愛に恋

    読んだり・見たり・聴いたり!

2017-10-01から1ヶ月間の記事一覧

切断—ブラック・ダリア殺人事件の真実 ジョン・ギルモア

この事件に関しては映画化もされているらしいが私は見てない。 通称、ブラック・ダリア事件とは1947年1月15日、ロサンジェルスで女優志望のエリザベス・ショート(22)が激しい拷問の末、腰の辺りから胴体を真っ二つ切断、血を抜かれ、両脚を大きく広げたま…

大川周明と狂気の残影 アメリカ人従軍精神科医とアジア主義者の軌跡と邂逅 ダニエル・ヤッフェ

30数年前のこと、近江の国、義仲寺にある芭蕉の墓を詣でたことがある。 芭蕉の弟子が詠んだという、「木曽殿と背中合わせの寒さかな」の由来通り、木曽義仲と芭蕉は向かい合うように眠っていた。 だからというわけではないが、今回の主役、大川周明は東京・…

狂うひと 「死の棘」の妻・島尾ミホ 梯久美子

最近、注目しているノンフィクション作家が二人いる。 『永山則夫 封印された鑑定記録』を書いた堀川恵子と『硫黄島 栗林中将の最期』の著者梯久美子で、堀川恵子には関連本として『死刑の基準 「永山裁判」が遺したもの』という作品があり、梯久美子には『…

自由学校 獅子文六

今回の文六作品は昭和25年5月から朝日新聞に連載されたもので、時代を反映して敗戦、焼け跡、講和条約などの文言が頻繁に出てくるが、さすがにリアルタイムで書いているだけあって説得力がある。 終わりに作者自身も書いているが獅子文六の代表作とは何なの…

詩人の妻 生田花世 戸田房子

著名な作家の自殺というのは他国と比べて多いのか少ないのか知らぬが、日本で夙に有名な自殺者と言えばまず以下の順になる。 有島武郎 (大正12年6月9日) 芥川龍之介(昭和2年7月24日) 太宰治 (昭和23年6月13日) 三島由紀夫(昭和45年11月25日) 川端康…

流星ひとつ 沢木耕太郎

『お熱いのがお好き』の一場面、電車の中で向かい合って座るトニー・カーティスに「本が逆さまだよ」と指摘されたり、自宅で柄にもなくラフマニノフを聴いているマリリン・モンローという人はわざと、あのような白痴美人的な役どころを演じていたと思うが、…

甦る『ゴンドラの唄』―「いのち短し、恋せよ、少女」の誕生と変容 相沢直樹

私にとっての読書とは趣味以上、義務未満みたいなものだが出来得る限り、自分の身の丈に合ったサイズの本を選別して読みたいと思っている。 あまり度を越して不釣合いな本は当然の如く理解の範疇を超え苦痛の領域に誘う。 本題に入る前に一言、苦言を呈した…

バルト海の死闘 C.ドブスン

読書は格闘技だと言われるがまったくだ! 眠気、疲れに打ち勝ち、読んだら備忘録としてブログに書く。 しかしこれが時に難儀を極める。 果てさて、今日は、この壮大な物語をどのように書くか現段階では判然としないままだが、とにかく書き始めるとする。 か…

コンビニ人間 村田沙耶香

まあ、こんなことを言っては失礼な話しだが、そもそも、芥川賞受賞作に名作というものがあるのだろうか。 私も全ての作品を読んだわけではないので一概に断定できるわけではないが、どうも物足りなさを感じる。 これで終わり! みたいな読後感をいつも味わう…

東京ローズ ドウス昌代

私にとってローズと言えばジプシー・ローズと東京ローズ以外、まず思い浮かばない。 その東京ローズだが日系アメリカ人で戦時中、連合軍に対しラジオを通じ、何やら謀略放送めいたことをやっていたぐらいの浅い知識しかないが、ただ、東京ローズとは複数女性…

藤田嗣治 本のしごと 林洋子

本来、美術や絵画には門外漢の私がこんな本を読んでもあまり意味がないのだが、古書市で見つけ、勢いで買ってしまった。 藤田の80年を超える生涯で、日本やフランスなどで関わった書籍、雑誌を対象に表紙絵や挿絵、新たに公開された旧蔵書、または国内の公共…

石原莞爾 マッカーサーが一番恐れた日本人 早瀬利之

かれこれ20年ぐらい昔になるだろうか。 NHKスペシャルで張学良を特集し、何と本人が登場したから驚いた。 まるで浦島太郎に遭遇したような気持ちだったが、キャスターのインタビューに満100歳を迎えた学良は矍鑠とした風貌で記憶も正しく受け応え。 この歴史…

カレーライスの唄 阿川弘之

ポツダム大尉という言葉があるが、ポツダム宣言受諾後に階級を一つ進級させることで、阿川弘之は支那方面艦隊司令部附として終戦を迎え、この、ポツダム大尉として焼野原となった郷里広島に帰った。 その後、志賀直哉に師事して作家になるのだが、本題を前に…

夢二日記〈1(明治40年~大正4年)〉

幕末以降、多くの人の日記が刊行されているが、大別すると二種類に分かれる。 死後、公開されることを想定して書かれている場合と、そうでない場合。 例えば啄木のローマ字日記の中には、他人に読まれてはまずいという記述がある。 女郎相手の話しなので、こ…

幕末維新懐古談 高村光雲

永井荷風はこんなことを言っている。 余裕のない現代人にはけっして承継する事の出来ないそういふ昔からなるつまらぬ職業は、手慣れた其の老人の死と共に永劫この世からはなくなって仕舞ふのである。 江戸情緒をこよなく愛した荷風散人らしい言葉だ。 おそら…

