愛に恋

    読んだり・見たり・聴いたり!

外国文学(読書録)

ザリガニの鳴くところ ディーリア・オーエンズ

本書は出版後1年半を経過(2020年2月の第3週現在)何と73週ランクインの驚異的な伸びを見せているとか。 2019年、アメリカで一番売れたミステリーで700万部を突破。 作者は実に70歳でデビューしたディーリア・オーエンズという御仁。 ミステリーというより、…

停電の夜に ジュンパ ラヒリ

みなさん、この本知ってますか。 ある人から「読むといい」と言われた10冊に挙げられた中の1冊ということで読んでみました。 毎夜1時間の停電の夜に、ロウソクの灯りのもとで隠し事を打ち明けあう若夫婦──「停電の夜に」。 観光で訪れたインドで、なぜか夫へ…

ロリータ ウラジーミル ナボコフ

余りにも知的水準が高く、猥褻どころか個人的にはインポテンツに成り兼ねないような、読了困難な小説に思われた。 劈頭20ページほど読んで窓から放り投げたくなるような本で、これでは本来挫折も厭わないほど苦痛に塗れ乍ら読了に漕ぎ付けたが、他の皆さんの…

おとなしいアメリカ人 グレアム グリーン

舞台はインドシナ戦争下のベトナム、つまりベトナム戦争以前の話なので対戦相手はフランスということになる。 語り手は妻子を本国に残し派遣されている英国人記者で、彼の現地妻を半年前に奪ったアメリカ人青年パイルが無惨な水死体となって発見されたところ…

なにかが首のまわりに チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ

名前からは分からないが著者はアルジェリア人の女性である。 依って固有名詞が「ん」で始まることが多く、表記としては日本人に読みづらい。 12の短編集からなるのだが、間違いなく過去、アルジェリア文学など読んだことがない。 政情不安なことから、逮捕、…

ジェローム神父 マルキ・ド・サド

挿絵は会田誠らしいが、あまり興味がない。 それにこの手の小説にも興味がない。 少女を誘拐し、拷問、毒を飲ませて陵辱、目の前で婚約者を殺害、その心臓を食わせる。 マルキ・ド・サドだから読んだものの、他の作家だったら読まなかった。 主人公の言い分…

グレッグのダメ日記―ボクの日記があぶない! ジェフ・キニー

ひと月ほど前だったか、Twitterを見ていたら、この「グレッグのダメ日記」という本の紹介をしている人がいた。 まるで私の「駄目男のダメブログ」みたいな物かと思ってみたが、そういえば、行きつけの古本屋のワゴンセールの中に1冊あったのを思い出し、翌日…

エヴァ・グリーン part.2

どこかあどけない表情を見せる貴女と、小悪魔的で娼婦のようなものが同居するエヴァさん、貴女は魔性の女なんですか。 魔性の女OKです、是非一度、お手合わせ願います。 ヴァリエーションにとんだ貴女が、どんなパフォーマンスを見せてくれるか、今から楽…

アンジー・ディキンソン 1931年9月30日 -  

リオ・ブラボーのセット (1959) クールな色気とスレンダーな肢体及び脚線美で有名ですが、この人、本当にスタイルがいい。 1959年の『リオ・ブラボー』に出ていたが、それほど出演作に恵まれなかったことが残念だ。 然しそれはもう昔のこと。 現在は88歳にな…

フロイトの函 デヴィッド・マドセン

どうなんだろうか、この本は。 ジークムント・フロイトといえば精神分析学の創始者と言われているが、全編、夢の中の話で終わっている。 他人の夢の話ほどバカバカしいものはないと言うが、まったくその通りで、時に哲学的、または心理学などの小難しい話を…

A Second Wind   フィリップ・ポッツォ・ディ・ボルゴ

本作は映画化されているらしいが見ていない。 邦題は『最強に二人』となっている。 それも単なる話題作ではなくフランス、ドイツで大ベストセラーになり映画は、フランス映画史上歴代No.2のメガヒットとなったとある。 そこまで言うなら読んでみようかとなっ…

シティ・ライフ ドナルド・バーセルミ

黄色い顔あの木の根元まで忍び寄ってつぶされるのを防ごう英国ドラマの未来水爆弾チェッカーの場の百合高価なスリル雑誌ささやく結果この表面上気持ちいい散歩通風孔緑の箱婦人たち下品なことばつかいハンカチを口にあててあなたの名前は本に載ってました事…

ジーヴズの事件簿―才智縦横の巻 P.G. ウッドハウス

恐れながら皇后陛下に申し上げます。 皇后さまが退位後に、お読みになるのを楽しみにしているというご発言、出版社も慌てて増刷と聞いております。 小生も気になり、いつか読もうと思っていた矢先、行きつけの古書店で本書『ジーヴズの事件簿―才智縦横の巻』…

星の王子さま アントワーヌ・ド サン=テグジュペリ

いくら本読みと言っても名作総て読み尽くしたなどということはない。 却ってあまりにも有名過ぎると読んでない場合もある。 これなどはその典型的な例だ。 誰でも知っているこの本、てっきり童話の類かと思っていたが大きな間違いですね。 これ、意外に奥が…

コレリ大尉のマンドリン ルイ・ド・ベルニエール

第二次世界大戦下、ドイツに降伏したギリシャはケファロニア島をドイツ、イタリア両軍に占領される。 しかし1943年9月、イタリアは連合軍と休戦協定に入り、ムソリーニは失脚して幽閉の身に、代わって登場したのがバドリオ内閣。 その後、イタリアの枢軸国離…

