長崎に原爆が落とされた翌日、B29搭乗員だった米兵捕虜が斬首された。
見習士官として上官の命令に従った青年左田野は、戦後、絞首刑をおそれ逃亡をはかる。
潜伏、残された家族への過酷な取り調べ、そして―。
戦争の罪と罰を問う緊迫のノンフィクション。
これは本当に難しい問題だ。
彼ら搭乗員はたった今、無辜の市民を無差別に殺害した敵の兵士なのだ。
日本の法規ではこれらの犯罪を犯した敵兵は処罰の対象になっている。
つまり「無差別爆撃をせず、戦時国際法に違反しない搭乗員は捕虜とし、無差別攻撃をした者は重罪犯として処断する」となっている。
ましてや上官の命令によって敵を斬首したる者の扱いはどうなるのか。
古来、日本では斬首というものの考えかたが西洋とは異なる点もある。
それに法務将校も立ち会っていることからして、軍律会議の裁定で死刑が合法的であると左田野は判断した上での処刑だった。
然し、GHQによる戦犯指名が続々発表される中、左田野は逃亡生活に入った。
元々、中野学校卒業だけあって才覚は十分。
勤め先で重宝がられ出世して3年半が過ぎた頃、遂に逮捕され巣鴨へ。
彼がBC級裁判の最後の判決となるのだが、はてさて結果や如何に。
因みに彼が用いた愛刀は小宮四郎国光。