愛に恋

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永遠の0 百田尚樹

児玉清さん大絶賛の書評でしたね。
物語は主人公たる姉弟の祖父宮部久蔵の人物像を追って戦友たちを尋ね歩くことに始まる。
姉弟の個々の心情を交えつつ、太平洋戦争の実情、兵の命を軽んじ、作戦失敗の責任を取らないエリート将校たちの夜郎自大さを鋭く暴き、サスペンス、ミステリーではないが、意外な事実が待ち受けている小説。
 
「娘に会うまでは死ねない」
 
と言い続け、妻にも生きて必ず返ると約束した祖父。
天才的技量で歴戦の勇士だったが戦友たちの印象は賛否両論。
軍人のくせに臆病、何より命を大事にすることが一番。
隊内で、どんな陰口を言われようが生き残る執念に燃えた男がなぜ、終戦間際に特攻機で自ら出撃したか。
その真実を探るため、戦友たちを訪ね歩き、そこで聞かされた今まで知らなかった祖父の人物像。
 
ところで真珠湾攻撃の際、未帰還機は29機で犠牲者は55人だった。
奇襲の大成功に比べたら確かに損害は少ない。
しかしこんな場面が小説にはある。
 
いわゆる艦攻というのは3人乗りの艦上攻撃機のことで搭乗員は操縦、偵察、通信員の3人。
出撃した宮部久蔵は艦攻が自爆するのを見たと言っている。
雷撃してから敵艦船の上空を通過する時に対空砲火で被弾。
艦攻は一旦、上空に上がったところで宮部がその機に近寄ると、翼から燃料が漏れているのが見えた。
幸い火は点いていなかったが、艦攻は一端帰還する方向に機首を向けると、急に大きく旋回して敵の戦艦に体当たり。
当時、攻撃中に被弾した場合は自爆せよとの命令があった。
しかし宮部は言う。
 
「急降下の直前、三人は私に向かって笑顔で敬礼しました」
 
この話し、何十年も前にドキュメント番組で聞いたことがある。
自爆した艦攻機を目撃した人の話しで、確かに私に敬礼して突っ込んで行ったと証言していた。
思わず目頭を熱くしてその場面は想像したものだ。
 
燃料が持たないと判断したか発動機がやられたか、何れにしても三人は僅かな時間の間に自爆を決意。 
戦争だから戦死は仕方がない。
大戦果だから多少の犠牲はやむを得ない。
しかし、死んでいった彼らにも家族は居る。
宮部の心を支配していたのは、常に愛する家族の元に無事帰るということ。
 
宮部久蔵、26歳。
それを調べる孫の健太郎も26歳。
世の移ろいと共に日本も日本人も変わり、想像を絶する隊員たちの体験は、私などが軽々に語ることでもないが全く頭の下がる思いだ。
 

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