愛に恋

    読んだり・見たり・聴いたり!

2017-01-01から1年間の記事一覧

想像ラジオ いとうせいこう

余談だが、以前、CSテレビで桑田佳祐といとうせいこうの対談を見たことがある。 その時の話しによると、何でもいとうせいこうは極めて初期の段階からサザン応援団の会員らしい。 まあそれはともかくこの小説。 難解とまでは言わないが冒頭からやや解りにくい…

偶然完全 勝新太郎伝 田島健太

あの有名な勝新太郎のがん告白会見から、既に21年もの歳月が流れてしまった。 その日、96年11月22日の会見ではこんなやりとりがあった。 酒と煙草は体に悪いからやめたと言ったばかりの勝はその場で煙草を吸い初め、そしてのたまう。 「煙草はねぇ、絶対にや…

悦ちゃん 獅子文六

筑摩文庫、獅子文六シリーズ『悦ちゃん』。 以前にも書いたと思うがペンネームの文六とは文豪(文五)の一つ上という意味だが、私個人、あまり獅子文六を文豪と思ったことはない。 どちらかと言うと大衆小説作家で物語としてはよく纏まって読み易く解りやす…

阪神 歳末古書ノ市

俗に寄る年波には勝てぬというが、私にとって、その勝てぬ行事が最低でも年に3回はある。 ⒈ 大規模なライブ・コンサート! 先月、あるビック・アーティストのライブ観戦の為、東京ドームへ行って来たが、何と生まれてこの方経験したことのない最前列が当たっ…

裁かれた命 死刑囚から届いた手紙 堀川恵子

子供の頃には全く書けなかった読書感想文をこうして毎回書いているが、プロの書き手でもない私には実のところ四苦八苦、悪戦苦闘である。 長からず短かからず、冒頭の書き出しからしていつも悩む。 まあ、余談はともかく本題だが、この本は新潮ドキュメント…

原節子 わたしを語る 貴田庄

『原節子 わたしを語る』というタイトルだが本人がこれを書いたわけではない。 残されたインタビューや対談の記録から原節子とはどのような女性だったのかに迫るというのが本書の趣旨。 同時代の女優、高峰秀子が多くの著作を残したのに対し、原節子は生前、…

功、大好き 俳優木村功の愛と死と

木村功と聞いて、まず誰しも思い浮かべるのは『七人の侍』の勝四郎ではなかろうか。 元服前の勝四郎役を演じたために、初めて見たときから、まだまだ若い俳優さんだと思っていたが実際の木村功は、その当時既に二児の父で30歳だった。 黒澤さんが勝四郎役を…

獅子文六の二つの昭和 牧村健一郎

獅子文六とは、あまりにも世代が違い過ぎるため、その作品を今日まで読む機会がなかったというのではなく出版業界が文六作品から手を引いたために読む機会を失ったといったほうが実情に合っている。 何故、読まれなくなったのか、そのあたりのことは私には分…

あの日、パナマホテルで ジェイミー・フォード

戦前、シアトルのダウンタウン南端に賑やかな日本人街があったらしいが、物語は、その日本人街にあったパナマホテルの地下から40年以上も引き取り手のない荷物が発見されたことに端を発する。 真珠湾奇襲後の1942年、アメリカ政府は在留日系人、約12万人を逮…

自伝 若き日の狂詩曲 山田耕筰

これは山田耕筰自らが書いた自伝だが、どういうわけかベルリン留学から帰国した1914年で終わっている。 耕筰は明治19年生まれで、その生い立ちを読んでいて少し驚いた。 勿論、私とは全く違う世代だが晩年の10年程、この世で重なる時期がある。 出自は母の再…

純情無頼 小説阪東妻三郎 高橋治

私が観た阪妻作品ではっきり記憶しているのは『血煙高田馬場』だけで『無法松の一生』は観たような気もするが、しっかりした記憶はなく、サイレント時代の名作『雄呂血』に至ってはストーリーさえ知らない。 阪東妻三郎という人は俳優がプロダクションを作っ…

チンチン電車と女学生 1945年8月6日・ヒロシマ 堀川恵子

毎年、8月になると必ずと言っていいほどNHKは戦争番組を特集する。 あの戦争を体験した多くの人を取材する中、良く聞くのが「生前、父は戦争の話しはあまりしたがらなかった」という証言だ。 しかし私の父は違った。 子供相手とは思えないほどの熱弁を振るっ…

劉生の死 岩田 礼

劉生日記は有名だが、今日、この本の存在は殆ど忘れ去られたかのようだ。 以前から、購入の機会を伺っていたが、私の知り得る限り大阪でこの本を置いている古書店はたったの一軒。 しかし、それよりAmazon価格の方が安かったのでまずは手に入れ良しとした。 …

Historia de un amor ある恋の物語

パナマ人のカルロス・エレータ・アルマランの作曲で原題は『 Historia de un amor』 1955年に発表、 作曲者自身が妻を亡くした悲しみを歌った曲と言われているが日本では『ある恋の物語』という邦題がついてヒット。 しかし、私はやはりイーディ・ゴーメの歌…

青空娘 源氏鶏太

源氏鶏太は自伝『我が文壇的自叙伝』の中でこのように書いている。 「ときどき私は、自分の作品で死後読まれる作品があるだろうか、と思ったりすることがある。まして、死んでしまえばそれまでであろう。それが大方の大衆小説作家の運命とわかっていて、ちょ…

