事件・裁判(読書録)
昭和27年4月9日に起きた「もく星号墜落事故」は、何度となく目にする事故だが、今までその詳細は知らないままだったが、古書店で見つけた松本清張最晩年の本書をようやく手に取った。同年同月末に調印となったサンフランシスコ講和条約前の事故なので、厳密…
かなり難しい本だった。 血盟団事件、三月事件、十月事件、相沢事件、二・二六事件。 北一輝、西田税と確かに相沢中佐と関係が無いわけではが、事件の性質上やむを得ないとはいえ、根深く本質を捉えようとしているので、どうしても相沢に関わった人たちが書…
元旦から読み始めて1週間の予定で読了と思っていたが、10日もかかってしまい今回は疲れた。 明治43年の裁判の実録を旧字体、上下二段で書かれているのを読むわけだからね。 さすがに読めない漢字も多く、先ず、朝鮮名や駅名、地名が読めない。 更に、例えば…
上・下巻合わせて約800ページ程の本書は「悲素」とあるが、要は「砒素」のことで、和歌山のカレー毒物事件を扱っている。 主人公は九州大学医学部の衛生学教授で実在の人物。 正直、これを読み通すには実に骨が折れた。 何しろ事件で犠牲になった被害者4人、…
本書の出版は1997年1月とある。 この段階ではまだ日本には多重人格障害という概念はなかったようだ。 故に著者は言い切る。 死刑と言う結論が先にあったのだ。四人の幼女を殺めた男を無罪にすることはできない。それは社会が許さない。そのためには被告が犯…
梅川昭美では分かりにくい方でも、この写真を見れば一目瞭然。 1979年、大阪の三菱銀行北畠支店に猟銃を持って押入り、銀行員、駆けつけた警官を射殺して閉じこもり、日本中を震撼せしめた大事件だった。 事の顛末を当時、週刊誌で読んだものの、本当に行内…
「パール判決書」というのは英文で25万語、講談社の文庫で1400ページを超えるものらしい。 本文中には、法律関係の専門書だけではなく、歴史書や哲学、各種の手記など、さまざまな文献から引用がなされ、裁判の意見書とはまるで思えないような内容を含まれ、…
ウィキによると、1874年4月ニューヨーク起きた当時8歳であったメアリ・エレンに養母のメアリー・マコーマック・コノリーが約6年に及ぶ虐待を行ったという事実が世間に出ることに至った事件。 メアリー・エレン・は義母と義父であったコノリー夫妻により虐待…
日系ペルー人作家、フェルナンド・イワサキの本邦初訳作品で、中世南米ペルー副王領の首都リマで、異端審問沙汰となった性にまつわる数々の珍事件を、17の短編に再構成した異色の作品集。 異端審問といえば、一般には拷問・迫害・蒙昧主義のイメージが色濃く…
その昔、NHK特集で『声』という番組を見たことがある。 あの「吉展ちゃん誘拐殺人事件」の犯人小原保と最後の岡っ引きと言われた名刑事・平塚八兵衛が交える取り調べの様子を録音したもので、生々しい二人の会話が聞こえるが決して暴力を用いるようなことは…
日本では殺人事件の約半数が家族間で起きるという話を聞いたことがある。 確かに日々のニュースを見ていると夫婦、親子、親族の間でトラブルが起きることが多い。 子供に殺される親、夫に殺される妻、本当に予想外の結末が待っているわけだ。 本書に書かれて…
この犯罪史上稀な怪事件は、どのように理解したらよいのだろうか。 事件の経緯は全て明らかになっているので、別に今更問題点もないが、やはり定の心理状態だけが腑に落ちない。 仮に、これぞ理想の相手と思しき男性に巡り会ったとする。 相手は家庭持ち。 …
ジェームズ・スチュワート主演の『翼よ、あれがパリの灯だ』は有名な映画なので観た人も多かろう。 5月21日は「リンドバーグ翼の日」と言われているが、1927年5月20日の早朝7時52分、ニューヨークを飛び発ったスピリット・オブ・セントルイス号は、33時間30…
昭和11年7月2日の夕刻であった。連日の酷暑に九段下の内堀から吹き込む涼風に、ホッと一息入れているところへ、代々木の陸軍刑務所長から電話が掛かってきた。 「麹町憲兵分隊の小坂曹長であります」 「私は刑務所長だが、実は相沢中佐が、どうしても、小坂…
3か月ほど前、所要で大阪環状線京橋に行った時のこと、駅前広場で道行く人に向かってやおら演説している中年男性を見て、非常な違和感を持った。 男性の横には看板を持つ人、さらに横断幕を掲げる人など、いつもこの場所には何かと社会に向かって異を唱える…
