愛に恋

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悲素(上・下巻) 帚木蓬生

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上・下巻合わせて約800ページ程の本書は「悲素」とあるが、要は「砒素」のことで、和歌山のカレー毒物事件を扱っている。

主人公は九州大学医学部の衛生学教授で実在の人物。

正直、これを読み通すには実に骨が折れた。

何しろ事件で犠牲になった被害者4人、重軽傷者63人、他に保険金事件の死者並びに殺人未遂に終わった被害者の診察、診断。

さらには、この医師が携わったオウム関連のサリン事件。

そして第一次世界大戦化学兵器から西洋での毒物事件など、まあ全般的に膨大なカルテを読まされているようなもので、専門用語の羅列で分からない。

事件の推移と捜査の進展などが相俟ってスリリングではあるが、何分、難しい。

下巻では当医師が証人として何度となく出廷。

検察、弁護人、裁判長と質問は何回にも亘って続き、総ては専門的な話で推移する。

最終的に著者は、最高裁まで行って真由美被告の犯行動機の解明にまでたどり着けなかった判決に強い疑念を唱えている。