愛に恋

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ベルリン終戦日記―ある女性の記録 アントニー・ビーヴァー

あらゆる本を読んでいてレイプほど汚辱に満ち卑劣な行為はない。私としては避けて通りたい分野だが、レイプ・オブ・南京だとか、レイプ・オブ・ベルリンという単語はよく見かける。ドイツの終戦間際、ベルリンで何が起きたかは想像に難くない。独ソ戦で、ソ連の奥深くまで侵入したドイツ国防軍武装SSが、何をしたのかというおぞましい記憶がロシア兵に刻印されている限り、当然、起こりうるべくして起こったことといえる。なにしろ独ソ戦のロシア人の犠牲者は2000万というから驚く。著者は34歳の女性ジャーナリスト、出だしは4月20日、一斉射撃から4日目に始まる。酔っぱらったロシア兵が、ドイツ女性をレイプして殺害しているという噂が聞こえてくる。ベルリンに突入し、砲撃のさ中でもロシア兵は女を漁る。必ず聞くのが「結婚してるか、子供はいるか」若い女と見れば手当たり次第の犯す。一説には200万の女性がレイプされたとあるが、もちろん妊娠する女性も数多く存在しただろうが、出産後に殺したのだろうか。女同士会えば「アンタ、何人とやった」と言葉も生々しい。市役所には「妊娠」に関する相談で長蛇の列とある。著者本人も凌辱されたが、ロシア兵に「抵抗しないから、アナタひとりにして」と頼んでいる。しかし、彼女らを襲ったのは何もレイプだけではない。来る日も来る日も、約10時間にも及ぶ重労働と飢え。ロシア兵は街中を蹂躙して輪姦し、部屋で糞を垂れ小便を撒き散らし悪臭が漂い、チッソが蔓延し赤痢に罹らなかった者は殆どいなかったとある。何とも地獄絵図のような惨状だ。誰もかれもが理性を失い女に復讐し、逆らったら殺しても犯罪にならない。戦争に負けるということがどういうことか如実に表している。日本は本土決戦にならなくて本当に良かった。