愛に恋

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新訳 チャタレー夫人の恋人  D・H・ロレンス

大阪で古書店最大手といえば天牛書店だろうが、数カ月前、病院の帰りに支店の方に寄って見るとなんと、本書が100均のワゴンの中にあるではないか。定価2500円(税別)、それがたったの100円。もうこれは買うしかないが、如何せん単行本で重たい。併し、昔むかしの本で伊藤整訳で本人が書いた『裁判』(上・下)を買ってあるので、これはどうしても先に読んでおかなければならない作品だ。今はなき旺文社のものだけに現在では入手困難。争点は基本的人権の擁護と思想表現の自由、または芸術か猥褻かで争われた有名な本だけに、興味津々で読んだはいいが、近年の視点からみると別にどうということのないものだった。やたら思考発想が難しすぎて面白くないという感想しかない。人間、人と話すのにそんな難しことを考えながら話のか、セックスに関し、そう哲学じみた感想は要らないだろと訝ってしまう。第一次大戦で負傷し下半身不随となった夫とその夫人チャタレー。必然的に不倫は起こり得るが、それが何とチャタレー家で雇っている森番の下層階級の男であった。ありえざる使用人との情事だけに苛立つ姉や夫。併し、濡れ場となるようなシーンでは決して、これはどうかと思えるものは何もない。本書が書かれた動機は、旧訳では誤訳が目立つために書き直したとあるが、いずれにしても思想表現は難解すぎ、猥褻といってもオ〇ンコというフレーズが3回ほど出てくる程度で、これといってどうという作品ではない。むしろ『裁判』の方が面白そうだ。