死刑囚最後の日 ヴィクトル・ユーゴー

以前、『死刑全書』という分厚い本を読んだことがある。 世界で行われてきた、死刑に関する実例書で、それはもう事細かに書かれていて、おぞましさに読むに耐えない本だ。 人類は極悪人に対し、または冤罪、魔女狩りにおいても、如何に苦痛を持続させる死に…

絞首台からのレポート ユリウス・フチーク

最近まで知らなかったが、著者、ユリウス・フチークという人はチェコでは英雄的な存在だとか。 本書も世界80カ国で翻訳され版を重ねる名著らしいが、嘗て一度もチェコ文学に接したことのない私は、重い腰を上げ読破に向け挑戦したはいいが、あまりの訳注の多…

脂肪のかたまり モーパッサン

モーパッサンの経歴についてはまったく無知だが、何でも1870年の普仏戦争に志願して従軍したらしい。 統一前のドイツなので普仏とはプロイセン対フランスのことだが、プロイセン側は鉄血宰相ビスマルクが主導し、フランスはナポレオン三世が陣頭指揮を執った…

グレート・ギャツビー スコット・フェッツジェラルド 村上春樹訳

正直なところ私は外国文学と四つに組むときは内心おっかなびっくりで、名作と誉れ高い本をもし理解出来なかったらどうしようと戦々恐々としている。 林扶美子は「翻訳とはチャーハンみたいなものかな」と言っているが、なるほど上手いことを言う。 例えば「…

フラニーとズーイ J.D.サリンジャー

おはようございます、一週間のご無沙汰でした。 約束どおり本日から再開いたしますので宜しくお願い致します。 何だか解ったような解らないようなという言葉をよく日本人は使うが、この小説はそういうたぐいの表現は適当ではない。 解らないながらもさっぱり…

ペスト カミュ

翻訳ものには相性があるのか、私の読解力がないのか情けないことによく理解できなかった。 文体に馴染めない歯がゆさを感じつつの読了。 故につまらなかったという感想を持ったときには必ず他人のレビューが気になる。 案の定、意に反して『異邦人』よりこ…

月と六ペンス サマセット・モーム

結局、モームは作中で「月と六ペンス」の意味について触れなかった。 これもまた珍しい。 タイトルが一度も出てこない! 解説者はこう読み解く。 「月は夜空に輝く美を、六ペンスは世俗の安っぽさを象徴しているのかもしれないし、月は狂気、六ペンスは日常…

パイド・パイパー 自由への越境 ネビル・シュート

パイド・パイパーと言えば民間伝承の『ハメルンの笛吹き男』を思い出される人も多いだろうが、この小説はそんなメルヘンチックなものではない。 欧州大戦の最中、イギリス空軍士官だった息子の死を機に憔悴の旅へと向かう70歳のハワード。 釣竿1本持ってフラ…

凍える墓 ハンナ・ケント

作者は28歳のオーストラリア人女性、史実を基にアイスランド史上最後の死刑囚の実話らしい。 アイスランド小説なるものを初めて読んだが、日本人にはあまり馴染みのない国で、地名や人名など実に読み辛い。 例えば処刑された2人の囚人はフリドリンク・ジグル…

あの日、パナマホテルで ジェイミー・フォード

戦前、シアトルのダウンタウン南端に賑やかな日本人街があったらしいが、物語は、その日本人街にあったパナマホテルの地下から40年以上も引き取り手のない荷物が発見されたことに端を発する。 真珠湾奇襲後の1942年、アメリカ政府は在留日系人、約12万人を逮…

移動祝祭日 ヘミングウェイ

1961年3月のある日、夫と共にアリゾナで休暇をすごしていたハドリー・モーラーなる女性のところに1本の電話がかかってきた。 声の主は34年前に別れた最初の夫、アーネスト・ヘミングウェイ。 そして彼はこのように切り出した。 「実はいま、君と暮らしたパリ…

帰ってきたヒトラー 下 ティムール・ヴェルメシュ

う~ん・・・、何と言うか! とにかく、この小説は読むより映画で見た方がいいと思う。 そう簡単な作品とは思えない。 600頁近い大作で全編、ヒトラーの独白と言っていい。 それも政治哲学的な話しが専ら。 現代に現れたヒトラーは徹底的に「オレ文脈」での…

帰ってきたヒトラー 上 ティムール・ヴェルメシュ

ここ最近、評伝やノンフィクションばかり読んでいるので、たまには毛色の違ったものをということで選んだ本だったが。 何でも本作は空前の大ベストセラー小説で、42言語に翻訳され250万部を売り上げた作品で映画の観客動員数も240万人。 ということで上下巻…

初夜 イアン・マキューアン

実のところ、年間を通して何冊か読まなくてもいいような本を買ってしまう。 10ページほど読み進めるうちに「しまった」た思うのだが既に後の祭り。 今回の本も当初から嫌な予感がしていた。 小説でありながら殆ど会話らしきものがない。 会話の部分だけを合…

ケス 鷹と少年 バリー・ハインズ

時に外国文学というのは、いくら絶賛されていても、どうした訳か私には何ら響かないことが多々ある。 偏に、読み手の私の技量不足と諦めているのだが、今回の本、1968年に出版されるとたちまちベストセラーになり、翌年に映画化され、これまた大評判になった…