愛に恋

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冬の花火 渡辺淳一

31歳で亡くなった中城ふみ子という人を知っているだろうか。これまで渡辺淳一が書く自伝小説は全部読んできたと思っていたのだが、先日、100コーナーで本書を見つけ、これは読まねばと思い購入した。才能を認められ順風満帆にきたふみ子を襲った突然の乳がん。然し、発病前から奔放な男性遍歴は止まず次々に男が現れる。執着心があって独占欲が強く、我儘で自己中心的な気性、派手で早熟、負けん気が強い、一途な気性の激しい、良く言えば天真爛漫、悪く言えば向こうみず、人並み以上に感性の強い、じゃじゃ馬。

そんなふみ子の左乳房切除が行われたのは昭和27年4月。その後、がんは転移し右乳房も切除。時を同じくして発売された『乳房切断』は大反響を呼び一躍歌壇の大スターに。然し信じられないのは、迫りくる死の恐怖も忘れるかのように男を病室に引き摺り込み性交に及ぶふみ子。私なら到底癌患者相手にセックスなんか出来るもんじゃないが、それほどまでにふみ子という女性は魅力的だったのだろうか。両乳房を無くしてまでも。何か悲哀さえ感じる行為に命の爪痕をしっかり残そうとでもいうのか、その瞬間こそ純粋にひとりの女だったことを自覚するかのように。同室の老婆が死んだ後に作った歌は。人死にて空きしベッドに移り来つ翳作りゐし電球を消す。