迫のノンフィクション。 …
申し訳ないがスペイン人と聞くと、いざ戦争となればその恐ろしい残忍性が浮かんでしまう。コルテスのアステカ帝国、ピサロが目をつけたインカ帝国など、彼らが何をしたか読んでみるがいい。文明を滅ぼし抹殺し殺戮と虐殺を繰り返したスペイン人は、ナポレオ…
知らなかったが石橋湛山は明治17年生まれで、東條英機、山本五十六、石黒忠篤と同年齢だとか。 その石橋の理論は東條とは正反対なものになる。 「されば若し我国にして支那又はシベリアを我縄張りとしようとする野心を棄つるばらば、満州、台湾、朝鮮、樺太…
何年か前に京都にある臨済宗天龍寺派別格地の等持院に行ったことがある。 ここは足利尊氏の墓所として有名だが、私の目的は大正10年、マキノ省三が等持院塔頭跡地に牧野教育映画製作所と映画撮影所を設けた跡地を見ることにあり、全盛期の阪東妻三郎も通った…
ジョヴァンニ・ヴァティスタ・シドッチという伴天連を知っているだろうか。 私はまったく知らなかったが、歴史的には非常に有名なイエズス会の宣教師らしい。 捕まれば死罪もあり得る野蛮な日本に、単身上陸するなんざ大した度胸というしかない。 ローマを出…
以前、大戦中に派遣されたビルマでの野田毅少尉日記を読んでレビューを書いたが、今回はB・C級戦犯として米軍に逮捕、その後中国に引き渡され、北京で国民党政府の裁判を受ける身になった裁判記録と獄中日記になる。 確かB・C級戦犯では1千名ほどが死刑にな…
女流ノンフィクション作家として、昔は角田房子、澤地 久枝、瀬戸内晴美。 現在はノンフィクション作家、堀田恵子、梯久美子、そして森まゆみ。 この6人は絶対な存在で讃辞を送りたい。 資料を虱潰しにあたる著者の凄まじい執念は、私のように浅学の徒にはや…
余談だが岡倉天心は横浜生まれで、福井藩の下級武士らしい。 してみると、私の先祖とは同藩ということになるのか。 ともあれ、世上言われるところの桁はずれな天心の生涯というものを知らない。 評伝好きな私だが、彼のものは読んだことがない。 少し勉強す…
私がこれまで尤も感動した遺書と言えば、沖縄方面根拠地隊司令官だった太田実中将の訣別電報と、川端康成も絶賛していた円谷幸吉の遺書です。 本書はかなり昔に読んだものですが、思い立って書棚を探してみたものの見つかりません。 或いは処分したのかも知…
そうか、「太平天国の乱」とは日本でいえば幕末に当たるわけだ。 人類史上最悪の内戦で、14年に及ぶ闘いは江蘇省だけでも死者2000万人というから凄い。 中国人は残忍だと思っていたが清朝軍も太平天国軍もまるで虫けらのように殺戮を繰り返す。 太平天国とい…
本書は、以前の女主人から読み書きを習った奴隷少女が、自らの苛酷な体験を綴った稀有な物語で、世界的ベストセラーになった本らしいが、私は最近まで知らなかった。 これまで奴隷制度に関してそれなりに知っていたが、奴隷本人が語っているために、その体験…
過去、フランス革命に関する本は2,3冊よんだだろうか。 然し、これはあくまでも革命の点の部分で、線で繋ぐものは何も読んでいないため、革命勃発からナポレオン登場に至る経緯は全く知らない。 然し乍ら佐藤賢一氏が『小説フランス革命』18巻を書いている…
【ウィーン14日共同】ウィーン市警察当局者は14日、日本人の男性指揮者(33)と友人の芸術専攻の女子大生(19)の水死体がウィーン近郊のドナウ川で見つかったことを明らかにした。同市三区警察署のサムエリ法務部長らによると、市内のドナウ運河で指揮者が…
私にとって団塊の世代とはマルキストかヒッピーか、大別すればいずれか二つに属してしまう種族になってしまう。中学生の頃などは、何故、あの世代の人たちは機動隊とぶつかり合っているのか理解できなかった。革マル派、連合赤軍といっても、主義主張を理解…
本題を前に少し調べてみたがアメリカ社会に於けるプロテスタントの割合は、1955年に70パーセントに達し、それが戦後はもっとも高い数字だったとある。では、戦前はどうだったのか。いや、新大陸発見後の経過を辿ると、そもそも先に渡ったのはカトリックだっ…
