愛に恋

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森繁の重役読本 向田邦子

私が向田邦子を知ったのはかなり遅かった。『寺内貫太郎一家』はよく見ていたが、それすら向田の原作とは露知らず、『思い出トランプ』が直木賞を受賞するに至って、やっと存在をしったほどだった。本作品は昭和37年3月から昭和44年12月まで、日曜を除く毎日五分間放送された森繁久彌朗読による連続ラジオエッセイで、2448回も続いたという。大変な数には違いないが、こういうものは、やはり抑揚をつけた名話術で名高い森繁さんの話で聞かないと味わいが出ないと思う。平文で読んでいても面白味は伝わらなかった。