美術関連・写真(読書録)
かれこれ40年以上前のことだが、仕事帰りにカーラジオで『小沢昭一的こころ』という番組をよく聴いていた。小沢昭一という人は落語家ではないが、めっぽう話術に長けた人で、何でもないような話を面白く聞かせる天才のような人だった。俳優どころかエッセイ…
想像と創造に富む人は、誰だって模倣から始まると思う。 ギタリストもピアニストもいきなり作曲するのではなく、先ずは誰かの曲を弾くことから始める。 画家にしても同じことで、上手ければ上手いほど模倣そしたくなるものだろう。 個人的なことながら、私の…
ヴィクトリア朝にヴィクトリア女王が君臨するが如く、1920年代のモンパルナスに君臨したキキ。 モンパルナスに集う芸術家たちを魅了して留まるところを知らなかった人気。 ヘミングウェイ、キスリング、ジャン・コクトー、藤田嗣治、そしてマン・レイなど錚…
明治以降、東京は二回も灰燼に帰している。 即ち震災と戦災なり。 許せないのは戦災だ。 東京のみならず我が国土の大半を焦土と化した無差別爆撃は、非戦闘員たる無辜之民が暮らす市街地に雨あられと爆弾、焼夷弾を落とすという無差別殺戮で、これが戦争犯罪…
長く『命短し恋せよアート』として、絵画シリーズを書いているが、私とて嫌いな画家が居ないわけではない。 その一人が、以前、長ったらしい伝記も読んだ、ラファエル前派のダンテ・ガブリエル・ロセッティ。 写真の女性はウィリアム・モリスの妻でジェーン…
芸術作品を紐解くに、先ずはベースに歴史ありということをつくづく思う。 何も知らず私小説を読んでいて、後になって、あの小説のモデルは誰々だったんだと知る事は多々あるが、その時点では既に内容を忘れているからして残念に思うことしきり。 本書には参…
これを読むと近代の画家たちは、上京生活に於いて塗炭の苦しみを味わっていたことが良く解る。 今に名の残る著名な人は、常に衣食住に苦しみ、世間の洋画に対して理解も乏しく悲惨な末路を辿った人が多い。 故に情報量も多く、これはなかなか骨の折れる本だ…
扨て、いよいよ最終巻だが、本当に長くかかってしまった。 この巻では「黒い絵」と言われるデッサンについて紙数を割いているが、ゴヤのデッサンは、その画帳に自らつけた番号によると313枚あった筈で、現在その存在が確認されている物は271枚、だが現物を見…
遣って来ました第三巻です。 先ずもって、私を驚かせたのは61ページにあるこの記述、ある結婚式に出席したしていた家族の中に、17歳のレオカーディア・ソリーリャ・ガラルサという極めて美しい少女がいた。 レオカーディアは直ぐイシードロ・ウェイスという…
扨て、第二巻だが、先ずメモリたいことから書いていく。 今日ではすでに完全に忘れさられてしまったことであるが、宗教画を描く画家は、細心な注意を払って宗教図像学上のもろもろの約束を守らなければならなかったのである。慎重な上にも慎重でなければなら…
以前から、どうも苦手意識のある作家に辻邦生と、この堀田善衞を自意識的に挙げていたが、ブックオフで『ゴヤ 全4巻』があるのを見て衝動買いをしたままお蔵入りさせていた。 然し、いつまでも棚の肥やしにしているわけにもいかず、どっこらしょと重い腰を上…
タイトルの『日本のゴーギャン』というのはミステイクではなかろうか。どこに日本のゴーギャンたり得るものがあるのか。ゴーギャンのタヒチに引っかけて、単に田中一村が奄美大島へ移住したというだけのこと、一村がそれに倣ったわけでもなんでもない。 また…
「いかなる物であれ美術市場で不足をきたす物があれば、そしてそれに応じて高値を呼ぶものがあれば、そこに必ず偽造行為が登場する」 フランク・ジェウェット・マザーという批評家が言っているらしい。 価値のある物の偽造とは、需要と供給の法則の副産物に…
あり得もしない妄想を思い描いたとして、私の場合、アラブの王様のようなとてつもない大金持ちと仮定した場合の話だが、あり余る財力で美術品や骨董品を買い漁り、個人美術館を作る、そんなことを考えてみたりする。 入場者は全て会員制で、私はいつもオーク…
本題を前に昨日の『セクシー川柳』に関連して私も、女性の立場にたって一句考えてみた。 おなごには ふにゃ珍へのこ 用はなし お後がよろしいようで。 数年前から行きつけにしている歯医者に、とても気になる女性スタッフが居る。 歳の頃は、まあ22・3歳とい…
