愛に恋

    読んだり・見たり・聴いたり!

2017-11-01から1ヶ月間の記事一覧

泥まみれの死 沢田教一ベトナム写真集

全世界に衝撃を与えたサイゴンのアメリカ大使館前で自らガソリンを被って焼身自殺したベトナム人僧侶の映像を見たことがある人も多いと思うが、調べてみると、あの日は1963年6月11日だったとか。 時は南ベトナム初代大統領ゴ・ディン・ジエム政権下。 独裁国…

僕の父はこうして死んだ 山口正介

私の書庫に並ぶ本は相対的に言えば、死にまつわる蔵書とも言えるかも知れない。 多種多様な職業、洋の東西を問わず様々な死を読んできた。 武将、志士、革命家、思想家、芸術家、政治家、軍人、画家、詩人、歌人、小説家、俳優、医師、冒険家、音楽家など。 …

ニジンスキーの手記 完全版 ヴァーツラフ・ニジンスキー

手記は第一次大戦後の1919年、29歳の頃に書かれたものだが、この若さで既に精神を病んでいる。 ニジンスキーは、驚異的な脚力による『まるで空中で静止したような』跳躍、中性的な身のこなしなどにより伝説となったとあるが、彼の何がどう天才的なのか無論、…

愛の顚末 純愛とスキャンダルの文学史 梯久美子

『愛の顛末』とは、ややありきたりなタイトルだが、最近、私の中では赤丸付急上昇で一躍トップの座に躍り出た梯久美子作と聞いて、やはり買わずにおれなんだ。 帯にはこのようなフレーズが! こんなにも、書くことと愛することに生きた! その作家は以下の12…

世界の[下半身]経済のカラクリ 門倉貴史

国際社会は現在、性産業に対して二つの大きな問題を抱えている。 ひとつはポルノは解禁した方が良いのかという問題。 北欧のように子供の頃から性教育をすることによって望まない妊娠や性に対する精神的な免疫力を早い時期から養う。 二つ目は、セックス・ワ…

原首相遭難現場

大正10年、原首相が東京駅構内で暗殺されたことは、いつの頃からか知ってはいたが、その現場に目印が付けられていることを、これまた何で知るようになったか覚えてない。 20数年前ぐらいだろうか、児島 襄さんの『平和の失速』という本で事の詳細を知ったが…

鍵 谷崎潤一郎

『鍵』とは何の鍵なのか全く予備知識のないまま買ってしまった。 果たして、それが却って良い結果の読後感だったかも知れない。 端的に言えば夫婦の性愛を謳っているのだが、谷崎が取った手法が実に面白い。 夫はカナで妻は平仮名を用い日記を書く。 互いが…

父西条八十は私の白鳥だった 西条嫩子

何をきっかけにか忘れたが、20歳の頃、近現代詩と妙に肌合いの良さを感じた一時期があった。 中でも天才、萩原朔太郎の詩に痛く感銘を受けた私は、続けて立原道造、佐藤春夫、室生犀星、中原中也と読み漁り、そして辿り着いたのが西条八十。 私にとっては・…

幕末長州藩の暗闘―椋梨藤太覚え書 古川薫

幕末、猛威を振るった尊王攘夷の運動は水戸藩から始まったが、武田耕雲斎を首領とする水戸天狗党の乱が壊滅するに及んで、騒乱の火種は長州に移った。 その一部始終は長州藩の正史として維新後、『防長回天史』という名で編纂されたが、これはまさに勝者の歴…

ゴッホ 最期の手紙

昔から思っていることだが、もし、宮沢賢治に天才性を認めるとしたら、彼の小説のネーミングにあると思うのだがどうだろう。 『銀河鉄道の夜』『よだかの星』『セロ弾きのゴーシュ』などどれも素晴らしい。 中でも私は『銀河鉄道の夜』のファンで、思えば小…

チェ・ゲバラの遥かな旅 戸井十月

その昔、ジョン・フォード監督作品で『リオ・グランデの砦』という映画があったが往年の西部劇ファンならご存じかと思うが何しろ1950年作品と古い。 リオ・グランデとはスペイン語で大きな川を意味するが1967年10月8日、ゲバラはリオ・グランデのユーロ渓谷…

戒厳令下チリ潜入記―ある映画監督の冒険 G・ガルシア・マルケス

1973年9月11日のこの日、チリで起こった大事件のニュースを新聞で知った私は、その記事を切り抜いて長い間、保管していた。 それは合法的に政権の座に就いた社会主義のアジェンデ大統領がピノチェト将軍率いる軍部クーデターで崩壊し、全世界に衝撃を与えた…

看守が隠し撮っていた 巣鴨プリズン未公開フィルム

刑務所、拘置所、収容所などのイメージといえば、広大な敷地を高い塀で囲み、その上には鉄条網があり、監視塔で見張りの兵が銃を持って四六時中見張っている。 草はあっても樹木はなく、運動不足を解消するための小さな運動場、または散歩コースがある程度で…

妻への手紙―藤村 静子よりの手紙を添えて

写真で見る島崎藤村という人は温厚な紳士、理知的で、これぞ文豪という風貌であり、詩人としての才能も素晴らしく、一見、非の打ちどころがなさそうな人物に見えるが、生活力、品行、世間的な評価を考えると、やや問題がある、いや、あったのかも知れない。 …

探訪 樋口一葉

結核が細胞を蝕み、備わった天性の才能を道ずれに三途の川を渡る時 死への恐怖に抗う術なし 遺されし家族への憐憫 命の蝋燭の灯は目減りし喀血が体力を奪い 幽鬼漂う中、朧に生きているような私 鏡に映る青白い貌を見る、二十四にして老残の貌を凝視す 穏や…

