愛に恋

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女ざかり 丸谷 才一

本書をいつどこで買ったのか覚えてないが、長らく棚の肥しになっていた。ただ丸谷才一の『女ざかり』というタイトルに惹かれて買っただけのこと。何やら色香ただよう内容かと思いきや、さに非ず、硬派の社会派小説といってもいい題材で、どういうわけか現代小説なのに著者は旧字体などで書いている。登場人物も架空と実在を取り混ぜ何やらややこしい。安岡正篤副島種臣犬養木堂は実在の人物だが、大沼晩山なる書道家は存在しないだろう。併し、副島種臣が漢の高祖の血筋を引く生まれで、はじめは「龍種」帝王の子孫という名前だったというのは本当だろうか。まあいいが、舞台は、創立90周年を迎えようという大新聞社、論説委員の南弓子は、元首相が水子供養除幕式に臨んだ際、妊娠中絶と産児制限に関して放った暴言をまくらに、出産するのは女性という題名の論説を書く。それを機に彼女は配置転換になろうとしている。その原因を突き止めるべつ家族、知人、恋人を使って捜索するという話だが、この作品は映画化されているようで、主演の南弓子を吉永小百合が演じている。原作では長台詞が多く、映画を観てない私として台詞覚えも難しそうに思う。さらに弓子の恋人は不倫の相手だが、本来ならありそうな濡れ場が一切ないところが吉永小百合が引き受ける決め手となったのだろうか。丸谷才一という人は思った以上の知識人で、いたるところにその才覚あふれる文章を露出させている。孝経に曰く、天子より蛮人に至るまで孝に始終なしってwikiにも載っていない。