愛に恋

    読んだり・見たり・聴いたり!

日記・手紙・手記・随筆(読書録)

われ御身を愛す 愛新覚羅慧生 大久保武道 遺簡集

満州国皇帝の姪・愛新覚羅 慧生と青森県八戸市出身の大久保武道。昭和31年に学習院大学で始まったふたりの恋は、翌年の末にピストル心中という最後を迎えた。その場所は静岡県の天城山。当時のマスコミが「天国に結ぶ恋」と大きく報道する一方、双方の家族は…

愛は死と共に 山崎富栄の手記

本書はいつどこで買ったか覚えてないが、手に取った瞬間、これは確か家に文庫本があったはずだが、内容が同じものかどうかは判らなかった。併し、奥付を見ると昭和23年9月1日とあることからして、二人が心中した同年6月から2か月余りということになるので、…

長崎日記・下田日記 川路聖謨

幕末史を紐解くうえでは重要な人物とされる、勘定奉行川路聖謨。ロシア帝国海軍プチャーチン中将と、日露の国境を定めた人物として名高い。その川路が著した『長崎日記・下田日記』の存在は、以前、川路の歴史小説を読んだ関係で知ってはいたが、まさか巡り…

ベルリン終戦日記―ある女性の記録 アントニー・ビーヴァー

あらゆる本を読んでいてレイプほど汚辱に満ち卑劣な行為はない。私としては避けて通りたい分野だが、レイプ・オブ・南京だとか、レイプ・オブ・ベルリンという単語はよく見かける。ドイツの終戦間際、ベルリンで何が起きたかは想像に難くない。独ソ戦で、ソ…

神屋宗湛の残した日記  井伏鱒二

本書を購入した時には全編「神屋宗湛の残した日記」かと思っていたが豈図らんや、表題作以外はエッセイだった。中でも驚いたのは「普門院の和尚さん」という一遍で、和尚さんとは幕閣・小栗上野介など、小栗家歴代の墓を守る僧正で、昭和七年十二月、上野の…

言わなければよかったのに日記 深沢七郎

以前から、この人の名こそ知れ作品を読んだのは『笛吹川』しかない。もちろんギタリストであったことも知らない。然し何と言っても深沢氏を有名にしたのは『楢山節考』だろう。昔、緒形拳主演の映画を観に行ったことがある。山に捨てられるお婆ちゃん役を演…

トーマス・マン日記 1933ー1934

トーマス・マンの日記は5巻あるらしいが、私が読んだ本書は第1巻になる。 併し、こんな本を読む人など先ずいないだろう。 それもそのはず、かなり専門的で難しい。 偶然、古書市で見つた1933ー1934年の第一巻は、ヒトラー政権が勃興した年と重なり興味がわい…

怪しい来客簿  色川武大

昔『麻雀放浪記』という映画があったが見ただろうか。 原作は阿佐田哲也だが、このペンネームは徹夜麻雀なんかして朝を迎えてしまったことに由来する「朝だ徹也したな」みたいなことらしいが、とにかくギャンブル好きで金があれば直ぐ博打とくる。 本人は小…

レーナの日記 エレーナ・ムーヒナ

この日記はレニングラード包囲戦で市民250万もの人が飢餓と酷寒の中、必死に生き延びようとする記録で、その一人、僅か16歳の少女が書き残したものだ。 包囲された期間は872日、餓死者80万、爆撃、砲撃による死者20万、その封鎖下の市民生活の模様を詳細に伝…

追懐の筆-百鬼園追悼文集  

本書は漱石と、その門下の人たちの交流を描きながら、今は亡きそれらの人たちを、哀惜を込めて思い出を綴る追悼文集のようなものだが、自らの若かりし頃など思い出すと、寂しさもひとしおだろう。 鈴木三重吉の霊前で思いもかけず号泣したこと。 宮城道雄の…

貧乏は幸せのはじまり 岡崎武志

よく、起きて半畳寝て一畳なんていうが、まさしく我が家のことで、本書は貧乏長屋育ちでありながら、遂に幸せを掴めなかった私をよそに「貧乏は幸せのはじまり」ときたもんだ。 尊敬する古書趣味で雑学の大家、岡崎武志さんの本とあって以前から書棚を暖めて…

フランス革命下の一市民の日記 セレスタン ギタール

私は歴史上の人物の日記を読むのが好きだ。 然し、面白いかと訊かれれば、ちっとも面白くないと答える。 では何故読むのかといえば、やはりその時代を生きた本人の生の声という意味では、一級資料だと思うので、何が書かれているか非常に興味があるからだ。 …

ブランコ・ヴケリッチ獄中からの手紙 山崎淑子

20年前ほどだったか、今は潰れてしまった古本屋で偶然見つけた、尾崎秀実の『愛情はふる星の如く』という本を見て、目が点になった。 尾崎秀実とは、ひでみと読むのではなく「ほつみ」と読む。 言うまでもなく近衛内閣のブレーンとして、政界・言論界に重要…

ナポレオン戦線従軍記 フランソワ ヴィゴ・ルション

確かチャーチルはこんなことを言っていたはず。 これからの戦争は、ナポレオンのように馬で全軍の先頭に立ち、指揮命令するのではなく、指導者は暖かい執務室の椅子に座り、ただボタンを押すだけで決着がつくような、そんな時代になってくるだろう。 ホント…

随筆-本が崩れる  草森紳一

この本、タイトルに騙された。 全編、「本が崩れる」だと思っていたら大間違い。 始めこそ風呂に入ろうと思い浴室に入ったら、外側から積んであった本が怒涛の如く倒れ、ドアを塞ぎ出れなくなったという話で、そら来た、面白そうだと思ったが運の月。 単なる…

