愛に恋

    読んだり・見たり・聴いたり!

2018-06-01から1ヶ月間の記事一覧

時代を語る 林忠彦の仕事

瞬間を切り取り映画のスチール写真のように、その一枚は時の刻みを忘れて永遠に語りかけていました。 林忠彦がいなかったら、この写真は生まれなかった。 太宰文学の生命力を今に伝える一枚ですね。 総動員令の中の日本と占領下の日本、逞しく生きる日本人を…

漂泊者のアリア 古川薫

昔、その訃報記事で初めて藤原義江の名を知った。 調べてみると昭和51年3月のことで、大正から昭和にかけて活躍したオペラ歌手だが、何分古い話しで、その日までまったく知らない人だった。直木賞受賞作の本書は以前から知ってはいたが既に絶版でなかなかお…

Denis Noletの世界

ジーン・ケリーじゃありませんが、まるで『雨に唄えば』のようなシーン。 しかし、映画では一人で踊っているので単なる私の妄想ですが、それにしても美しい!

話術 徳川夢声

本題を前に少し気になったので同世代と思われる以下3人の生没年月日を調べてみるた。 獅子文六 1891年7月1日~1969年12月13日 76歳 徳川夢声 1894年8月13日~1971年8月1日 77歳 大佛次郎 1897年10月4日~1973年4月30日 75歳 なるほど、殆ど同時代を生き生ま…

書斎は戦場なり 小説・山田美妙 嵐山光三郎

かなり前のことになるが、BSだったかCSだったか児玉清さん司会の「ブック・レビュー」なる番組があった。 毎週見ていた関係で初めてこの山田美妙という明治の作家のことを知った。 確か単行本では「美妙、消えた」というタイトルではなかったかと思うが、そ…

冬の花 大佛次郎

日露戦争を記憶に留め、昭和40年前後まで存命だった作家ほど私にとって興味深い世代はない。 惜しむらくは彼ら前世代の逝去を少年だった私は知らずに過ごしていたことで、あと10年程早く生まれていたら、もっと感慨深く受け止めていたものを。 その世代に合…

不死身の特攻兵 軍神はなぜ上官に反抗したか 鴻上尚史

所謂、神風というのは海軍の第一回特攻隊『神風特別攻撃隊』から始まるのだが正式には「かみかぜ」ではなく「しんぷう」と読む。 対する陸軍の第一回特攻隊は万朶隊(ばんたたい)で海軍のゼロ戦と違い九九式双発軽爆撃機に800㌔の爆弾をくくりつけて体当た…

北緯14度 絲山秋子

未読だが芥川賞作家の絲山秋子に『北緯14度』なる作品がある。 なんでも子供の頃から大ファンだった打楽器奏者のドゥドゥ・ンジェア・ローズの故郷が見たいということで旅立ち、首都ダカールのホテルに滞在しているうちに友達が増え、ある日「俺の第三夫人に…

清方の松

昔、東海道戸塚の並木道に「清方の松」という大木があったらしい。 お軽と三平の道行の段「ここは戸塚の石高道」で御馴染みの舞台で安藤広重の東海道五十三次の中にも、松並木の遠見の富士が見えるとして有名だが現在はその面影はなく、過去の夕霧の中に伝説…

青い炎 貴志祐介

知らなかったがミステリーの分野には「倒叙推理小説」というジャンルがあるらしい。 倒叙推理小説? 解説によると。 普通のミステリーは、まず事件が起こり、警察あるいは探偵役が捜査に乗り出し、犯人の行動や動機を推理して事件を解決する。しかし、倒叙も…

蜩ノ記 葉室麟

第146回直木賞受賞作、なるほど、清々しい感動小説でした。 武家言葉など身に染み入るようで、某(それがし)感服仕った次第であります、と言いたくなる見事な出来栄え。 拙者にとっては久々の時代小説。 以前、 藤沢周平原作の『蝉しぐれ』という映画を観た…

木暮荘物語  三浦しをん

『舟を編む』という辞書編纂に情熱を傾ける青年の映画を観たが、三浦しをんという作家はまた馬鹿に堅苦しい本を書く人かと思っていたら豈図らんや。 この作品は7編からなる短編連作小説だがいずれも通底するのはズバリ、セックス! 木暮荘という古い木造ア…

パパは楽しい躁うつ病 斉藤由香

今日は記事を書くにあたり記憶に留める意味合いもあって昨日の大地震の事を少し書いておきたい。 ブログの性質上あまり個人的なことは書かない主義なのだが今回は例外ということで。 実は毎日記事を更新してはいるが、ここ半月程前からヘルニアが悪化して歩…

歌集 秘帳 湯浅真沙子

湯浅真沙子、今回、この歌集を手に取るまではまったく知らない人だった。 それもそのはずで明らかになっている経歴と言えば、富山県生まれ、大正末期から昭和の初めに上京し日本大学芸術科に通い、結婚して間もなく夫と死別、本人も20代で亡くなっている。 …

兄のトランク 宮沢清六

宮沢賢治という人は戦前の文壇では特異な存在だろう。 というか文壇の枠外で屹立しているような作家のように思う。 菅原千恵子著『宮沢賢治の青春』という本を読むと、唯一人の親友保阪嘉内との宗教観の違いから袂を分かつ場面が書かれているが賢治には耐え…

