愛に恋

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秋津温泉 藤原審爾

直木賞作家にして、女優の藤真利子は息女。小島政二郎「文章の一つ一つがピタッ、ピタッと女の急所を押さえている見事さは、心憎い位の魅力」井伏鱒二には「女性の本能的な正体を書き現わす」「野性味も実に野放しの感じ」と評された作家だが、確かにその詩的な文章には感嘆する。併し、本作では好きな女がいるにも拘わらず、どうしたことかいつのまにか他の女と結婚し、独身を通すその女と混浴で一緒に浸かりながらも、欲情を抑えるあたり私としては苛立ちを覚えた。また、心象風景や描写などが多く会話が少ない分、やや読みづらい。