戦前の昭和を探して! 大阪中崎町

すっかり変わってしまった世の中 いつの時代も見続けて来ました 二度と戻って来ない昭和や 帰り来ることのなかったあの人も 築年数は忘れましたが みんなが生きていたあの頃を私は知っています 郷愁を探し求めるアナタ さあ、この扉の中で新しい思い出作りを…

血盟団事件―井上日召の生涯 岡村青

自分で選んどいて何だが、まったくストレスの溜まる本だった。 昭和初期の歴史書には必ずと言っていいほど登場する血盟団事件と井上日召。 とにかく、この人物を紐解くには少なくとも大正期の米騒動から五・一五事件までの世相を知る必要がある。 私にとって…

黙って行かせて ヘルガ・シュナイダー

ナチ戦犯の中でも取り分け悪名高い人物として有名な医師、ヨーゼフ・メンゲレは アウシュビッツ収容者から「死の天使」と言われ恐れられていたが戦後、忽然と姿を消す。 イスラエル諜報機関は必要にメンゲレを追うが、メンゲレは追跡を逃れ1979年、海水浴中…

帰ってきたヒトラー 下 ティムール・ヴェルメシュ

う~ん・・・、何と言うか! とにかく、この小説は読むより映画で見た方がいいと思う。 そう簡単な作品とは思えない。 600頁近い大作で全編、ヒトラーの独白と言っていい。 それも政治哲学的な話しが専ら。 現代に現れたヒトラーは徹底的に「オレ文脈」での…

帰ってきたヒトラー 上 ティムール・ヴェルメシュ

ここ最近、評伝やノンフィクションばかり読んでいるので、たまには毛色の違ったものをということで選んだ本だったが。 何でも本作は空前の大ベストセラー小説で、42言語に翻訳され250万部を売り上げた作品で映画の観客動員数も240万人。 ということで上下巻…

沖縄の島守 内務官僚かく戦えり 田村洋三

發 沖繩根據地隊司令官 宛 海軍次官 沖繩縣民斯ク戰ヘリ縣民ニ對シ後世特別ノ御高配ヲ賜ランコトヲ 自決を一週間後に控えた昭和20年6月6日夜、沖縄の海軍司令官大田実少将が海軍次官に宛てた電文は世界史にも類例を見ない悲痛な名文として名高いが、今日、太…

拙者は食えん! サムライ洋食事始 熊田忠雄

別に戦後の食糧難の時代に生まれたわけでないのだが、我が家は比較的貧乏な家柄。 その所為もあって私がトマト、納豆、フキなどを初めて食したのは小学校も5年になってからのこと。 特に驚いたのは納豆だった。 あまりの臭さに、これはウンコの類ではないか…

海軍大将加藤友三郎と軍縮時代 工藤美知尋

明治日本では薩摩の海軍、長州の陸軍などと言われるが、日清戦争時の内閣と陸海軍の主要人事を見ると以下の如くになる。 総理伊藤博文(長)外務陸奥宗光(紀州)。 陸軍は陸相大山巌(薩)次官児玉源太郎(長)川上操六(薩)山縣有朋(長) 野津道貫(薩)…

SHONAN逍遙―文豪たちが愛した湘南 桝田るみ子

以前泊まった藤沢の宿で貰ったマップに明治以降、如何に多くの著名人がこの辺り一帯に別荘、または家屋敷を構えていたか、その多さを知って驚いた。 広田元首相の妻静子さんが自害した広田家別邸、芥川、白樺派の逗留地、東屋などは鵠沼にあり、茅ヶ崎には団…

最高殊勲夫人 源氏鶏太

私の最近の読書傾向と言えば専らノンフィクションか伝記評伝の類。 推理小説やエンターテインメント系の本はあまり読まなくなってしまった。 ある面、堅苦しいったらありゃしない。 そこで閑話休題のように時折、手にするのがちくま文庫なのである。 まるで…

ハリス 日本滞在記 下

苦心惨憺読了、どうもこの本は学術的色合いが強い日記で一般向けではない。 しかし、そこはそれなり、ハリスが洞察する日本の国状や人となりは理解できたと思う。 さしずめハリスの観察はと言うと、一見、幸福そうに暮らしている庶民を見て! 私は時として、…

ハリス 日本滞在記 中

私が、初めて伊豆の下田に降り立ったのは確か昭和60年の夏だと記憶するが、一週間ばかり仕事で行ったのを皮切りにすっかり当地を気に入り、以来、何度となく足を運んでみた。 二度目の訪問は観光で、偶然にも黒船祭りの時期、米軍の軍楽隊演奏を中心に市内は…

ハリス 日本滞在記 上

実に重々しい本だ! 何しろ註釈が凡そ半分はあるかと思うほどで尚且つ文字が小さく旧漢字で書かれている。 古書店で見つけ先客が手に取ってペラペラ捲っていたのを目撃。 なかなかお目に掛かれない代物だけに相手が買わなければ即買いと思っていたが運よく我…

裏長屋

行水や美人住みける裏長屋 昔から美人は裏長屋に住んでいるもんだと言いますが残念ながらお目に掛かれませんでした(笑 大正や明治の頃ならさしずめこんな感じでしょうか。 粋な黒塀 見越しの松に 仇な姿の 洗い髪 大きく開いたうなじを背に長い黒髪を束ね、…

よみがえる 松岡洋右 福井雄三

東京裁判の公判中、検事が東條英機に対しこんな質問をする場面がある。 「貴方は、弐キ参スケという言葉を知っているか?」 「はい、知っています」 戦前、弐キ参スケと言えばあまりいい印象が無かったようだ。 東條英機 関東軍参謀長 星野直樹 国務院総務長…