獄中十八年 徳田 球一 (著), 志賀 義雄 (著)

徳田球一、志賀義雄なんていったって今の時代、共産党員ぐらいしか知らないだろうが、だからと言って私は党員ではない。 ただ歴史を学ぶ者としては相反する勢力を読むのも大事。 古くは家康と光成、開国派と攘夷派、勤王か佐幕か。 大久保と西郷、薩長と自由…

野田日記 野田 毅

書店へ行って、日記、手紙などの背表紙を見ると必ず手に取る私だが、このシンプルな表紙を見て何のことやら分からず、野田毅とは誰なのか帯を読んでみるに百人斬りと書いてある。 つまりあれか、支那事変の時の将校の日記か。 そんなものが世にあるとは知ら…

エレーヌ・ベールの日記 エレーヌ・ベール

この日記の存在を最近まで知らなかった。 「アンネの日記』との違いは、一室に閉じ困って隠れているのとは違い、エレーヌ・ベールはドイツ軍占領下のパリで、ユダヤ人証明の腕章を付けていれば、それなりに自由行動が許されていた点だろうか。 ソルボンヌ大…

妻と私 江藤 淳

この本ばかりはタイトルを見ただけで、事前に内容が予測でき、のっけから暗い気持ちにならざるを得ない。 何ゆえ、そのような憂色を以って本に向かい合うか。 江藤さんは、夫人の病死に衝撃を受け、7か月後、後を追うようにして浴室で頸動脈を切った。 覚悟…

敗戦前日記 中野重治

先ず、646ページもある本書は、1994年に中央公論社から発売されたらしいが、今日まで文庫化されないのは、売れないから、読む人がいないから、または中野重治って誰ってなところだろうか。 まあ、読むには読んだが腕が疲れることは甚だし。 一貫して書かれて…

黒田日記

明治、大正期に活躍した日本洋画壇の巨匠・黒田清輝は、明治17年フランス留学中の2月9日から約40年間に亘って日記を書き溜めている。 その黒田画伯が亡くなったのは大正13年7月15日。 当時の新聞を見ると。 「黒田清輝子絶望/昨日からカンフル注射で辛うじて…

果てなき便り 津村節子

津村節子さんには、夫吉村昭氏の闘病生活を綴った『紅梅』という作品があるが、本書は二人の往復書簡などから、帰り来ぬ数々の思い出を追悼記のように纏めあげたもので、残された者の哀しみが読む者に伝わってくる。 二人は学習院の文藝部で知り合ったようで…

もうひとつの日露戦争 新発見・バルチック艦隊提督の手紙から コンスタンチン・サルキソフ

何年か前の新聞欄で司馬さんの『坂の上の雲』はトルストイの『戦争と平和』に匹敵するほど面白いと書かれていたが、それは本当だと思う。 その司馬さん、はたしてバルチック艦隊司令官だったロジェストウェンスキー中将の手紙が残っていたと知っていたかどう…

「黒縮緬」西条八十

『黒縮緬』は西条八十25歳ぐらいの随筆とあるから大正6年頃か。 一杯引っ掛けたあと、浅草六区に芝居を見に行った帰り、二人の女に声を掛けられた。 赤の他人だが、先ほどまで同じ芝居小屋に居た女で西条のことを「やなぎ、やなぎ」と言って呼び止め食事に誘…

いつまでもいつまでもお元気で 知覧特攻平和会館

毎年8月になると決まって終戦特集のような番組がNHKで組まれるが、特攻隊に関するものを見たのは、かれこれ30年以上前の話か。 その中で、ある隊員が両親に宛てた最後の手紙に痛く感動したことがある。 はっきりした内容は忘れたが、こんなことが書かれてい…

死刑確定直前獄中日記 永山則夫

永山則夫に関する本と言えば何を読んだか。 ・死刑囚 永山則夫 佐久隆三 ・裁かれた命 死刑囚から届いた手紙 堀川恵子 ・死刑の基準 「永山裁判」が遺したもの 堀川恵子 ・異水 永山則夫 永山事件に関してはいろんな面で感心を持った。 確かに、その生い立ち…

随筆集 明治の東京 鏑木清方

明治生まれの人は漢学の素養もあってか名文家が多い。 「半世紀ともなると難福交々(こもごも)、一見何の奇もなく無為に過ぎたようでも、越えて来た山河は険しい、祖母は神信心の篤い人だったので、一家が今日無事を楽しむのもその余徳であろう」 昭和27年2…

ゴーギャンの手紙 東 珠樹訳

1895年 何と言っても日記や手紙などは、本人が書いているだけあって第一級資料なのだが、書き送った全ての手紙を読むのはかなり骨が折れる。 現在ではメールやラインなどがあるので、あまり手紙を書くことがなくなったが、仮に書いたとしても、多くて便箋5枚…

心筋梗塞の前後 水上 勉

既に故人だが、水上勉さんが生前、心筋梗塞を患ったとは知らなかった。 古本屋の書棚でこの本を見つけ同病相憐れむの心境から購入、私も6年近く前、突然、胸の痛みを訴え心筋梗塞を発症した縁とでも言うか、水上さんのケースを知りたくなった。 よく知られる…

回想 日記 ノート 美知子 静子 富栄

晩年の太宰治の周辺には3人の女性が登場している。 正妻の津島美智子、『斜陽』のモデル大田静子、心中相手の山崎富栄。 私は太宰が書いた作品よりは、彼を取り巻く人たちが残した関連作品を読むのが好きで、友人知人の著作は資料として貴重な証言で頗る好奇…