愛に恋

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ナポレオン戦線従軍記 フランソワ ヴィゴ・ルション

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確かチャーチルはこんなことを言っていたはず。

これからの戦争は、ナポレオンのように馬で全軍の先頭に立ち、指揮命令するのではなく、指導者は暖かい執務室の椅子に座り、ただボタンを押すだけで決着がつくような、そんな時代になってくるだろう。

ホントだね!

著者は18歳の時に徴募義勇兵に応募し、以後、45年間も軍務に服するという、まあ、よくも生き残れたという激戦に継ぐ激戦で、とても私では務まらない激務。

除隊も志願しないで、一介の兵士が大佐まで昇進した。

その歴戦の勇者はイタリア、オーストリア、エジプト、ドイツ、プロイセンポーランド、スペイン、フランスと、歩兵、下士官の時は徒歩で、将校になってからは馬で、信じられないほど移動して戦っている。

無論、食料の窮乏、水分の枯渇、弾薬の欠乏など戦いには不可欠な要件を満たされない中での行軍や闘いもある。

更にマラリアチフス、熱射病、雨、雪、そして脱落した者は殺され、傷が元で死んでいく者、または飢餓で死ぬしかない。

幾度となく負傷し、それでも原隊へ復帰し敵と戦う。

当時の戦争は白兵戦や肉弾戦など、至近距離で戦うため殺戮という言葉がよく合う。

時に人語に絶するような残虐なことも行う。

ゴヤの絵を見る迄もなくスペイン戦争では、相当な酷いこともしたようだ。

然し、不思議な記述も多々見える。

戦いで数千人を殺害、数千人を捕虜にしたとあるが、殺戮に慣れて来たのは分るが、捕虜の場合、大量の人間をどうしたのか書かれていない。

本来は後方に送るわけだが、それでも人員を割かなければならない。

一箇所だけ、6000人の捕虜を連れての行軍に、食料の不足からナポレオンの命令で全員銃剣刺殺している。

銃弾の節約から、このような命令が出たわけだが、さすがに捕虜を殺すことには躊躇いを覚えている。

また、戦闘に入る前には敵兵の大方の人数を読んでいるばかりでなく、相手の総大将の名前まで確認している点、どういうことなのか分からないが、後世の歴史家が本書を読むに、殆ど歴史的記述に間違いがないようで、そこが不思議だ。

ともあれ著者は大きな戦闘だけで70回。

軍歴としては申し分ないだろうが、このような人生は誇れるものなのだろうか。