愛に恋

    読んだり・見たり・聴いたり!

昭和文学(読書録)

怨歌劇場 野坂 昭如 滝田 ゆう

滝田ゆうさんの漫画本を読むのはこれで三冊目だが、今回は野坂昭如の文に対して絵を描いているようだ。 本来、この人のノスタルジックな物思いに対し好感を持っているのだが、作は野坂作品とあって、やや、エロチックなものが多い。 これまで一度も、野坂文…

女経 村松梢風

現代作家に村松友視と言う人が居るが、その祖父が明治22年生まれの村松梢風となる。12話からなる短編集で、それぞれに違った女が登場、12人の女との出会いと別れが書かれている。 意外なことに戦前の女はみな身持ちが固いと言っては大違い。 中年になった梢…

暗室 吉行淳之介

よく知られているように吉行淳之介の父はエイスケ、母はあぐり、妹に女優の和子がいる。 そして私生活のパートナーが宮城まり子。 以前、宮城まり子の「淳之介さんのこと」を読んだが、それ以外、二人に関することは知らない。 また、第三の新人と言われる作…

槐多よねむれ  山田幸平

本書は表題『槐多よねむれ』となっているが、中編八話からなる本で、全体的には少し尻切れトンボのように、どれも小難しくして中途で終わっているのうな気がする。 特別強く印象に残る作品もなかった。 槐多よねむれに関してだけ少し長くなるが、引用してみ…

笛吹川 深沢七郎

積読本が300冊もあると、どうしても自分で買ったのにも関わらず全部を把握し切れていない。 拠って書棚に深沢七郎の本が4冊も溜まっていたとは知らなんだ。 そこで、取り敢えず手にと取ったのが本書だが、然し、この人の名は昔から知ってはいたものの読むの…

棺の花・那智滝情死考  水上 勉

久しぶりに、水上勉さんの小説を読んだ。 20代前半だったと思うが『雁の寺』や『五番町夕霧楼』、更には私をして感動せしめた『越前竹人形』などは本当に名作だと思う。 映画では若尾文子が演じていたが、やはりあの作品は彼女に相応しかったのだろうか。 扨…

愛よ、愛 岡本かの子

本書は散文というか何というか、短歌あり小説あり随筆ありと、編集者の方でかの子の死後、勝手に集約したのか分からないが、明治生まれの彼女の文体は多少読みづらいところもある。 然し、かなりの才能は伺える。 例えば精神病院の待合で見た光景をこのよう…

ポロポロ 田中小実昌

本書は七編からなる短編集で、主に昭和19年暮れから終戦まで、著者の初年兵当時の思い出を書いたものだが、かなり年月が経ってからの著書とあって、記憶が定かでないところもあるが、二等兵として如何に中国戦線の従軍が大変だったか、こんな生活はまっぴら…

その夜 長与善郎

長与善郎は白樺派の文人だが、過去に『青銅の基督』とを読んでいるが、すっかり内容を忘れている。故に長与氏に関しての知識もないまま、古書店で初版本の本書を手に取り何も分からないまま購入してみたが、どうも本作を読んだ人がネットの中では見つからず…

放浪記 林芙美子

確か映画や舞台などで見る『放浪記』にも、別れた男を訪ねて瀬戸内海の因島に赴く林芙美子が描かれていたはず。自分を捨てたはずの男に会う理由は金の無心。芙美子は20歳、新劇の俳優、田辺若男との同棲中で貧乏な田辺のために、節操もなく初恋の男にわざわ…

自動巻時計の一日  田中小実昌

田中小実昌を見なくなって久しいが、いったい、いつ亡くなったのかと調べてみると2000年2月26日とある。 毛糸の帽子がトレードマークで、昔はよくテレビで見かけたものだが、どういう人なのか詳しく知らなかった。 しかし、古本マニアのネットなど見ていると…

束の間の午後 萩原葉子

表題作の他に『対岸の人』『葉桜』『息子の結婚』『鬼が笑う』計五編の自伝的小説で、かなり生々しい。 言うまでもないが、著者は朔太郎の長女で経歴によると1944年に職場の上司大塚正雄と結婚して1子を儲けたとあるが、この子が朔美になる。 因みに男性。 …

離婚 色川武大

色川武大と阿佐田哲也が同一人物だと知ったのはそんな昔のことではない。 阿佐田哲也は麻雀小説作家として有名で、阿佐田哲也は即ち「朝だ、徹夜」から来ているらしく、その道では著名な作家らしいが、今まで色川武大、阿佐田哲也名義の本は一冊も読んだこと…

安城家の人々 里見 弴

志賀直哉が山の手線の電車に跳ね飛ばされて重症を負ったのは大正2年8月15日。 東京・芝浦海岸納涼祭の帰り道で、その時、同道していたのが里見 弴、二人の付き合いは60年はあっただろうか。 療養のために訪れたのが城崎、或いはこの怪我がなければ名作『城…

風の盆恋歌 高橋 治

私は花の名前に疎く、大抵の場合、名を知らない。 こんなくだりがある。 「朝の中は白いのですが、昼下がりから酔い始めたように色づいて、夕暮れにはすっかり赤くなります。 それを昔の人は酒の酔いになぞらえたのでしょう」 「それは、また、粋な」 ~略 …

