あの有名な勝新太郎のがん告白会見から、既に21年もの歳月が流れてしまった。
その日、96年11月22日の会見ではこんなやりとりがあった。
酒と煙草は体に悪いからやめたと言ったばかりの勝はその場で煙草を吸い初め、そしてのたまう。
「煙草はねぇ、絶対にやめたよ」
そう言いながら旨そうに煙を吐き出し、それから。
「おい、ビールを持って来てくれ」
勝新太郎、豪放磊落にして天才。
それでいて神経細やかな優しい人だったと人は言う。
確かに一見、強面で親分肌な風貌だが、彼ほど人間味溢れた人も稀だろう。
多くの人が故人になったが、その配下には錚々たる顔ぶれが。
勝新の天才性は世に名高いが私は以下の三つの点でそれを認めている。
まず、座頭市シリーズで見せた殺陣の凄さ。
逆手斬りの盲人で居合の達人。
悪名シリーズで朝吉を演じるド迫力と河内弁で捲し立てるあのセリフ回し。
夜、降りしきる雨の中、橋の下から暗殺現場を見ている勝新の演技力。
それが彼をして天才の名に相応しい役者だと思った瞬間だった。
見るものを圧倒していた。
それがこのビデオの中頃にあるが、何と言っても彼の目付きと殺害後に刀の刃こぼれを見る場面、素晴らしい!