その時の話しによると、何でもいとうせいこうは極めて初期の段階からサザン応援団の会員らしい。
まあそれはともかくこの小説。
難解とまでは言わないが冒頭からやや解りにくい。
ベースになっているのは東日本大震災。
DJアークなる人物が毎夜、リスナーに向かって語り掛けるのだが、リスナーそのものは死者であり、DJアークも死者という設定で想像の感覚で耳を澄ませば、アークの語り掛けが死者に届くというような話しと受け止めたがどうだろう。
つまりは生者には聴こえないラジオということになる。
作者は登場人物にこんなことを言わしめている。
「生きている人類が全員いなくなれば、死者もいないんだ」
なるほど!
つまりこういうことだ。
死者を思い出す生者がいるからこそ死者というものが存在する。
「生者と死者は持ちつ持たれつなんだよ。決して一方的な関係じゃなくて、ふたつでひとつなんだ」
哲学的な話しのようでやや難しいが。
生きている者が死者のことを胸に秘めて人生を送って行く。
亡くなった者は生きている私たちを通して存在し、故に生者たる私たちが死ねば死者は自ずとその存在が忘れ去られる。
確かに死者は生者の心の中でいつまでも熱く生き続ける。
この小説は亡くなった者たちの声は聴こうと思えば聴こえるのだと言っているのだろうか。
震災の直接的な被災者でなくとも、この事実を忘れることなく死者の声に耳を傾けよと教えているようにも読み取れた。
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