評伝・伝記・自伝・追悼文(読書録)
いつ頃だったか、甲子園の高校野球で流れる「栄冠は君に輝く」の作曲が古関裕而という人だと知って、いつかこの人の本を読みたいと思っていた矢先、本人が書いた自伝発売と聞いて買ったはいいが、5年近くの埃を被ったまま放置していた。しかし、これでは失礼…
昔、『人間の証明』でジョー・山中の歌がとても良かったが、西條八十の『ぼくの帽子』を始めて知ったときの感動が忘れられない。母さん、僕のあの帽子、どうしたんでせうね?ええ、夏、碓氷から霧積へゆくみちで、渓底へ落としたあの麦稈帽子ですよ。以来、萩…
『踊る大紐育』『王様と私』『ウエスト・サイド物語』とブロードウェイ、ハリウッドで数々の名作を生んだ巨匠として知られる振付家ジェローム・ロビンスが死んだ、という内容だが、ジェローム・ロビンスを知っているだろうか。実は私は知らなった。ジェロー…
ハリウッドの帝王がクラーク・ゲイブルだということは、知っておりましたが、ハリウッドの女王が存在するとは知りませんでした。 貴女だったんですね。 当時の金額で1本、50万ドルというギャラを稼ぎ、男性遍歴には事欠かない肉食系の女、欲しいと思ったもの…
戦時中、知日派として知られる、汪 兆銘なる人物がいたが国民党内にいたが、後に蒋介石と袂を分かって、1940年3月、南京に日本の傀儡政権である汪兆銘政権を樹立し主席となった。 然し、1944年、名古屋市にて病死してしまう。 その汪兆銘を表した伝記「人わ…
澁澤龍彦という作家は博覧強記だろう。 哲学、思想、歴史はもとより関連書物を原書で読むなど、その幅広い知識には着いていけない。 サドとはサディズムの語源になった名前だが、一体にサド侯爵は何をしたのか。 性的プレーの名前として後世に残るぐらいだか…
本書を読むまで私は大きな勘違いをしていた。 昭和31年流行語になった「もはや戦後ではない」を経済白書に書いたのは池田隼人だとばかり思っていた。 ところが実際は鳩山一郎首相で、池田の登場は60年安保をめぐる混乱の責任をとり、岸信介首相が辞意を表明…
挿絵画家だった伊藤晴雨という人については、今日、殆ど知られていない。 鏑木清方と泉鏡花、木村荘八と永井荷風の名コンビのように、互いに刺激し合い、世に出る傑作を産みだすほどの相方に恵まれなかったということもあるが、清方、荘八のように公的な展覧…
朔太郎は言う。 犀星の書斎は明窓浄机で塵ひとつないと。 然るに自分の居間ときたら、原稿用紙と鼻紙が一杯に散らばり、その上、煙草の吸殻が座敷中に捨ててある。 犀星のところに来ると、いつもゴミダメから座敷に招待されたような気がすると。 更に、 「い…
まだ、青瓢箪のような世間の常識も分からぬ20歳のモヤシ男の私は、名古屋の朝日文化センター「現代詩講座」を受講したことがあった。 何でも先生は北原白秋の最晩年の弟子だそうで、意気込んで乗り込んで行ったのはいいが、やはり才能のない自分に気が付いた…
この人に関して、またこの本に関して解説でこのように書かれている。 「確かに偉い人であったかもしれないけど、医学史に関心のある人でなければ読む必要もなく、また実際にそういう人しか読まない」 全くだ、読む必要性が何処にある。 然しこの風変りな天才…
今の時代、浪花千栄子といってもどれだけの人が知っているだろうか。 明治後半から大正、昭和戦前生まれの人なら誰でも知っていたはずの浪花千栄子。 私が若し、誰かのカバン持ちになるとしたら、女性では、①浪花千栄子、美空ひばりなんですね。 男性では、①…
ヴィクトリア朝にヴィクトリア女王が君臨するが如く、1920年代のモンパルナスに君臨したキキ。 モンパルナスに集う芸術家たちを魅了して留まるところを知らなかった人気。 ヘミングウェイ、キスリング、ジャン・コクトー、藤田嗣治、そしてマン・レイなど錚…
本書の発行は1957/1/1と大変古いもので、初版本は一度、古書店で見たことがあるが、少し値が張ったので買わなかったが以前、ある古書市で装いも新たに再販されていたのを偶然目にし、私にしたら殆ど奇跡に近い発見だった。 谷崎潤一郎の女性遍歴を扱った自伝…
でかした、これで東郷茂徳が獄中で書いた『時代の一面 大戦外交の手記』と合わせて大戦期で両外務大臣の手記を読んだことになる。 ただ重光には著作が沢山あり、ぼちぼち読んでいきたいが何分値段が高い。 本書は第一次大戦頃から外務大臣になる直前あたりま…
