愛に恋

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「ムーンライト・セレナーデ」 向田邦子と澤地久枝の旅

向田邦子澤地久枝は昭和46年の暮れから1カ月あまり、アメリカ、ペルー、カリブ海、ヨーロッパを旅したことがあった。ペルーのリマから3時間ほどかかるイキストという街まで行きたいということだったが、二つの飛行機会社からそれぞれ1日1便しか出ていなかった。併し、向田たちがリマに着く直前の、クリスマス・イヴに、ランサという会社の飛行機が墜落し、機種は、日本でもお馴染みのロッキードエレクトラで、墜ちた地点はアンデス山脈あたりで、それ以上は皆目見当がつかない。乗客92名は絶望というニュースがペルーの新聞の一面に大きく報道され、日本の場合だと国を挙げて捜索活動が開始され、テレビは遭難家族にマイクを突きつけご感想を求めたりするのだが、ペルーでは、そんなこともないらしく、捜索機も義理でちょっと飛んだだけでお仕舞いとなった。諦めがいいのかクールなのか日本人の感情ではとても理解不能な民族だ。向田と澤地はアマゾン行きを諦めかけたが、せっかくペルーまで来てアマゾンを見ないで帰ることは出来ず、一か八か周りの人間が止めるのも聞かず、フォーセットという航空会社に交渉して乗ることに決めた。そして昭和56年8月22日、取材旅行中の台湾苗栗県三義郷で遠東航空機墜落事故で死去してしまった。「ムーンライト・セレナーデ」のお時間です。おやすみなさい、また明日。