外国文学(読書録)
「メゾン テリエ」「聖水授与者」「ジュール伯父」「クロシェット」の4編からなる短編集だが、何年も前に岩波文庫に凝り、外国文学の短編集など沢山読んだが何一つ覚えてない。例えば同じモーパッサンの『脂肪の塊』などは欠片も記憶にない。「メゾンテリエ…
少し期待外れだったな。西部史に名高いビリー・ザ・キッドの名は子供の頃から知っていたが、はて、映画を観た記憶がない。おそらく忘れているだけで、詳しくは例によって父から教わったのだろう。その証拠に彼を射殺したのがパット・ギャレットだということ…
魔都といわれた1930年代の上海、そんな上海を特務機関員として青春をおくった父をどうしても思ってしまう。戦後、死亡するまでモルヒネ中毒だったのかもしれないが、それもこれも戦争のためだった。そんな魔都、上海といわれた都市を舞台に自堕落な生活をお…
孤独な青年が傷ついた美少女と道端で知り合って忽ち恋に落ちる、現実的にはありえないような話だ。絶賛する人もいれば、けちょんけちょんにこきおろしす人もいる作品。とにかく会話が一方的に長くてうんざりする。少女ナースチェンカは叔母と住む二階を短期…
下巻は俄然面白くなる。『レベッカ』は欧米で20世紀ゴシック・ロマンの金字塔であるという評価が定着しているらしいが、本当にそのとおりだ。これほどの海外文学には滅多にお目に掛かれない。完璧なストーリーにして傑作中の傑作だろう。ヒッチコックが映画…
もう、30年以上前になるが、1940年のアメリカ映画でヒッチコック監督の『レベッカ』を観たことがある。ジョーン・フォンテイン、ローレンス・オリヴィエ出演だったが、あまりにも年月が経ち過ぎているのでストーリーを全く忘れてしまった。ただオリヴィエの…
この小説は哲学、文学、絵画、宗教と、かなり広範囲な知識が要求されて、特に哲学の分野は苦手なので難しく思う場面が多々ある。例えば「空想の力で空間と時間の二つの領域を支配している者にとって、人生の現実がどうあれ、少しも問題ではないのだ」など。…
偉大な画家になるという自らの才能を信じてパリに渡ったフィリップ。然し、その夢、破れてイギリスで医者になることを決意する。そんな彼の前に、ある日、ミルドレッドという女現れる。この小説は理論や哲学といった点ではかなり素晴らしい。例えば「画家は…
主人公のフィリップは生まれつきのエビ足で、差別をうけ虐めに遭い、早くに両親を亡くし叔父夫妻の家で育つのだが、エビ足とは何ぞや。生まれてこの方、昔は確かに差別用語などは一般的に使われていたが、エビ足の少年など見たこともないし、第一、エビ足な…
死後10年を経て再発見された、奇跡の作家らしいが、評判が高かったので読んでみた。実体験とフィクションを混ぜた短篇集で、少し哲学的な要素もあるので、私としてはやや解かりにくかったが、上手い表現には魅せられた。曰く「幸せを冷凍保存する」「犯罪者…
恋愛を哲学で捉えたことなど一度もない。 そんな高尚な恋など私にはできないが、何のことはない、本書は予想外の哲学的恋愛小説らしい。 哲学的恋愛小説とは何ぞや。 重さ、必要性、価値は内部で相互に結ばれている三つの概念があり、必要なものは重さであり…
本書は出版後1年半を経過(2020年2月の第3週現在)何と73週ランクインの驚異的な伸びを見せているとか。 2019年、アメリカで一番売れたミステリーで700万部を突破。 作者は実に70歳でデビューしたディーリア・オーエンズという御仁。 ミステリーというより、…
みなさん、この本知ってますか。 ある人から「読むといい」と言われた10冊に挙げられた中の1冊ということで読んでみました。 毎夜1時間の停電の夜に、ロウソクの灯りのもとで隠し事を打ち明けあう若夫婦──「停電の夜に」。 観光で訪れたインドで、なぜか夫へ…
余りにも知的水準が高く、猥褻どころか個人的にはインポテンツに成り兼ねないような、読了困難な小説に思われた。 劈頭20ページほど読んで窓から放り投げたくなるような本で、これでは本来挫折も厭わないほど苦痛に塗れ乍ら読了に漕ぎ付けたが、他の皆さんの…
舞台はインドシナ戦争下のベトナム、つまりベトナム戦争以前の話なので対戦相手はフランスということになる。 語り手は妻子を本国に残し派遣されている英国人記者で、彼の現地妻を半年前に奪ったアメリカ人青年パイルが無惨な水死体となって発見されたところ…
