愛に恋

    読んだり・見たり・聴いたり!

無意識過剰 阿川佐和子

檀ふみと阿川は共に父親が作家にして、娘二人は同学年で親友。違うのは身長で壇は170㎝もあるが、阿川は150㎝もない。ある日、二人で旅をした時の事、道中暇だからクイズをしないかと壇が持ちかけた。教養高い壇に、無教養がバレるから一旦は断ったのだが「大丈夫よ、好きなように言ってみて」といわれ、その誘いに乗ってしまった。あいみての のちの心にくらぶれば 昔はものを思わざりけり』ってどういう意味か解釈せよ」「あいみて・・・あいみてね」「ほら、あの時代の歌なんて、みんなそちらの方面の話だから」「ははあ、そちらの方面か、なるほどわかりましたぞ」「言って言って」「つまり、あいみてとは、アレのことでしょ。アレのあとの、気持ちのいーい気分に比べると、昔は何も楽しいことを知らなかったなあって、そういうこと?」突然、教養高き我が友は、人目もはばからず高らかに笑い転げたあげく、一変してして上目遣いで私を睨むと「どうしてあんたは、なんでもそっちの方に話を持っていきたがるわけ」「そっちの方面の話だっていったじゃない」「そこまで考える人は珍しい」因みに阿川の母は国文科出身らしい。親が作家だからと言って、必ずしも子も作家になれるわけではないが、この少し自虐的でとぼけた文章が彼女の強みで魅力的なところだ。二人とも70歳になってしまうが、今後のご活躍も期待した。