名言探訪

「若さは、夢であり、花であり、詩である。永久の夢といふものはなく、色褪せない花はない。また詩はその形の短いところに一層の力がある。若さも亦、それが滅び、それがうつろひ、それが長くないところに一しほの魅力がある」 これは佐藤春夫の名言だが、流…

悲劇の9日女王 ジェーン・グレイ  桐生操

近年、日本でも俄かに脚光を浴びるようになって来た一枚の絵。 それが、この本の表紙しになっている。 『レディ・ジェーン・グレイの処刑』 以前から気になっていた絵画だが、最近、この絵は実在の物語を主題に書かれていると知ってインフルエンザも吹っ飛ぶ…

羊夢舎

古書店探訪に関しては以前から一つの疑問がある。 東京では古本街といえば神保町、大阪で焼肉といえば鶴橋と店が密集しているが大阪の古本街は梅田紀伊国屋書店横に数件の店がある程度で東京に比べたら物の数ではない。 そこで私の疑問だが、これまで関西地…

犬たちの明治維新 ポチの誕生 仁科邦男

元より予想はしていたが膨大な参考文献の資料の引用などもあってかなり難しい本だ。 民俗学ならぬ犬俗学とでも言うような幕末以降、太平洋戦争に至るまでの犬たちが辿った悲劇を扱った本で知らないことずくめで勉強になった。 そもそも犬は江戸時代、ペット…

La La Land - John Legend - Start a Fire

寒い日でしたね。 芥川の句こんな名作があります。 水洟や鼻の先だけ暮れ残る 水洟とは、鼻水のことです。 本当に外に居ると鼻水が絶えません。 そんな日は何か熱い音楽を。 今日は映画史に残るこの場面。 とても好きな曲です。 おやすみなさい。 www.youtub…

移動祝祭日 ヘミングウェイ

1961年3月のある日、夫と共にアリゾナで休暇をすごしていたハドリー・モーラーなる女性のところに1本の電話がかかってきた。 声の主は34年前に別れた最初の夫、アーネスト・ヘミングウェイ。 そして彼はこのように切り出した。 「実はいま、君と暮らしたパリ…

エンニオ・モリコーネ - La califfa

竹下夢二の詩に以下のようなものがある。 寝たか寝なんだかと枕に問えば枕もの云ゆた寝たと云た 最近、その枕についてこんな記事を読んだ。 子供に訊かれて困る質問。 「ねえ、枕営業って何?」 これは答えられまい(笑 まさか、枕を売って歩く行商人という…

獄中手記 磯部浅一

何で私が磯部浅一の『獄中手記 ・行動記』みたいな本を読まなければいけないかってなもんですね。 そもそも磯部の思想を理解するような頭脳も行動力も持ち合わせていません。 二二六に関しては過去、かなりの本を読んできたが五一五ほど事は単純ではない。 …

Nara Noïan - Hier Encore 帰り来ぬ青春

玉ノ井と言えば永井荷風と滝田ゆうである。 『濹東綺譚』と『寺島町奇譚』の舞台として有名だが戦前の玉ノ井に一度行ってみたかった。 荷風が愛した玉ノ井。 滝田ゆうが生まれた玉ノ井。 私娼街だが、あれこそ昭和を代表する街だろう。 それにしても・・・!…

ドストエフスキー伝

まあ、はっきり言って疲労困憊。 736ページという大著もさることながら人名がロシア語とあっては読み辛い。 しかしながら我が町関西ではまず以って見つける事の出来ない本、それを態々、神保町まで行って買ったとあらば解っても分からなくても意地でも読み通…

Gladys Knight - Coming Home Again

「帰りなんとて家もなく慈愛受くべき父母もなし、孤児書生の胸の裡」 と言った大政治家が昔居ましたが、そんな言葉が身に沁みますね。 「さよならだけが人生だ」と寺山修司も云っていますが本当ですね。 まさか、あれが今生の別れになるとは思わなんだという…

奇人でけっこう―夫・左卜全 三ヶ島糸

昔のある時期、私は、生涯を共にすべき映画作品として以下の3つを挙げていた。 「レット・イット・ビー」「東京裁判」、そして「七人の侍」 中でも「七人の侍」は、その脚本総てを覚えるぐらい繰り返し巻き戻して見ていたが、それには理由がある。 20代前半…

Woman Is The Nigger Of The World ジョン・レノン

今時、シャロン・テート殺人事件などと言っても知る人も少なくなってきたと思うが68年に全米を震撼させた大事件だった。 ロマン・ポランスキー監督夫人のシャロン・テートが自宅パーティーの最中に押入ったチャールズ・マンソン一味に皆殺しにあった事件でテ…

肉体の学校 三島由紀夫

自殺直前の有島、芥川、太宰の評伝には必ず女が出てくるが、何故か三島には、それらしき女性は出てこない。 専ら、右翼、楯の会、自決である。 三島と言う人はいったい、どの程度、女性経験があったのだろうか。 この小説は恋の駆け引きをメインに書かれてい…

Pink Martini Amado Mio

私はマンションの1階に住んでいるのだが、冬になると結露に悩まされ、放置しておくと黴の元にもなりかねないので先日来、窓を少し開けていたら、ある日の事、見知らぬ猫がリビングに鎮座していた! 目が合った瞬間、私は驚いた。 転居以来、初めての珍客。 …