愛に恋

    読んだり・見たり・聴いたり!

エッセイ(読書録)

ラオスにいったい何があるというんですか? 紀行文集 村上春樹

村上春樹という人は肉料理が苦手でアルコールもあまりいける口ではないらしい。その点、世界各地を旅する彼にしたら現地での食生活には一段と気を遣うようだ。併し、作家というのはいい職業だ。何処へ行っても仕事ができる。ましてや彼のよう売れっ子なら金…

父の詫び状 向田邦子

やっぱりエッセイは自虐的なものに限るね。最近、なるべく読むようにしてるのは阿川佐和子と向田邦子。二人の年齢は親子ほど違うが、どちらも共通しているのが恐父論。私にしてみればお互いさまで、とにかく戦前派の人は怖かった。怒るとよく手が出る。それ…

日本の「運命」について語ろう 浅田次郎

「歴史は何のために学ぶのか」と言えば「自分が今、こうしてある座標を学ぶ」ためだと浅田氏は云ふ。大体、作家の歴史観が自分と合致するかどうかで、その作家の信頼度が決まってくるというのが私の作家評なのだが、浅田次郎氏はまさに現代作家では最高点だ…

アガワ家の危ない食卓  阿川佐和子

一度、エッセイストと付き合ってみたかったな。特に向田邦子や阿川佐和子みたいな文章を書く人なら大歓迎だ。女性としては中野信子みたいな人が、上の二人のようなエッセイを書いてくれたら、もう即、交際を申し込む。さて、阿川佐和子も最近やっとこさ結婚…

田中小実昌ベスト・エッセイ  田中小実昌

この人の本はある面読みにくい。本人の弁によれば漢字を知らないと言っているが、確かにかなが多い。の割には難しいことを平気でのたまう。それもそのはず東京大学文学部哲学科中退というからよく解らない。彼は、「哲学こそは、真に普遍的な、真理のうちで…

古本生活読本  岡崎武志

太平洋戦争において文化財の多い京都への空襲を避けるよう米軍に進言したのは、ロシアの日本学者、東洋学者であるセルゲイ・エリセーエフという人物だが、そのエリセーエフが神保町が焼ければ世界的損失になるとも言ってくれたお陰で、神保町は戦災を免れた…

イタリア的恋愛のススメ シモネッタのデカメロン 田丸公美子

著者は名うての下ネタ好きらしい。 故にこういう話(実話)は女性が書いた方が面白くていい。 バッコ、タバッコ、ヴェーネレ、これがイタリア版の飲み、打つ、買うらしい。 ロンドンの研究機関が世界29か国でアンケート調査を行った結果、性生活では断トツ、…

巴里ひとりある記 高峰秀子

俳優で名エッセイストといえば沢村貞子と高峰秀子しか思い浮かばない。 確か日本初のカラー映画は高峰秀子主演の「カルメン故郷に帰る」だったと思うが、撮影後の昭和27年、高峰は一人でパリに飛び、半年間も本名で生活して書いた初のエッセイが本作となる。…

喰いたい放題 色川武大

ご存知かと思うが、色川武大には今一つ、『麻雀放浪記』でヒットした阿佐田哲也というペンネームがある。 朝だ徹夜という意味で、彼は博徒として鳴らし、また、映画、芸能、ジャズと幅広いジャンルに精通していた。 そんな彼は食道楽の作家がよく書く、喰い…

三文役者の無責任放言録 殿山泰司

殿山さん、貴男は名脇役としていろんな映画に出てましたよね。 その演技力が下手などと思ったことは一度もありません。 頭が禿げて不細工な顔でしたが、これぞ脇役としての存在感がありました。 酒好き、女好き、そしてジャズ。 以前、貴方の書いたジャズの…

三文役者の無責任放言録 殿山泰司

殿山さん、貴男は名脇役としていろんな映画に出てましたよね。 その演技力が下手などと思ったことは一度もありません。 頭が禿げて不細工な顔でしたが、これぞ脇役としての存在感がありました。 酒好き、女好き、そしてジャズ。 以前、貴方の書いたジャズの…

あの日あの夜 森繫久彌

昔から友人との間で、よく森繫さんのことは口の端に上ることが多かった。 多くの友人に先立たれ、さぞ寂しい想いをしておられるだろうというのが、会話の接続に出ることがしばしばで、その森繫さんの、「あの日あの夜」、つまりは昔のことを思い出すまま書か…

写真とエッセイで綴る姉の素顔 向田邦子の青春 向田和子

『思い出トランプ』を読んだのは、もう随分昔のことだ。 『寺内貫太郎一家』を見ていたのも、あまりにも古い話になる。 そんな才能ある向田邦子の搭乗していた飛行機が運悪く墜落したと聞き、誰もが耳を疑っただろう。 その彼女の炭化した遺体写真を見た時に…

第一の性 三島由紀夫

人間は多面的な色合いを持った生き物。 普段は一面、二面を見せても三面となると容易に解かるものではない ましてや第四面まである場合は、肉体関係を持ち、さらに深い契りでもなければ、金塊までたどり着けない。 男女関係を掘り下げなければ、おそらく分か…

恋人たちの風景 ピエール・ロチと行くロマン紀行

ピエール・ロチの小説というのは、だいたいが、その土地で恋愛関係になった女性名からタイトルを取っているらしい。 例えば『アジアデ』はトルコの恋人。 『ララフ』はタヒチ。 『お菊さん』は日本。 さらに『アフリカの騎兵』『氷島の漁夫』と続くが、著者…

