愛に恋

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東京裁判を問う 

本書は戦後38年経った1983年の5月28日と29日の両日、池袋のサンシャインシティ、元巣鴨拘置所跡で行われた「東京裁判」国際シンポジウムの記録を編んだもので、未だ裁判に関係した人が存命である中で行われたものだ。戦勝国が敗戦国を問うことの是非、侵略戦争自衛戦争の区別、基準、国家の行為に対する責任を個人に問うことの当否などが議論の対象になっている。東京裁判で確定された法律は事後法で罪刑法定主義(法律なければ犯罪なし)の格言に違反しているという論法がまかり通るという訳だ。更に米国の原爆投下、日ソ中立条約侵犯など連合国の行為は、問題とされることすら許されない。遡って満州事変以からの15年戦争は、明治以来の必然的帰結で「脱亜入欧」という総決算という意味で、東京裁判の被告たちだけが罪を負うものではないという。被告たちは共同謀議という罪で裁かれているはずなのに、松井大将は南京事件における罪だけで絞首刑になっている。そして終戦まで僅か1週間、戦っただけで57万人もの日本人がシベリア抑留された事実。連合国側が起訴したB・C級戦犯は5570人で8割が有罪判決を受け、約1千人が絞首刑になった。特に中国の裁判所では詳しく調べもしないうちからどんどん処刑された例も多々ある。そもそも侵略の定義は欧米の専売特許で、日本より早く中国を侵略していたのは連合国だ、その連合国が日本を裁くという不条理。戦争が最終段階に入った時点での原爆投下が軍事上必要だったかどうか。最終的に本裁判に於ける弁護側の提出した証拠は26800ページ、検察側は21200ページ、裁判官、検察、弁護側がこれらを読み込むのは大変なことだ。個人的には北方四島、千島列島、樺太は日本に返せと言いたい。