オンバコのトク 佐藤愛子

初出は『加納大尉夫人』が「文学界」昭和三十九年八月号で、『オンバコのトク』は「小説新潮」昭和五十六年三月号で、前者のみ単行本化され、帯にはこのように書かれている。 六十年の間、人生の浮沈に従って書いて来たもの(中略)の中に二編だけ、これだけ…

天の夕顔 中川与一

まず、この本の解説を書いているのは文芸評論家の保田與重郎で、これが何ともややこしく難しい。 私は哲学が大の苦手、そのような論法で書かれてもよく解らない。 中河与一という人は川端や横光利一と同じ新感覚派の作家だが、しかし新感覚派とはこのような…

善太三平物語 坪田譲治

凡そ40年ほど前に坪田譲治さんの作品をよく読んでいた。 この人は童話作家で、主に善太と三平兄弟を扱ったものが多く、特に『子供の四季』という作品が気に入り愛読するきっかけを作った。 今一度、単行本になって復刊したので読み返してみた。 奥付には初版…

銀河鉄道の夜 宮沢賢治

宮沢賢治を知らなかった小学5年の頃、藤城清治さんが描かれた「銀河鉄道の夜」の影絵を見て以来、強い印象を心に植え付けられ、もし銀河鉄道に乗れたならどれだけ素晴らしいかと、胸ときめかせていた時代が懐かしい。 宮沢賢治に関しては、文芸評論・評伝・…

最終の花 小堀杏奴

左が表紙。 初版は昭和26年11月25日、右は見開きの1頁目で曼珠沙華の絵が描いてあるが、敗戦後の事情もあるのかタイトルなんか万年筆で書いたような稚拙なもの。 サンフランシスコ平和条約の署名はこの年の9月8日で日本はまだ独立国ではない。 物がない時代…

加納大尉夫人 佐藤愛子

本書の文庫化は昭和55年12月と古いもので著者が一番気に入ってる作品に挙げているとあったので古書店で見つけた折に買ってしまった。 ストーリーとしては難しいものではなく、見栄え麗しくない主人公の安代は、親の持ってくる縁談を悉く撥ね付け、一生独身で…

八疊記 里見 弴

毎年、今頃、といふのは、いま現に庄策が筆を執ってゐる十二月の上旬を指すのだが、今頃になると、高島易斷、九運暦の讀賣りといふのが、横町の辻に、路地の裏に、きまって爺むさい皺枯聲をふり絞り、不器用な節などつけて、 「え~、子の年は、・・・干支頭…

仮装人物 徳田秋声

妻を亡くし老境に差し掛かった作家庸三、作家志望で多情気質の愛人葉子、二人の腐れ縁のような物語だが、まあ、とにかく読み辛い。 徳田秋声といえば明治・大正・昭和と活躍してそれなりに有名な作家だと思うが、今日、それほどには読まれない理由が一読して…

わたしが・棄てた・女 遠藤周作

遠藤周作の小説にしては下卑たタイトルだと思ったが、逆にそれが興味を誘い触手を伸ばしてしまった。 主人公の大学生吉岡努はなんともいけ好かない男で性欲の捌け口から純粋な森田ミツの操を奪う。 一見、凡俗で愚鈍の人間、教養もなく特別魅力のない田舎娘…

娘と私 獅子文六

まるで原稿用紙1000枚ほどの作文を読まされたような気分だ。 親子の私小説だが、文体としてはあまり上手いとは思えなかった。 しかしこの小説が昭和36年、NHK朝の連続テレビ小説第1号となった作品らしいが、私は見た記憶がない。 書かれた時期は昭和28年から…

和解 志賀直哉

自分の親が物書きだったらよかったのにと常々思っている。 生前、父は経歴や想い出を何も書き残さなかった。 実母との激しい確執があったとは語っていたが、それがどのような原因に拠るものか今となっては知る由もない。 そこへいくと近代作家は私小説や随筆…

乙女の港 川端康成

20歳前後だったと思うが、ひたすら川端康成ばかりを読んでいた時期があった。 しかし、22歳で司馬遼太郎を知ってからというもの、まるでバトンタッチしたかのように川端文学から遠のいてしまった。 以来、もう川端を読むことはあるまいと思っていたら、今ま…

圓太郎馬車―正岡容寄席小説集

山本有三原作で昭和13年制作の『路傍の石』を観ると珍しく鉄道馬車の動画が見れるが圓太郎馬車とは何ぞや・・・? 鉄道馬車はレール上の客車を馬が引っ張るのだが圓太郎馬車は道路上の客車を馬に引かせるものらしい。 明治から大正にかけて圓太郎馬車、つま…

天皇の料理番 (上・下) 杉森久英

著者は既に故人となっているが、どういうわけか近年、この原作を元にしたテレビドラマが放映された。 杉森久英は伝記文学を得意とする人で私も過去、何作か読んでいるが『天皇の料理番』はたまに古本屋で見かける程度の絶版本で、先日、復刻版が出ているのを…

花笑み・天上の花 萩原葉子

当然のことながら昭和30年代から40年代にかけて明治生まれの著名人が多く亡くなっていった。 遠く日清戦争を子供ながらに記憶している世代の方々だ。 私にとっては幼少期から少年期に移行していくこの時代、ただ、若さだけが売り物の、盆暗少年に過ぎず、文…