父の縁側、私の書斎 檀 ふみ

いつだったか、かなり前のことになるが、檀ふみが高倉健と初めて会った時のことを語っていた。 仕事で共演することになった彼女の控室に、突然、高倉健が現れ。 「初めまして、高倉です」 と、入って来たのを見て、檀ふみは思った。 日本人にもこんな人がい…

やりにげ みうらじゅん

以前、みうらじゅんは「ロックの哲学をお持ちだそうで」という問いに「修行と絶倫」と答え、続けて「絶倫の意味なんですよね、よく分かりました」と言い放っていた。 更に「僕、若い頃から絶倫になれる音楽をかなり聴いて来ました、本当に辛かったです」とぬ…

昭和ベエゴマ奇譚―字あまりエッセー  滝田ゆう

滝田ゆうと田中小実昌の本は古本屋で見つけ次第、何でも買ってやろうと思っているのだが、この本はどうも読み辛かった。今は無き旺文社文庫1982年1月が初版だが、調べてみても読んだ人が見つからないほど、つまらないのか埋もれてしまったのか。申し訳ないが…

老残のたしなみ 日々是上機嫌 佐藤愛子

私の場合、もし母親を選べるなら佐藤愛子答えるかも知れない。 こんな母親がいたら面白そうだ。 ましてや母方の祖父が佐藤紅緑となればなおさら愉快ではないか。 年齢的に父と釣り合いもとれるし申し分ないのだが、親子となれば何かしら諍いもありそうな性格…

ウドウロク 有働由美子

どうだろうか、NHKの女子アナというのは、何れも品行方正で異性関係に於いても、先ず間違いのあろうはずもなく、看板アナに関しては猶更、そのような粗探しをしたところで無用、人品骨柄、非の打ちどころのない人物なのか、然し、いくらNHK女子アナといって…

わたしの渡世日記 高峰秀子

高峰秀子が出演した昭和14年の『われ等が教官』という映画の中で、琴を弾く場面があるらしい。 それがため稽古として連れて行かれたのが誰あろう検校、宮城道雄であったという。 少し長いが彼女の文章を引用させてもらって、そのあたりを紹介したい。 ある日…

ベスト・オブ・マイ・ラスト・ソング 久世光彦

人生最期に聴く曲は、どんな歌を選ぶか。 久世光彦が14年間にわたって雑誌「諸君!」に連載した123篇のエッセイから52篇を選んだ“決定版”。 久世さんは昭和10年生まれなので戦中戦後にヒットした曲、または隠れた名曲など採り上げているが、私の知らない曲も…

置かれた場所で咲きなさい 渡辺和子

ノートルダム清心学園理事長の渡辺和子さんについては以前にも少し書いたが、残念なことに89歳で2016年12月30日に逝された。 父親は2・26事件で殺害された陸軍教育総監渡邉錠太郎大将で、事件当時大将は62歳。 9歳で末っ子の和子さんは、大将と床を並べて就…

父 岸田劉生 岸田麗子

子供の頃に親と死別するということは、死に行く親にとっても残されし子にとっても断腸の思いだろう。 子供は幾つになっても親への思慕の念断ち難く、最後の対面など忘れることが出来ない。 長い闘病生活の末のことなら覚悟も出来ていようが、突然の訃報では…

猫がいなけりゃ息もできない 村上由佳

ペットロスという言葉を知ったのは比較的最近のことで、あれは何と言う名だったか、昔、付き合っていた彼女が飼っていた犬だが、「もし死んだら私、どうしようどうしよう」と何度となく繰り返し聞いたものだ。 それ程までに情が移ると、或いはペットの死後、…

内的獨白 福永武彦

本書の単行本を数か月前に古書店で見つけ、面白そうだが文庫は出ていないのかとAmazonで検索するに、やはり昭和58年に文庫化されていたので、その文庫と巡り合うまでは暫くお預けと思っていたが、意外と早く古書市で対面となり、何やら難しそうだが、まあ、…

阿部公房と私 山口果林

近年、ノーベル文学賞候補として井上靖と阿部公房が候補に挙がっていたことが、ニュースで採り上げられていたが、以前から思っていた疑問、井上靖さんが受賞しなかった理由が分かり少し溜飲が下がる思いだった。 ノーベル文学賞は存命が条件。 しかし、阿部…

佐藤家の人びと―「血脈」と私 佐藤愛子

「敵の虚を突いて塁を盗むとは、正々堂々の戦いにあらず!」 佐藤紅緑という人は、野球観戦で盗塁するのを見ると、すぐこうやって怒鳴ったらしい。 また、ある時は隣の男性の貧乏ゆすりに腹を立て殴ったとか。 新聞記者時代には宿直室で師の陸羯南(くがかつ…

漱石の長襦袢 半藤末利子

安々となまこの如き子を生めり 「安々と」とは、妻が一度流産した経験があったので、今回は安産だったと言う意味だろう。 名は筆子と漱石が名付けた。 妻の鏡子が非常な悪筆で、少しでも字の上手な子になるようにとの願いから命名、その第一子、筆子の娘が著…

古本道場 角田光代・岡崎武志

自称、神保町系ライターと言うぐらいの古本道の達人、岡崎武志氏に弟子入りした女流作家、角田光代の古本道入門書とでも言ったらいいのか。 師匠の支持の下、神保町、早稲田、荻窪、鎌倉、そしてウルムチ、ウィーン、ブタペスト、ベルリンと古本を求め、その…