今の時代、まだ秘宝館なるものが全国にあるのかどうか、昔はテレビCMなどでも放映していたものだが、最近は専ら聞かなくなった。 確か昭和48年だったと思うが富士の五合目に行った帰り、富士五湖を見て、何処へやらの秘宝館に入った記憶がある。 初めてのこ…
愛知県に小牧市なる所があるが、位置的には名古屋の北にあたり、特に観光名所になるようなものはない。 シンボルと言えば標高86mの小牧山ぐらいで、古くは織田信長がこの地に城を建て、信長の死後、覇権を巡り秀吉と家康によって争われた小牧・長久手の戦い…
何とも気の重たくなる本だ。 戦後、進駐軍が上陸する前に重要機密書類は陸軍省、参謀本部などで多く焼却されてしまったが、満州事変期の外交機密費の資料が残存していた、それを読めってか! 資料には在中国公館と本省の間の往復電報や機密費の領収書が収録…
20世紀最大の謎のひとつ、ロマノフ王朝最後の皇帝ニコライ2世が革命政権によって銃殺された時、家族全員が殺害されたのかという疑問が長らく分からままになっていた。 理由は皇帝一家の遺体がその後、数十年間発見されなかったことにある。 中でも信憑性を持…
人間とはいったい何なのか? 韓非子のいう、 「君主と人民の利害は相反するゆえ、人民を法で規制すべきこと」 即ち法治国家こそ人類には必要な制度ではなかろうか。 つまり、荀子(じゅんし)の言うところの性悪説の立場を取っている。 人間の本性は悪なりと…
歴史関連の本でよく見る「と言われている」とか「そう伝わっている」という記述はどういうことなのか、かねてから疑問に思っていた。 古代や中世の話しならともかく、近・現代史においては甚だ曖昧な表現だ。 歴史上の大問題として光秀謀反の真相、内匠頭松…
さして能力のない私は時に買う本を侮ってしまうことがある。 何も珍しいことではなく、昔からよくあることで驚きもしないが、本書もその類で些か疲れた。 特務機関、亜細亜産業、キャノン機関、横浜、密貿易と、戦後、父が関連した事柄の多いことから興味を…
私が最も忌み嫌う事件事故の中のひとつに文化財の焼失、又は破壊という行為がある。 勿論、故意によるものばかりではないので、残念と悔しがる以外にないが,、例えばこんな記事。 2013年10月19日夜、オランダ北部の町レーワルデンで、第1次世界大戦中の女ス…
古本屋でよく見かける光景で、細い通路の奥に番台みたいなものがあり、そこに店主が座り、比較的高価な本は、その店主の後ろの棚に並べてあることがある。 勿論、店主に頼まないと見せて貰えず、そもそも取れない所に置いてある。 必ず買うとは限らない本を…
著者の本を読むのはこれで二度目になる。 『731―石井四郎と細菌戦部隊の闇を暴く』を数年前に読んだが、とにかく徹底した調査力で、個人でここまで出来るのかと感心するほど凄い。 今回はどうなのか、因みに著者の住まいはブルックリンだとか。 本作を書き上…
う~ん、疲れそうな記事になりそうだ(汗 まず、この事件を語る上で当時の政治状況から話すのが得策かと思うので、そこから始めたい。 舞台は大正15年10月30日の東京。 この年は12月25日から昭和と改元。 政局は与党憲政会が若槻内閣の下、不安定ながらも舵…
副題として『暗殺の天使シャルロット・コルデ』というタイトルがある。 端的に言えばこの絵が全てを象徴している。 ジャック=ルイ・ダヴィッド作『マラーの死』 殺害されているのはマラでもマーラーでもない。 フランス革命の指導者ジャン=ポール・マラー…
安政元年(1854)3月28日午前2時、吉田松陰とその従者、金子重輔はペリー艦隊の旗艦に小舟で接近、密航を企てたが甲板からは船員の、 「船から離れろ」 という支持。 二人は諦めず、舷側の梯子にしがみ付くが、船員らは上から長い棒で舟を突付き荷物と太刀を…
政府軍が西郷ら数百人の立て篭もる城山に最後の総攻撃を仕掛けたのは明治10年9月24日午前4時。 既に西郷軍には、この日の総攻撃は通告されており日本史にも類例のみない悲痛な戦いの終焉が近づいていた。 そして戦闘開始、雨あられと銃弾が打ち込まれる中、…
長い天皇家の歴史の中でも壬申の乱を除けばどうだろうか、信長時代の正親町天皇、足利尊氏と戦った後醍醐天皇、幕末の動乱に苦悩した孝明天皇、日清、日露を乗り切った明治天皇、そして天皇制すら危ぶまれ激動の時代を生きた昭和天皇。 しかし、国土が焦土と…