波に夕陽の影もなく―海軍少佐竹内十次郎の生涯 佐木隆三

昭和23年に新聞連載された大佛次郎の作品に『帰郷』という小説がある。 今日では絶版本で古本屋でしかお目にかかれないが、その主役となった守屋恭吾なる人物が、今回の本のモデルで竹内十次郎海軍少佐という人物。 まったく予備知識がないままの読書で、予…

女たちが変えたピカソ 木島俊介

ブックオフで見つけ、タイトルに惹かれて買ってしまったが、当初、ピカソ絵画の変遷と愛憎入り混じった男女劇みたいなものを想像していたのだが、主体はあくまでも画法であって人物に非ず。例えばこんな記述。 愛はいつ時を占めるのか。時はいつ美となるのか…

家族はつらいよ 小路幸也

30年程前のことだが、名古屋駅近くのローソン店内でレジ前に並んでいた山田洋次監督に声を掛けたことがあった。 ほんの少し立ち話しだけだが、やはり相手が相手だけに印象深い。 だからというわけではないが、最近は頭痛、肩こり、樋口一葉じゃないが、肩の…

神保町 古本街

神保町古本街に行って来ました! 制約時間がある中、ここまで来た限りは何か買わなくてはいけないと焦り、一軒、二軒、三軒と見て周り運命の出会い、または捜索願い中の本は無いかとドキが胸々しながら書棚に目を集中、しかしありません。 四件目、ここは以…

村山槐多全集

そもそも画家村山槐多を知っている人など見たこともないが、私自身、彼の名を初めて知ったのは平成25年、入院先の病床の上だったような気がするが、さて、それすらも定かではなくなった。 健診、食事以外、さしてやる事の無い退屈病に罹っていた私は病床でも…

「幕末」に殺された女たち 菊地明

この本には自害、自殺、獄死、病死、戦死、刑死、惨殺と様々な事情で幕末期に死に至った22人の女性が書かれているが、これはほんの一例で実際にはもっと多くの女たちが命を落としている。 例えば会津戦争での女性の犠牲者は233人。 幕末維新が趣味で、今まで…

時代の一面 大戦外交の手記 東郷茂徳

日本人にとって著名な外務大臣といえばいつの時代でも陸奥宗光と小村寿太郎ということになるのだろうか。 中学の歴史教育でも確か、この二人しか習った記憶がない。 いずれも戦勝国日本の外相ということで殊更にクローズアップされていると思うが、明治以来…

アウシュヴィッツ収容所 ルドルフ・ヘス

何年か前にNHKで放送された『トレブリンカ 発掘された死の収容所』という番組を確か録画してあったと思い、探していたら、そのDVDがあり安堵した。 トレブリンカとはワルシャワから北東約90kmに存在したユダヤ人絶滅収容所のひとつだが、証拠隠滅のためナチ…

閉経記 伊藤比呂美

司馬遼太郎さんや吉村昭さんが亡くなって以来、現代作家で好きな人と言われても特にいない。 寧ろ最近では作者よりタイトルや内容で選ぶことの方が多い。 ということで今回の1冊は文壇ではそれなりに有名な人らしいが、私個人は全く知らない人だが経歴を見て…

ショパン紀行 あの日ショパンが見た風景 堀内みさ 堀内昭彦

知らなかったが、ショパンの心臓は現在でもワルシャワ聖十字架教会という所の主柱に納められているらしい。 小さなプレートにはこのよう書かれている。 1945年10月17日 フレデリック・ショパンの心臓は、ワルシャワに戻ってきた 第二次大戦勃発でワルシャワ…

女妖記 西条八十

本書は昭和33年、西条八十が66歳の時から書き始めた小品11編を収めた色懺悔のような本で、11人の女との情痴関係を告白形式で書き連ねたものだが、いやはや、西条先生は相当な艶福家であらせられる。 失礼ながら荷風も八十も、さして男前とは思えぬのが、今ま…

李香蘭の恋人 キネマと戦争 田村志津枝

私はテレビ・ショッピングや通販などで物を買うことはまずない。 どうしても現物を見ないと買えないタイプなのだが例外もある。 絶版本など、いくら古書店巡りをしても見つからない書籍はAmazonで購入しているが、これが時に失敗を招く。 例えばこの本『李香…

泡沫の35年―日米交渉秘史 来栖三郎

故事に「勝家の甕わり」という言葉があるが、日本人は昔から坐して死ぬより討って出るのを潔しとする習性があるのだろうか。 例えば浅井長政は籠城せずに果敢に討って出たし、石田三成は家康が上杉攻めで大坂を留守にした間を狙って挙兵した。 真田幸村は凡…

墨東の堀辰雄 その生い立ちを探る 谷田昌平

貯金額と違って読書量というのはどうもあてにならない。 貯蓄はその気になれば増えるわけだが読書は仮に一千冊読んでも、それに見合った知識が蓄積されるかと言えば少なくとも私の場合はその限りに非ず。 読んだ先から心太方式のように忘れてしまう頼りなさ…

クラクラ日記 坂口三千代

著者、坂口三千代は坂口安吾の妻で「クラクラ」とは安吾没後、三千代が開いたバーの名で命名者は獅子文六。 その三千代が10年にも亘って書き連ねた安吾の思い出の記が本作だが、臨終当日のことが詳細に書かれているので抜粋したい。 そして十七日の朝、茶の…