三井の晩鐘として有名な三井寺に行ったのは、はて、いつのことだったか? 40歳を幾つか手前の頃だったと思うが。 明治の20年代、ここには「御幸山西南戦争記念碑」という立派な石碑が立っていた。 何故、鹿児島から遠く離れたこの地に石碑があったかと言えば…
よく思うことだが、ここ1世紀ぐらいの間、世間の耳目を集めた重大事件関係者の遺族などはその後、どのような人生を歩んだのか興味がある。 以前、NHKで珍しく大逆事件を扱った番組を採り上げていた。 全国で多数の人が逮捕され26人が起訴された大事件だが…
徳島ラジオ商殺し事件、何か聞いたことがあるような、ないような。 とにかく知らないことは一度読んでみようと思い、心に止めておいたところ、偶然にもブックオフで見つけて購入。 事件が起きたのは昭和28年11月5日午前5時頃というから、私はまだ生まれてな…
子供の頃に世間を騒がせた大事件といえば、まず「吉展ちゃん誘拐殺人事件」だろう。 昭和38年3月のことで、連日の大ニュースで大人たちに混じって見ていた記憶がある。 以前、NHKスペシャルで「声~吉展ちゃん事件取り調べテープ~」という番組が放送され、…
横溝正史原作『八つ墓村』の映画化は過去3度あるらしいが、私が観たのは野村芳太郎監督、77年製作の松竹版。 戦時中、岡山に疎開していた横溝が地元の人から伝え聞いた過去の大事件をヒントに描かれた作品で、当時は横溝フェアーで映画も本も大ヒット。 犯罪…
戦前、沖縄出身の画家に宮城与徳という人が居た。 しかし昭和16年10月10日午前5時半、特高課員らによって自宅を急襲逮捕される。 容疑はスパイ諜報活動で、所謂、ゾルゲ事件の工作員として芋蔓式に逮捕されたひとりだが、宮城には持病があり健康を害していた…
戦後に起きた重大事件に関しては大抵の場合、少しぐらいの予備知識があるのだが、この袴田事件については名称以外は全く何も知らなかった。 先日、冤罪事件として拘置所から釈放される袴田さんを見て、どのような事件だったのかと思っていた矢先、この本の出…
ジェームズ・スチュワート主演の『翼よ、あれがパリの灯だ』は昔から有名な映画なので観た人も多かろう。 「リンドバーグ翼の日」というのは5月21日のことで1927年5月20日の早朝7時52分にニューヨークを飛び発ったスピリット・オブ・セントルイス号が、33時…
読書といっても様々で、作家の文体に馴染めないような純文学、または策士、策を弄すのように調べ過ぎて読み手をひたすら混乱させるだけのノンフィクション。 時に、一体、何を読まされているのか解らなくるようの手法で辟易したり、微に入り細を穿って、ここ…
結局、読了しても殺意があったのかどうか判然としないままだった。 この事件の不可解さは警察が事故死と断定した捜査を、母親鈴香が事故ではなく事件だと騒ぎ立てたことにある。 本人が加害者なら、警察が事故死として捜査終了したものを何ゆえ事件として再…
長い人生の中には、あの日、何処で何をしていた、という記憶に残る1日がある。 例えば昔の人なら終戦の日を鮮明に覚えていることだろう。 私の場合は昭和45年11月25日のこと、学校帰りに知り合いのお姉さんから声をかけられた。 「三島由紀夫が自殺したよ。…
「酒鬼薔薇」事件を溯ること28年前の昭和44年4月23日、神奈川県川崎市で起こった頭部切断事件。 被害者は私立高校の1年生。 加害者は同級生の少年で鋭利な刃物で全身47ヵ所をめった刺しにして殺害、事件の一部始終を見ていた人からの通報で少年Aはあえなく逮…
一般的に毒婦というと、まず思い浮かぶのは高橋お伝と阿部定ということになるか。 しかし最近、平成の毒婦と言われる女性が二人も登場した。 片や青酸カリを飲ませた連続殺人事件の筧千佐子容疑者、そしてこの木嶋佳苗。 婚活詐欺とでも言うのか短期間に複数…
初版は1977年で、かなり昔の本になるが最近、ちくま文庫で復刊され、それを買って読んでみた。 吉展ちゃん事件扱った本で、私が物心ついた頃の、最も有名な大事件だった。 身代金目当ての誘拐殺害事件として残忍な犯罪だが、改心してからの犯人小原保を見て…
子供の頃には全く書けなかった読書感想文をこうして毎回書いているが、プロの書き手でもない私には実のところ四苦八苦、悪戦苦闘である。 長からず短かからず、冒頭の書き出しからしていつも悩む。 まあ、余談はともかく本題だが、この本は新潮ドキュメント…