愛に恋

    読んだり・見たり・聴いたり!

昭和文学(読書録)

滝田ゆう名作劇場 滝田 ゆう

私は成人してから『あしたのジョー』の最終回、ホセ・メンドーサとのタイトルマッチを描いたものと、当時流行っていた上村一夫の『同棲時代』を読んで以来、スパッとマンガを読むのを止めてしまったが、唯一、たまに読むのが滝田ゆうの劇場シリーズぐらいだ…

少将滋幹の母  谷崎潤一郎

日本人で名字の上に「大」の冠が付く人といえば二人しかいないだろう。大西郷と大谷崎だ。大西郷といえば幕末維新に広く知られたことで、大隈重信もそれを書いている。大谷崎と言い出したのは三島由紀夫じゃないかと思うがどうだろう。まだ10代の頃は最も苦…

帰郷 大佛次郎

これは新潮文庫の旧版で、私がおそらく10代の頃に販売していたものではなかろうか。恐ろしく字が小さい。大佛次郎の「帰郷」は夙に有名な小説で、昭和二十三年毎日新聞に連載され、執筆当時、筆者は癌病の疑いに悩み、これを最後の作品と覚悟していたが杞憂…

人間失格 太宰 治

太宰の文学的評価というのは未だに確定していないらしい。一般的の日本文学といえば、谷崎潤一郎、志賀直哉、川端康成、三島由紀夫などの名前が挙がり、太宰というと私小説作家の代名詞みたいな感覚なんだろうか。私はといえば、これまで作品よりは太宰と近…

秋津温泉 藤原審爾

直木賞作家にして、女優の藤真利子は息女。小島政二郎に「文章の一つ一つがピタッ、ピタッと女の急所を押さえている見事さは、心憎い位の魅力」、井伏鱒二には「女性の本能的な正体を書き現わす」「野性味も実に野放しの感じ」と評された作家だが、確かにそ…

阿修羅のごとく 向田邦子

この小説に関しては以前から知っていたし、昔の彼女から話も聞いていたが読んでいなかった。例によって古書店の100円コーナーで買って読んでみたが面白いね。年老いた父に愛人がいた、四人の娘は対策に大わらわ。だが、彼女たちもそれぞれ問題を抱えている。…

失楽の庭 中河与一

中川与一の本を読むのは3冊目だが、これはえらく古い作品だ。奥付を見ると初版が昭和25年10月となっている。故に全編、旧字体で、舞台は民国30年5月6日の北京から始まり、終戦後の民国35年11月の青島で終わる。つまり昭和20年5月6日からの話で、主人公は日本…

恐婚 色川武大

別れた夫婦や元恋人同士なら真の友達になりえると思っている。事実、一緒の部屋に居てもおかしな気が起こらない。はっきり言えばお互いにもう″したくない”から友達になりえるのだ。本書は離婚してせいせいしたというのに、なんとなく同棲を始めたおかしな二…

女ざかり 丸谷 才一

本書をいつどこで買ったのか覚えてないが、長らく棚の肥しになっていた。ただ丸谷才一の『女ざかり』というタイトルに惹かれて買っただけのこと。何やら色香ただよう内容かと思いきや、さに非ず、硬派の社会派小説といってもいい題材で、どういうわけか現代…

冬の花火 渡辺淳一

31歳で亡くなった中城ふみ子という人を知っているだろうか。これまで渡辺淳一が書く自伝小説は全部読んできたと思っていたのだが、先日、100コーナーで本書を見つけ、これは読まねばと思い購入した。才能を認められ順風満帆にきたふみ子を襲った突然の乳がん…

亭主の家出 吉村 昭

その昔、まだ20代だった頃の私は本当によく司馬遼太郎さんの作品にお世話になっていた。 司馬さんを支柱にどんどん幅を広げ歴史文学や評伝、自伝など読むようになったが、誰か私を夢中にさせてくれる歴史作家はいないものかと探していたところ、巡り合ったの…

怨歌劇場 野坂 昭如 滝田 ゆう

滝田ゆうさんの漫画本を読むのはこれで三冊目だが、今回は野坂昭如の文に対して絵を描いているようだ。 本来、この人のノスタルジックな物思いに対し好感を持っているのだが、作は野坂作品とあって、やや、エロチックなものが多い。 これまで一度も、野坂文…

女経 村松梢風

現代作家に村松友視と言う人が居るが、その祖父が明治22年生まれの村松梢風となる。12話からなる短編集で、それぞれに違った女が登場、12人の女との出会いと別れが書かれている。 意外なことに戦前の女はみな身持ちが固いと言っては大違い。 中年になった梢…

暗室 吉行淳之介

よく知られているように吉行淳之介の父はエイスケ、母はあぐり、妹に女優の和子がいる。 そして私生活のパートナーが宮城まり子。 以前、宮城まり子の「淳之介さんのこと」を読んだが、それ以外、二人に関することは知らない。 また、第三の新人と言われる作…

槐多よねむれ  山田幸平

本書は表題『槐多よねむれ』となっているが、中編八話からなる本で、全体的には少し尻切れトンボのように、どれも小難しくして中途で終わっているのうな気がする。 特別強く印象に残る作品もなかった。 槐多よねむれに関してだけ少し長くなるが、引用してみ…

