1580年代前半といえばバロック全盛の時代であり、宗教画、神話画、歴史画ばかりが描かれていたころで、描かれる人物も神々や王侯貴族、高位の聖職者や大商人といった著名人ばかりであった。また、当時は絵画に何かしら意図を込めるのが当然とされていた。そうした時代にあって、当時としてはあり得ない作品が登場した。『豆食べる男』である。これは美術史的には非常に重要な意味を持っている。最初に描かれた風俗画なのである。作品はボローニャの画家一家「カラッチ一族」のひとり、アンニーバレ・カラッチ。アンニーバレ一族のなかで最も豊かな才能をもち、イタリア・バロックの巨匠カラバァッジョと並び称される実力者だった。「ムーンライト・セレナーデ」のお時間です。1580年前半といえば日本では本能寺の変あたりですね。そう考えると西洋美術がいかに傑出していたか分かります。そこで今日はその『豆食べる男』でお別れです。