名前からは分からないが著者はアルジェリア人の女性である。 依って固有名詞が「ん」で始まることが多く、表記としては日本人に読みづらい。 12の短編集からなるのだが、間違いなく過去、アルジェリア文学など読んだことがない。 政情不安なことから、逮捕、…
挿絵は会田誠らしいが、あまり興味がない。 それにこの手の小説にも興味がない。 少女を誘拐し、拷問、毒を飲ませて陵辱、目の前で婚約者を殺害、その心臓を食わせる。 マルキ・ド・サドだから読んだものの、他の作家だったら読まなかった。 主人公の言い分…
ひと月ほど前だったか、Twitterを見ていたら、この「グレッグのダメ日記」という本の紹介をしている人がいた。 まるで私の「駄目男のダメブログ」みたいな物かと思ってみたが、そういえば、行きつけの古本屋のワゴンセールの中に1冊あったのを思い出し、翌日…
どこかあどけない表情を見せる貴女と、小悪魔的で娼婦のようなものが同居するエヴァさん、貴女は魔性の女なんですか。 魔性の女OKです、是非一度、お手合わせ願います。 ヴァリエーションにとんだ貴女が、どんなパフォーマンスを見せてくれるか、今から楽…
リオ・ブラボーのセット (1959) クールな色気とスレンダーな肢体及び脚線美で有名ですが、この人、本当にスタイルがいい。 1959年の『リオ・ブラボー』に出ていたが、それほど出演作に恵まれなかったことが残念だ。 然しそれはもう昔のこと。 現在は88歳にな…
どうなんだろうか、この本は。 ジークムント・フロイトといえば精神分析学の創始者と言われているが、全編、夢の中の話で終わっている。 他人の夢の話ほどバカバカしいものはないと言うが、まったくその通りで、時に哲学的、または心理学などの小難しい話を…
本作は映画化されているらしいが見ていない。 邦題は『最強に二人』となっている。 それも単なる話題作ではなくフランス、ドイツで大ベストセラーになり映画は、フランス映画史上歴代No.2のメガヒットとなったとある。 そこまで言うなら読んでみようかとなっ…
黄色い顔あの木の根元まで忍び寄ってつぶされるのを防ごう英国ドラマの未来水爆弾チェッカーの場の百合高価なスリル雑誌ささやく結果この表面上気持ちいい散歩通風孔緑の箱婦人たち下品なことばつかいハンカチを口にあててあなたの名前は本に載ってました事…
恐れながら皇后陛下に申し上げます。 皇后さまが退位後に、お読みになるのを楽しみにしているというご発言、出版社も慌てて増刷と聞いております。 小生も気になり、いつか読もうと思っていた矢先、行きつけの古書店で本書『ジーヴズの事件簿―才智縦横の巻』…
いくら本読みと言っても名作総て読み尽くしたなどということはない。 却ってあまりにも有名過ぎると読んでない場合もある。 これなどはその典型的な例だ。 誰でも知っているこの本、てっきり童話の類かと思っていたが大きな間違いですね。 これ、意外に奥が…
第二次世界大戦下、ドイツに降伏したギリシャはケファロニア島をドイツ、イタリア両軍に占領される。 しかし1943年9月、イタリアは連合軍と休戦協定に入り、ムソリーニは失脚して幽閉の身に、代わって登場したのがバドリオ内閣。 その後、イタリアの枢軸国離…
以前、『死刑全書』という分厚い本を読んだことがある。 世界で行われてきた、死刑に関する実例書で、それはもう事細かに書かれていて、おぞましさに読むに耐えない本だ。 人類は極悪人に対し、または冤罪、魔女狩りにおいても、如何に苦痛を持続させる死に…
最近まで知らなかったが、著者、ユリウス・フチークという人はチェコでは英雄的な存在だとか。 本書も世界80カ国で翻訳され版を重ねる名著らしいが、嘗て一度もチェコ文学に接したことのない私は、重い腰を上げ読破に向け挑戦したはいいが、あまりの訳注の多…
モーパッサンの経歴についてはまったく無知だが、何でも1870年の普仏戦争に志願して従軍したらしい。 統一前のドイツなので普仏とはプロイセン対フランスのことだが、プロイセン側は鉄血宰相ビスマルクが主導し、フランスはナポレオン三世が陣頭指揮を執った…
正直なところ私は外国文学と四つに組むときは内心おっかなびっくりで、名作と誉れ高い本をもし理解出来なかったらどうしようと戦々恐々としている。 林扶美子は「翻訳とはチャーハンみたいなものかな」と言っているが、なるほど上手いことを言う。 例えば「…