本書は1979年の発売らしいが、まあなんとも文字の小さい事。
さらに上下二段組みで今月は殆どこの本で苦労したと言ってもいい。
毎年、年初に当たって敢えて手古摺るような本で、今年もやるぞと意気込むのだが、今回はほとほと参った。
故に最近、読書感想文が途絶えてる所為なのだ、じつは去年読んだ本も、まだ4冊感想を書いてない。
ともあれ完読できてホッとしている。
なんでも1976年夏、売春婦として生計を立てていたジャンヌ・コルドリエという女性の異色の自叙伝の発売とあってフランスでは爆発的な売り上げを得たらしい。
1966年に23歳とあるので、かなり若い女性だが、日記ではないので目次がなく、2~3行開けたら突然、登場人物、場所などが変わって、やや読みづらい。
だが内容は壮絶で売春のセンターパリで日々、約60人の客を相手にして稼ぐというから、かなりな重労働になる。
多い時には104人と書いてあるので、強制連行でもないのに、そんなことが出来るものだろうか。
客筋も必ずしもまともな人ばかりではなく、集団で暴行された挙句、仕返しに仲間の男たちにに頼み、暴行した連中にリンチを加えるなど、まあ殆どヤクザの世界だ。
それもその筈、彼女らに例外なくヒモが付いている。
これが不思議でならない。
稼ぎが悪いと殴る蹴るの暴行を受けるのになぜか逃げることが出来ない。
殆どのヒモが前科持ちでロクな奴がいないのに、逃げても捕まってしまうからか、万が一のためにもこのようなヒモと、つるんでいた方が身の安全を保てるからなのか、いずれにしても稼ぎの殆どはヒモに渡さなけれなならい、まったくやってられない家業だ。
当時はビートルズの全盛期だが、彼らのデビュー前、よくドイツのハンブルグへ出張していたが、ハンブルグも似たような歓楽街だったと物の本には書いてあった。
売春は必要悪なもので、なければ無いで困るのは男性ばかりとは限らない。
驚くのは、この世にはあまりに多いサディストとマゾヒスト、そして性的倒錯者、これらはこの世界に働くからこそ、人間の本性を見ることが出来るのであって、昼間、普通の会社員が意外な性的趣味を持っている証拠だろう。
下半身は別人格と言われるように、何となく納得できる。
が、この世界は危険極まりない。
一歩、売春窟に入ると、客とてあぶない。
交渉の段階で舐めた口を叩くと、売春婦から袋叩きにあってしまう。
一般人が知らない世界を興味本位に覗き込むという面では興味深い本だが、彼女らに幸せな将来があるのか考えてしまう。
著者も書いているように、生まれながらにして売春婦だったという人はいないはずだが、何が彼女らをそうさせたのか?
最後にジャンヌ・コルドリエは自らを売春婦と呼ばず、淫売婦と呼んでいるが、売春婦より淫売婦の方が下位に置かれているような書き方で、自然言葉使いも荒く、人種的差別なども出て来る。
ある面、やむを得ない社会なのかも知れない。