仏果を得ず 三浦しおん

「『たゞ今母の疑ひも、我が悪名も晴れたれば、これを冥途の思ひ出とし、跡より追っ付き舅殿、死出三途を伴はん』と突っ込む刀引き廻せば」 『仮名手本忠臣蔵』「勘平腹切の段」の場面。 主役は早野勘平、萱野勘平のモデルですね。 高校卒業と共に浄瑠璃、義…

【BMW】UNFOLLOW

www.youtube.com 素晴らしい! パルプフィクションのような映像に知的センスを感じる。 もはや芸術的。。 これならスポンサーも文句はなかろう。

阿蘭陀西鶴 朝井まかて

「好色一代男」や「世間胸算用」などの浮世草子で知られる井原西鶴は松尾芭蕉、近松門左衛門と同時代人だったんですね。 俳諧師として、一昼夜に多数の句を吟ずる矢数俳諧を創始、2万3500句を休みなく発する興行を打ったこともあるとか。 本当ですか西鶴先生…

不死鳥 岸田森

www.youtube.com 昭和43年といえば、もう半世紀も昔の話しになってしまう! 怖ろしい(笑 私たち世代が挙って『ウルトラマン』『ウルトラ7』と円谷作品に夢中だったあの頃、その両作品の間が確か『怪奇大作戦』だったと思うのだが。 毎回、この叫び声から始…

月と六ペンス サマセット・モーム

結局、モームは作中で「月と六ペンス」の意味について触れなかった。 これもまた珍しい。 タイトルが一度も出てこない! 解説者はこう読み解く。 「月は夜空に輝く美を、六ペンスは世俗の安っぽさを象徴しているのかもしれないし、月は狂気、六ペンスは日常…

訃報 森田童子

昭和58年に引退とあらば今の若者が知らないのも無理からぬことか。 中には男性と勘違いしているようなコメントや、「誰それ」なんていうのもあったが、そこまで言われちゃ本人も浮かばれまい。 www.youtube.com 彼女の曲を聴いていたのは、いつ頃だっただろ…

舌出し天使 安岡章太郎

www.youtube.com 五社英雄の名作『人斬り』です。 オープニングしばらくすると河原で仲代達矢演じる武市半平太と勝新太郎扮する岡田以蔵の会話。 降りしきる雨の中、「天誅」と言って襲われるのは土佐藩の参政吉田東洋。 刺客は三人、安岡嘉助、那須慎吾、大…

まほろ駅前多田便利軒 三浦しをん

三浦しをんの直木賞受賞作品。 なかなか面白い作品だが特別感想文を書くほどではないような気がする。 便利屋を営む中年男に舞い込む仕事を巡ってのトラブルがメイン。 寧ろ、この手の作品は映画で見た方が面白いかも知れない。 文芸作品というのは、先に原…

わたしが・棄てた・女 遠藤周作

遠藤周作の小説にしては下卑たタイトルだと思ったが、逆にそれが興味を誘い触手を伸ばしてしまった。 主人公の大学生吉岡努はなんともいけ好かない男で性欲の捌け口から純粋な森田ミツの操を奪う。 一見、凡俗で愚鈍の人間、教養もなく特別魅力のない田舎娘…

辻邦生著『背教者ユリアヌス』の魅力解き明かす

https://mainichi.jp/univ/articles/20180607/org/00m/100/025000c 辻邦生著『背教者ユリアヌス』 この大作、難しくて読めませ~~~ん。 中公文庫4巻で1800頁ぐらいあるのか! 今日、学習院大学で講演があるとか。 行きたいけど往けない。 加賀乙彦先生の講…

パメーラ・ジューン・クルック

この強烈なインパクト! 今や伝説になったビートルズのアビーロードを1位の座から引きずり下ろしたアルバムとして有名ですね。 『キングクリムゾンの宮殿』、私も買いました。 当時のロック界はビートルズを筆頭にストーンズ、レッド・ツェッペリン、ディー…

放送禁止歌 森達也

1999年5月23日、『放送禁止歌~唄っているのは誰? 規制するのは誰?』というドキュメンタリー番組があったらしいが私は見てない。 その番組を制作したのが著者で再放送があったら是非見たいものだ。 著者は樺美知子さんが死亡した1960年6月15日当時4歳だっ…

ボブ・ウェルチ

www.youtube.com 今日はボブ・ウェルチの命日と聞いて本日、二つ目の記事になってしまった! もう40年程前の曲だが古さを感じさせない。 これぞポップスの王道といえる名曲だと思っているが、そんな才能がありながら何ゆえの凶行か。 2012年6月7日、銃で自殺…

黄色い虫: 船山馨と妻の壮絶な人生 由井 りょう子

船山馨の名前を知ったのは、その死を報じる新聞だったと思う。 作品を読まないまま伝記本を通読してしまったが、船山の死んだ当日夜、妻も後を追うように亡くなったということが印象深い。 船山馨の物語というよりは妻春子との借金、薬物中毒物語と言ったほ…

奇蹟の画家 ★ 石井一男

大して能力はないが好奇心だけは旺盛、それ故、新しい発見があれば、どうしても参考文献を読みたくなる。 通り過ぎてたはずの記憶のきれはしが流れの杭にひっかかっていた。 流れの杭に引っ掛かっている想い出がある 何処までも溯っていけるような錯覚を覚え…