愛に恋

    読んだり・見たり・聴いたり!

阿修羅のごとく 向田邦子

この小説に関しては以前から知っていたし、昔の彼女から話も聞いていたが読んでいなかった。例によって古書店の100円コーナーで買って読んでみたが面白いね。年老いた父に愛人がいた、四人の娘は対策に大わらわ。だが、彼女たちもそれぞれ問題を抱えている。未亡人の長女は不倫中、次女は夫の浮気を疑い、三女は独身の寂しさに心がすさみ、四女はボクサーの卵と同棲、そして母は…肉親の愛憎を描き、家族のあり方を追求してきた著者の到達点ともいうべき力作で、特に何度も繰り返される四姉妹の喧嘩は読む方まで引き摺り込んでわくわくさせる。微妙な性的な発言も飛び出すが、これまで読んだ向田邦子のエッセイには異性関係や性の話がなかった。以前から不思議に思っていた向田の性体験など要らぬことまで考えてしまう作品だった。