自殺直前の有島、芥川、太宰の評伝には必ず女が出てくるが、何故か三島には、それらしき女性は出てこない。
専ら、右翼、楯の会、自決である。
三島と言う人はいったい、どの程度、女性経験があったのだろうか。
この小説は恋の駆け引きをメインに書かれているように思うが、どちらかと言うと通俗小説の部類に入る。
刊行は昭和39年とあるから、かなり古い本だ。
金の為なら男女構わずベッドを共にするこのハンサム・ボーイと火遊びのつもりで始まった付き合いがいつしか嫉妬を伴う関係に変化していくあたりなどは、作家として、なかなか遣りての妙を感じる。
歳の差もあり、妙子は男を甥という名目で同居させるが、その男に同世代の彼女が出来たことから節子の女としてのプライド、度量、潔さが試される展開に読者は否応なしに引き込まれていく。
ひとりの女として涙、未練なしに年若い男を捨て去って行く勇気が試される瞬間。
内容的には決して古さを感じさせない物語だが、作品の知名度はあまり知られていないような気もする。
とにかく、三島の思想哲学とはまったく無縁なこの小説は、なかなかにいい!
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