愛に恋

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巴里ひとりある記 高峰秀子

俳優で名エッセイストといえば沢村貞子高峰秀子しか思い浮かばない。

確か日本初のカラー映画は高峰秀子主演の「カルメン故郷に帰る」だったと思うが、撮影後の昭和27年、高峰は一人でパリに飛び、半年間も本名で生活して書いた初のエッセイが本作となる。

日本映画最高のギャラを取った高峰は当時27歳、既に社会人として22年、200本以上の映画に出演するベテラン女優で、外遊する前には持ち家を売って旅立ったというから凄い。

よく子役は大成しないというが長門裕之と高峰だけは別格だろう。

本書はエッセイというより旅行記といった方が適切なのかも知れないが、この後、高峰は25冊に及ぶ著作を刊行している。

生まれながら美人の高峰は、まるでモデルのようなファッションに身を包み写真に収まっているが、彼女ほどの知名度になると、さすがにパリ在住の日本の著名人と夜な夜なレストランでお食事。

併し乍ら持ち金が尽きて知人に借りたと言っているから、よほど大散財をしたのだろう。

帰国後、徳川夢声との対談で、借金を返し、これからまた家を建てなければいけないから大変と言っている。

だがこの後、日本映画史上の名作「二十四の瞳」と「浮雲」に出会うわけだから、名実ともに日本一の大女優になったわけだ。