最近、三浦友和や山口百恵を知らない20代の女の子と話をしたが、なら、古川ロッパなんて誰が知ってるねんってなもんだろうか。 どうだろう、80代以上ならよく知っているだろうか。 戦前、戦中には大変な人気者だったらしいが、私が生まれ育った頃には、その…
この名前と顔は、ここ数十年間忘れたことがない。 あれはいつの事だったか、調べてみると1980年9月3日のことらしい。 つまり、ちょうど40年前になる。 突然、中国から伊藤律なる見知らぬ男が帰国して国内は騒然。 当時、20代の私は、この怪しげな人物に関し…
天才的大作曲家というのは巨万の富を築いたかと思いきや、そうでもないらしい。 ある石炭商に宛てた手紙には、 「私の小さな娘は、あなたの手紙に狂気していました。我々の時代には、少女たちは人形よりも石炭の袋を好むものです」「気温は下がり、我が家に…
調べてみるに、阿川弘之氏は1920年(大正9年)12月24日生まれだとか。 戦後、ポツダム海軍大尉として博多に帰還している。 短気なところが私の父と似ているからして、何年生まれか調べたのだが、特別他意は無い。 ただ、私の父は「口で言うより手の方が早い…
以前にも何かで書いたが、みすず書房などは私みたいな外様が安易に手を出してはいけない本なのだ。 労力、根気、努力、忍耐、読解力など総合的な能力がないとアリ地獄に嵌ったようで、なかなか抜けきれず日数だけが浪費されていく。 もうとにかく長い、長い…
『溝口健二を愛した女』なんて言うから、例に拠って不倫話でも始まるのかなと思いきや、豈図らんや、全く不純な関係などないまま終わっていくストーリーだった。 まず、坂根田鶴子という、この聞いたことのない女性は明治37年12月7日、坂根清一と志げの長女…
『薔薇族』だったか何だったか、確か二種類ほどSM雑誌があるのは知っていたが、その手の本は一度も買ったことがない。 団 鬼六、宇能鴻一郎と有名なエロ・SM作家がいたが名前しか知らなかった。 本屋に行くと、官能小説のようなコーナーもあって、立ち読…
本書は1979年の発売らしいが、まあなんとも文字の小さい事。 さらに上下二段組みで今月は殆どこの本で苦労したと言ってもいい。 毎年、年初に当たって敢えて手古摺るような本で、今年もやるぞと意気込むのだが、今回はほとほと参った。 故に最近、読書感想文…
本作は5編からなる実名小説で順に。 ・ゆきてかえらぬ ・三鷹下連雀 ・霧の花 夢二秘帖 ・春への旅 ・鸚鵡 「ゆきてかえらぬ」は一代で巨万の富を築き「木綿王」と呼ばれた薩摩治兵衛の孫として生まれ、10年間で約600億円使ったという使ったというバロン薩摩…
三好達治がどれだけ偉大な詩人で教養人あったか、知人友人がそれぞれ賞賛して已まない、言ってみればそれに尽きる本だった。 しかし、私一人が蚊帳の外。 どうも文体が難く読みづらい。 これは石原八束氏の本書にも言えることで、一般には使わない漢字や見た…
これは、京都にある画家橋本関雪のお屋敷で、先年行った折り撮って来たものだが、明治16年11月10日生、昭和20年2月26日没とあるから、敗戦を知らずに逝去しているわけで、何だかややこしい話になるが、著者渡辺たをりという女性は、関雪の曾孫で谷崎の義理の…
扨て、いよいよ最終巻だが、本当に長くかかってしまった。 この巻では「黒い絵」と言われるデッサンについて紙数を割いているが、ゴヤのデッサンは、その画帳に自らつけた番号によると313枚あった筈で、現在その存在が確認されている物は271枚、だが現物を見…
遣って来ました第三巻です。 先ずもって、私を驚かせたのは61ページにあるこの記述、ある結婚式に出席したしていた家族の中に、17歳のレオカーディア・ソリーリャ・ガラルサという極めて美しい少女がいた。 レオカーディアは直ぐイシードロ・ウェイスという…
扨て、第二巻だが、先ずメモリたいことから書いていく。 今日ではすでに完全に忘れさられてしまったことであるが、宗教画を描く画家は、細心な注意を払って宗教図像学上のもろもろの約束を守らなければならなかったのである。慎重な上にも慎重でなければなら…
以前から、どうも苦手意識のある作家に辻邦生と、この堀田善衞を自意識的に挙げていたが、ブックオフで『ゴヤ 全4巻』があるのを見て衝動買いをしたままお蔵入りさせていた。 然し、いつまでも棚の肥やしにしているわけにもいかず、どっこらしょと重い腰を上…