愛に恋

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日本の「運命」について語ろう 浅田次郎

「歴史は何のために学ぶのか」と言えば「自分が今、こうしてある座標を学ぶ」ためだと浅田氏は云ふ。大体、作家の歴史観が自分と合致するかどうかで、その作家の信頼度が決まってくるというのが私の作家評なのだが、浅田次郎氏はまさに現代作家では最高点だ。『歴史を学ぶとは、現在という高所から過去を審くことよりは、かつて未来の闇に向かって孤独な決定を行った人間の身になることであろう』というのが、私の歴史認識で、浅田氏の父は大正13年生まれで、私の父より年下、母親は昭和2年で、私の母より年上だが、この世代は、日本史上もっとも過酷な時代に生まれ育ってきた世代だといっている。まさにその通りで、大正の終わりの世代などは徴兵、学徒出陣で軍に徴用され南方に送られ多くが戦死した。昭和20年には173個師団、547万の帝国陸軍兵士が存在した。海軍は入っていない。浅田氏の歴史に対する向き合い方の真摯さ、それは近世、近代、現代と本当によく勉強され、亡くなった人への鎮魂歌のような小説の数々を読むということは、まさに戦争とは何かを探るようで大事なことのように思う。