愛に恋

    読んだり・見たり・聴いたり!

風と共にゆとりぬ 朝井リョウ

最近の作家の中には男性だと思っていたら女性だったり、またその逆もあったりで経歴を読んでみないと性別が判らない場合がある。以前、この作家の直木賞受賞作で『何者』という作品を読んだが既にもう性別もストーリーも忘れていた。何度も書いているがエッセイストでは向田邦子が好きなのだが、なんといっても比喩や語彙力が優れており、なるほどと思う表現によく当たる。また自虐的な話としては阿川佐和子を贔屓にしているが、本書もエッセイとあったので読んでみたが、レビューを見るに大多数の人が笑える、面白い、ユーモア溢れる文章と大絶賛だが、私の場合は圧倒的少数意見として、何も面白くなかった。失敗談なんかを縷々述べているが、どうもボキャブラリーに乏しく洒落で胡麻化している文章が多すぎる。後半、著者が肛門に痔瘻だか粉瘤だかに罹る場面があるが、粉瘤というのは一度罹ると続けてなりやすく、私も3度ほど罹ったことがある。しかし、私の場合は肛門ではなく肩と背中で、即、手術となり著者ほど酷い経過は辿らなかったので特段面白い話もない。それにしても抱腹絶倒とは相ならず最後まで退屈な本だった。