愛に恋

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インディアスの破壊をめぐる賠償義務論: 十二の疑問に答える  ラス・カサス

コロンブスを別にすればこの時代の人で知っているのは、インカ帝国を征服したフランシスコ・ピサロ、悪名高いエルナン・コルテス、そしてラス・カサスしか知らない。全員が悪党だと思っていたが、ラス・カサスはドミニコ会宣教師で、本書は彼のスペイン人に対する膨大な告発書だ。ありとあらゆる宗教書、「出エジプト記」「マタイによる福音書」などを引いて、いかにスペイン人が残虐で非人道的なことをしたか、手ひどく告発している。先住民は偶像崇拝者で異教徒だったため、まるで犬のように扱って生命を奪っても罪にならないと思っている。帝国、王国の管轄権を一つ残らず剥奪しても正しいと思っていた。本来スペイン人は教皇から福音を公布し、信仰を拡大するのが目的で来たはずだが、場所を問わず、インディオを酷使し、ペルー諸王国においてインディオの置かれている状況は、売買の対象とされる奴隷と比較にならないほど劣悪だった。修道士たちはインディオが破滅させられ、虐待で死に絶えていく光景を目の当たりにし、その事実を明確に説きあかし、嫌悪し、スペイン人の行動をことごとく圧政的で忌まわしいものだと糾弾している。そしてアタバリバ王を捕らえ、王ともども7000人ものインディオを殺害している。ある王国ではたった170人のスペイン兵で40000万人のインディを捕まえ殺害したとある。宣教師たちはインディオイスラム教とは違い、一度もカトリックを攻めたことがないので、異教徒として討伐するには当たらないとスペイン王に直訴しているし、国王も残虐行為を忌み嫌っていた。インディオにしてみればキリスト教というのは財産、領土を奪い取ることを目的とした宗教だと判断していた。ペルーの人口は1520年ごろ、おおよそ886万人だったが、それが植民地政府による実態調査が行われた1570年ごろには129万人まで減少している。実に85%の減少率だ。ラス・カサスの死後、ペルーで反ラス・カサス運動が展開され、最後のインカ王が1572年捕らえられ処刑されたことで、インカ帝国は名実ともに滅亡した。こんなことは許されまい、いったいどうしてくれよう。私はてっきり現在のスペインとペルーの補償問題の本かと思っていたが、大きな間違いだった。たとえばドイツとポーランド、日本と韓国のように。現在、両国の関係、補償どうなっているのだろうか。