笛吹川 深沢七郎

積読本が300冊もあると、どうしても自分で買ったのにも関わらず全部を把握し切れていない。 拠って書棚に深沢七郎の本が4冊も溜まっていたとは知らなんだ。 そこで、取り敢えず手にと取ったのが本書だが、然し、この人の名は昔から知ってはいたものの読むの…

棺の花・那智滝情死考  水上 勉

久しぶりに、水上勉さんの小説を読んだ。 20代前半だったと思うが『雁の寺』や『五番町夕霧楼』、更には私をして感動せしめた『越前竹人形』などは本当に名作だと思う。 映画では若尾文子が演じていたが、やはりあの作品は彼女に相応しかったのだろうか。 扨…

愛よ、愛 岡本かの子

本書は散文というか何というか、短歌あり小説あり随筆ありと、編集者の方でかの子の死後、勝手に集約したのか分からないが、明治生まれの彼女の文体は多少読みづらいところもある。 然し、かなりの才能は伺える。 例えば精神病院の待合で見た光景をこのよう…

ポロポロ 田中小実昌

本書は七編からなる短編集で、主に昭和19年暮れから終戦まで、著者の初年兵当時の思い出を書いたものだが、かなり年月が経ってからの著書とあって、記憶が定かでないところもあるが、二等兵として如何に中国戦線の従軍が大変だったか、こんな生活はまっぴら…

その夜 長与善郎

長与善郎は白樺派の文人だが、過去に『青銅の基督』とを読んでいるが、すっかり内容を忘れている。故に長与氏に関しての知識もないまま、古書店で初版本の本書を手に取り何も分からないまま購入してみたが、どうも本作を読んだ人がネットの中では見つからず…

放浪記 林芙美子

確か映画や舞台などで見る『放浪記』にも、別れた男を訪ねて瀬戸内海の因島に赴く林芙美子が描かれていたはず。自分を捨てたはずの男に会う理由は金の無心。芙美子は20歳、新劇の俳優、田辺若男との同棲中で貧乏な田辺のために、節操もなく初恋の男にわざわ…

自動巻時計の一日  田中小実昌

田中小実昌を見なくなって久しいが、いったい、いつ亡くなったのかと調べてみると2000年2月26日とある。 毛糸の帽子がトレードマークで、昔はよくテレビで見かけたものだが、どういう人なのか詳しく知らなかった。 しかし、古本マニアのネットなど見ていると…

束の間の午後 萩原葉子

表題作の他に『対岸の人』『葉桜』『息子の結婚』『鬼が笑う』計五編の自伝的小説で、かなり生々しい。 言うまでもないが、著者は朔太郎の長女で経歴によると1944年に職場の上司大塚正雄と結婚して1子を儲けたとあるが、この子が朔美になる。 因みに男性。 …

離婚 色川武大

色川武大と阿佐田哲也が同一人物だと知ったのはそんな昔のことではない。 阿佐田哲也は麻雀小説作家として有名で、阿佐田哲也は即ち「朝だ、徹夜」から来ているらしく、その道では著名な作家らしいが、今まで色川武大、阿佐田哲也名義の本は一冊も読んだこと…

安城家の人々 里見 弴

志賀直哉が山の手線の電車に跳ね飛ばされて重症を負ったのは大正2年8月15日。 東京・芝浦海岸納涼祭の帰り道で、その時、同道していたのが里見 弴、二人の付き合いは60年はあっただろうか。 療養のために訪れたのが城崎、或いはこの怪我がなければ名作『城…

風の盆恋歌 高橋 治

私は花の名前に疎く、大抵の場合、名を知らない。 こんなくだりがある。 「朝の中は白いのですが、昼下がりから酔い始めたように色づいて、夕暮れにはすっかり赤くなります。 それを昔の人は酒の酔いになぞらえたのでしょう」 「それは、また、粋な」 ~略 …

オンバコのトク 佐藤愛子

初出は『加納大尉夫人』が「文学界」昭和三十九年八月号で、『オンバコのトク』は「小説新潮」昭和五十六年三月号で、前者のみ単行本化され、帯にはこのように書かれている。 六十年の間、人生の浮沈に従って書いて来たもの(中略)の中に二編だけ、これだけ…

天の夕顔 中川与一

まず、この本の解説を書いているのは文芸評論家の保田與重郎で、これが何ともややこしく難しい。 私は哲学が大の苦手、そのような論法で書かれてもよく解らない。 中河与一という人は川端や横光利一と同じ新感覚派の作家だが、しかし新感覚派とはこのような…

生きて行く私 宇野千代

人生此の方、いろいろな女性に出会って来たが、宇野千代のような豪快な女に巡り合ったことはない。 4回の結婚歴、生涯で家を13軒も建てた細腕繁盛記とでもいうような自叙伝的な本。 思い立ったが吉日とは将に彼女のためにあるような言葉だ。 例えばこんな場…

善太三平物語 坪田譲治

凡そ40年ほど前に坪田譲治さんの作品をよく読んでいた。 この人は童話作家で、主に善太と三平兄弟を扱ったものが多く、特に『子供の四季』という作品が気に入り愛読するきっかけを作った。 今一度、単行本になって復刊したので読み返してみた。 奥付には初版…