◆T15. 笛吹童子 (ステレオ) ひばり児童合唱団 懐かしいですね、60歳前後の方ならまず知らない人が居ないぐらい有名な歌で、映画化もされ、東映のスターが出演していました。 東千代之介 中村錦之助 月形龍之介 大友柳太朗 元々は確かラジオ番組だったらし…
伝記本や歴史ノンフィクションなどを読んでいると、故人の交流関係の中に、突然興味を引く人物が現れることがある。 作家、画家、音楽家など、とにかく生き様に興味を持つと、その人物を尋ねたくなるのもこれまた人情。 今回の訪問者は村山槐多、最近まで全…
時空を飛び越えて、維新を生きた人と名刺交換でもしているような錯覚を覚える本だ。 幕末の侍や明治初年の裕福な日本人、または外人の写真が300枚余も掲載されている。 以前、鎌倉の鶴岡八幡宮や大仏の前で映る侍の写真を見たことがある。 勿論、二本差しだ…
そうなんだ! 「すべての芸術はエクスタシーに通じる」 陶酔、恍惚、艶、やはり芸術にはエロチシズムの妙なる調べが流れている。 何につけ絶頂感とは達成感と同義語だから作品も、その極みに達したとき芸術も一層輝く。 しかしながら芸術の世界では、そのエ…
佐伯祐三絵画の真贋論争? 聞いたことないな。 いや、ただ私が知らないだけの話しだが。 ならばということで早速古本屋へ。 見つけたはいいが、何やら小難しそうな本。 本題に入る前に疑問点が二つ! 大正9年9月1日、祐三の父祐哲が58歳で死去。 死の直前、…
これは現在のルーブル・グランド・ギャラリー。 しかし1940年、迫るドイツ軍のため引っ越しを余儀なくされた。 その結果がこの状態。 しかし、日本のように絨毯爆撃されていたら ユベール・ロベールが描いたようなことになっていたかも知れない。 フェルメー…
まさかゴッホの手紙を読むことになるとは考えてもみなかったが、しかし以前、一度だけ、この大作に挑戦してみようかと思ったことがある。 2001年、みすず書房から出たこれだ! ゴッホ没後100年を記念して1990年にオランダで刊行、翻訳出版されたものだがこれ…
弟テオに送った膨大な手紙は、往復書簡の形を取っていないため、一方的にゴッホのものだけを読んでいるので、どうも話が解りにくい。 ましてや殆んどの登場人物を知らないので尚更だ。 熱意や美術論で押しまくり、南仏アルルを拠点に印象派の工房を作るのが…
「芸術のうちに、神に値いする人間の偉大な資質が含まれないとしたら、それは凡庸陳腐な言葉と化すだろう。人類の最も気高い知彗から生まれた力強い心理や理由さえも、大衆にはなんの理解も印象さえも与えず、芸術家はそれをはっきり示そうと絶えず神の救い…
フリーダ・カーロとはラテン・アメリカで最初にルーブルの殿堂入りを果たした画家らしい。 彼女のあまりに壮絶な人生は数ある美術絵画史の悲喜劇を超越して余りある。 本書は20年以上前に書かれたものだが通読した感想は一言で「痛い」に尽きる。 デートの最…
明治以降、西郷隆盛を除けば歴史に名を留めた人物の写真は殆ど現存すると思うが、しかし、その歴史上の人物本人が撮った写真というと意外と公表されていない。 私の知る限り有名なところでは徳川慶喜と萩原朔太郎ぐらいだろうか。 慶喜の場合はもっぱら風景…
昭和の初め、葛飾北斎の「隅田川両岸一覧」に触発され、憑かれたように絵巻の制作にのめり込んだ版画家の作品で総延長60メートルに及ぶ桁外れの大作。 隅田川沿いの街を一本の細筆を使って墨だけで描き、昭和10年9月2日、その男は忽然と姿を消す。 男の名は…
スペイン風邪で島村抱月が死んだのは1918年(大正7年)11月7日。 大山捨松も大正8年2月18日に同じ病で斃れ、全世界では約5000万人が犠牲になり日本でも48万人が命を奪われたとか。 第一次大戦の最中で、その一人にエゴン・シーレも含まれていたわけだが、6…
戦前から高度成長期あたりの、まだ貧しかった懐かしい日本の姿を捉えた写真集で木村伊兵衛さんや土門拳さんらが写した生きる逞しさをカット切りしたような作品。 上の写真は当時の子供たちに人気のあったチャンバラごっこ、この時代、正義の味方は鞍馬天狗で…
本書を読んで、あるひとつのことを学んだ! それは、もう二度とみすず書房には手を出さないこと。 これで三度目となったみすず書房。 『イェルサレムのアイヒマン 悪の陳腐さについての報告』ハンナ・アーレント 『メリー・スチュアート』 ツヴァイク 『D.G.…