愛に恋

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鐘よ鳴り響け 古関裕而自伝 古関裕而

いつ頃だったか、甲子園の高校野球で流れる「栄冠は君に輝く」の作曲が古関裕而という人だと知って、いつかこの人の本を読みたいと思っていた矢先、本人が書いた自伝発売と聞いて買ったはいいが、5年近くの埃を被ったまま放置していた。しかし、これでは失礼と読み始め、驚いたことに5000曲ほど作曲している。その中には当然、私も知っている戦中、戦後の曲も多く含まれて『露営の歌』『とんがり帽子』『長崎の鐘』『イヨマンテの夜』『モスラの歌』その他映画音楽、クラシック、そして校歌は無数にある。しかし現在は多くの資料が散逸し生前、本人も忘れてしまった曲もあるらしい。彼はすでに母親が買ってくれた、あの小さな子供用のピアノで小学生のころから作曲ができたというから驚きだ。病没は平成元年だが、古関への国民栄誉賞の授与が遺族に打診されるも古関の遺族はこれを辞退。その理由について、古関の長男の古関正裕は「元気に活動している時ならともかく、亡くなったあとに授与することに意味があるのか」と没後追贈に疑問を持ったためとしている。このタイミングでの国民栄誉賞受賞をしていれば、作曲家としては1978年(昭和53年)の古賀政男に次いで史上二人目となる予定であったが、没後追贈となった受賞者はかなりいると思うが、今日、古関裕而の名を知る人は少ないだろう。日本の歌謡史に燦然と輝いた彼の名を広めるためにも、やはり貰っておいた方が良かったと私は思うのだが。