愛に恋

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人間の絆 〈下〉 モーム

この小説は哲学、文学、絵画、宗教と、かなり広範囲な知識が要求されて、特に哲学の分野は苦手なので難しく思う場面が多々ある。例えば「空想の力で空間と時間の二つの領域を支配している者にとって、人生の現実がどうあれ、少しも問題ではないのだ」など。登場人物も60名を超え扱われている問題も多岐にわたるが、この若者の精神形成史を書き終えた時、主人公も作者も僅かに24歳だったというから驚く。結末的には大いに不満を持つ読者もいるようだ。教養に乏しいサリーという普通の女性と結婚してエンドになるが、モームにしては、いつまで経っても書き終わらない小説を、サリーを登場させることによって収束させたかったんだろうというのが結論のようだが、まあ、私にとってはこれで良かったのではないかという感想だが。