愛に恋

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少将滋幹の母  谷崎潤一郎

日本人で名字の上に「大」の冠が付く人といえば二人しかいないだろう。大西郷と大谷崎だ。大西郷といえば幕末維新に広く知られたことで、大隈重信もそれを書いている。大谷崎と言い出したのは三島由紀夫じゃないかと思うがどうだろう。まだ10代の頃は最も苦手にしていた谷崎。何しろ改行が少なく字が小さい。さらに内容が難しそうで、さしあたり読んだのが『知人の愛』、今となっては『細雪』『猫と庄造と二人のをんな』『瘋癲老人日記』『鍵』『蓼喰ふ虫』など読んだが、さすがに『少将滋幹の母』は平安王朝風絵巻のようで難しい。併し、読むに従い本書がかなりの名作というのが解かってくる。谷崎本人もこれにはかなり自信を深めていたようで、このあたりをもって三島は大谷崎と言っているのだろうか。