どうだろうか、NHKの女子アナというのは、何れも品行方正で異性関係に於いても、先ず間違いのあろうはずもなく、看板アナに関しては猶更、そのような粗探しをしたところで無用、人品骨柄、非の打ちどころのない人物なのか、然し、いくらNHK女子アナといっても人の子、入社以前のことは分るはずもなく、当然のことながら異性関係もあったとみるべきか、嫌々、知性が邪魔して結婚前の不埒な所業などあろうはずがないと取るべきか、そこが悩ましいところよ。
とまあ、そんな下衆な勘繰りは別として、一体に有働アナとはどんな人物なのか興味があって買ってしまった。
やはり案に洩れず、頑張り屋さんは認めるもののひょうきん。
あちらの方も未経験とは言わさぬぞ(笑)
以前、好きだった人との会話が載っているので引用したい。
彼「このモデルさん、清楚でいいよね」
私「でもさ、意外に奔放だったりするのよ~。たぶん。いや、きっと。そういうギャップに男は弱いのよね~。昼間は純白、夜は娼婦。歌にもなっているもんね。ま、分かるけどね~。やっぱ娼婦って、ひとつの憧れでもあるよね。うん、わかるわかる」
と言ってるが、最後の「やっぱ娼婦って、ひとつの憧れでもあるよね」という条をどう取るかで意味合いが全然違ってくるが。
男にとって「ひとつの憧れでもあるよね」なのか、女、私にとっても「ひとつの憧れでも」あるのか。
併し、そう答える彼女は、一面心理を突いていることは間違いない。
だが、こんな初心な時代もあった。
入局したての頃、田舎町の中継があり、出張の際は自分の名札がかかっている白板に、行先と宿泊先を書く決まりで、初めてだったこともあり、先輩から聞いたままのホテル名と連絡先を書いて出発。
帰局すると、違う先輩から、
「有働、昨日はどこに泊まったの?」
「あ、はい、ツレコミ宿ですけど」
聞いた宿名をそのまま答え、爆笑されたことだあったらしい。
意外だがNHKはもっとお堅いところかと思ったがそうでもないようで安心した。
更に、ある売春をしている少女を取材した時のこと、
「売春はやめたほうがええで」
と言うと、何で売春はいかんのと逆に質問されて答えることが出来なかった。
確たる助言、意見がなく、売春はなぜいけないのか、売春は本当にしてはいけないのか、考えたことがなかったという。
市場の原理に従って需要と供給があるから売春は成り立つわけで、昔のように女郎に売り飛ばされたわけでもなく、自分の意志で進んで職に就き、生業として生計を立てている女性、またはシングルマザーで手っ取り早く稼ごうと、この道に入った人に対して、ただ売春はいかんやろうだけで助言になるだろうか。
第一、パートなどしていては生活が出来ない、アンタの言っていることは綺麗ごとだなんて言われたらどうする。
まあ、ここでそんな事を論じ合っても仕方ないので次へ移る。
本人、読書が好きなようだが、就職以来、読書といえば実用書ばかりで、その代わり登場したのが酒で、時に酔ってごまかし、人間としての質の低下を嘆いている。
二日酔いの朝など、必ず読む詩が茨木のり子の『自分の感受性ぐらい』だとか。
私も読んだことがあるが、幸か不幸か下戸なので二日酔いの経験がない。
ぱさぱさに乾いてゆく心を
ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて
気難しくなってきたのを
友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか
苛立つのを
近親のせいにはするな
なにもかも下手だったのはわたくし
初心消えかかるのを
暮らしのせいにはするな
そもそもが ひよわな志しにすぎなかった
駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄
自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ
ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて
気難しくなってきたのを
友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか
苛立つのを
近親のせいにはするな
なにもかも下手だったのはわたくし
初心消えかかるのを
暮らしのせいにはするな
そもそもが ひよわな志しにすぎなかった
駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄
自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ
この人、確かに面白い!
読んでいてお友達になりたいと思う人も多かろう。
問題は、お友達以上という微妙な関係に突入した時、はて、男性諸君はどうする。
また新人の頃の話だが、原稿を下読みしていて「紫綬褒章」という漢字が読めなかったらしい。
なんで、こんな漢字も読めないのかと、デスクにこっぴどく怒られ、考えた末の答弁がフルっていた。
「それはもらったことがないからです」
大真面目に答えたつもりが、デスクは「ふざけているのか」と沸騰、まあ、確かに当たっているが、それにしても上手い返答だ。
NHKを離れるにあたっては、ほとんどの人が反対だったようだが、次なる民放での船出で視聴率云々と言われているが、彼女を応援したい。
番組で一緒だった、いのっちには絶大なる信頼を置いているようで退職のことも相談したらしい。
だが、後押しとなったお母さんの一言が効いた!
「由美子、人生なんてあっという間ね」
まだ、人生終わったわけではないが、実感が籠っていること、大いに納得できる。