愛に恋

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ジェローム・ロビンスが死んだ なぜ彼は密告者になったのか? 海野海太郎

踊る大紐育』『王様と私』『ウエスト・サイド物語』とブロードウェイ、ハリウッドで数々の名作を生んだ巨匠として知られる振付家ジェローム・ロビンスが死んだ、という内容だが、ジェローム・ロビンスを知っているだろうか。実は私は知らなった。ジェローム・ロビンスとは誰なのかということで買ったのだが。彼は、かつて赤狩りの標的となった末に、同志八人を名指しした「密告者」で、一九九八年夏、彼の訃報に触れた著者はそこで初めてこの事実を知る。なぜ彼は密告者となったのか。その背景に、人種、同性愛といった、当時の米国ショウビズ界が抱える問題が見えてくる。 戦後、ハリウッドで猛威を振るったレッドパージの犠牲者だが、チャップリンがそれを嫌がりスイスに移住したことはよく知られている。議会で喚問が行われ、共産党に入党したことがあるか否かを問われ、YESと答えれば仲間の名前を白状するように迫られる。白状すれば裏切者、言わなければ総ての職業を失う、そのギリギリの選択を迫られるわけだ。