エッセイ(読書録)
安々となまこの如き子を生めり 「安々と」とは、妻が一度流産した経験があったので、今回は安産だったと言う意味だろう。 名は筆子と漱石が名付けた。 妻の鏡子が非常な悪筆で、少しでも字の上手な子になるようにとの願いから命名、その第一子、筆子の娘が著…
自称、神保町系ライターと言うぐらいの古本道の達人、岡崎武志氏に弟子入りした女流作家、角田光代の古本道入門書とでも言ったらいいのか。 師匠の支持の下、神保町、早稲田、荻窪、鎌倉、そしてウルムチ、ウィーン、ブタペスト、ベルリンと古本を求め、その…
本作は大手出版社113人の投票によって『編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞作品賞』に輝いたとあるが、私としては、どうも納得がいかず異議というか疑義というか腑に落ちない。 著者を最近、あまり見かけないと思たら、こんな本を出版していると知って買って…
殆どタイトルに誤魔化されたといっていい。 一見、読み易そうで簡単な文句。 「子供より古書が大事だと思いたい」 著者の略歴を見ると東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。 専門は19世紀フランスの社会と小説。 博士課程どころか白紙課程終了の私には…
数年前のこと、柄にもなく平安神宮の夜桜見物に出かけたことがある。 途中、神宮の東側の通りを歩いていたら思いがけなく古本屋を見つけたはいいが、なんと木造一軒家がまるまる本屋でビックリした。 入口からしてこのありさまで、二階建ての一軒家を店主が…
高円寺に住む、古本が大好きで貧乏な物書きの話しで目標は! 「10年この町に住んで、そのとき文章を書き続けていたら、俺の勝ち」 というもの。 高円寺の一画で安アパートを7回も転居しながら四苦八苦。 時に電話、ガス、電気、水道も止まり立ち退き2回。 何…
故臼井吉見さんの作品には『安曇野』という大作があるが結局読んでない。 唯一、この人の作品で読んだのは川端康成の死の原因を追究した『事故のてんまつ』という本だけだが既に絶版になっている。 『自分をつくる』というタイトルから分かるよに、私には似…
今日は記事を書くにあたり記憶に留める意味合いもあって昨日の大地震の事を少し書いておきたい。 ブログの性質上あまり個人的なことは書かない主義なのだが今回は例外ということで。 実は毎日記事を更新してはいるが、ここ半月程前からヘルニアが悪化して歩…
工藤美代子という作家の名前はよく目にするが、主に歴史ノンフィクションや評伝ばかり書いている人だと思っていたら、豈図らんや、こんな主題の本まで書く女性だったとは意外や意外。 快楽と書いて「けらく」と読ませているが要はタイトル通りの内容。 閉経…
『或る男の断面』の或る男とは東郷青児のことで、宇野千代の代表作『色ざんげ』は東郷に書いてみないかと持ち掛けられた東郷自身の心中未遂から宇野との結婚についての話しを仮名を使って語られているが、こちらは全て本名で書かれている。 といってもエッセ…
著者は丹羽文雄の長女で、ブログを書くにあたって少しこの親子に付いて調べてみたが私の記憶に間違いはなかった。 丹羽文雄は三重県四日市に1904年(明治37年)11月22日に生まれ2005年(平成17年)4月20日に没している。 つまり満百歳の天寿を全うし文壇の生…
世の中には恐ろしい読書家、乱読家がいるが、私などはとても「読書の腕前」などと言う大それた文章を書ける腕前などは持ち合わせていない。 それでもタイトルに惹かれ読んでしまったが、好みのジャンルも相当違うようで年間3000冊の本が増殖中と聞いて絶句。…
僭越ながら我が家系の事に付いて少し触れたい。 先祖は江戸期を通じ、代々の陣屋で参勤交代の折りなど御殿様に宿泊して戴く福井藩の名主だったが、何を思ったか我が祖父母は大正初期、生まれ故郷を捨て大陸に渡って行った。 満州事変はまだ先の話しで落ち着…
京都嫌いとは何ぞやということに興味を持ち買ってみたのだが・・・! 例えばこんなことを想像していた。 芸子が無理な京都弁を使う。 風俗と寺社が渾然一体となった場所がある。 観光客の多さ。 うだるような暑さ等々。 しかし、予想は大きく外れかなり歴史…
司馬遼太郎さんや吉村昭さんが亡くなって以来、現代作家で好きな人と言われても特にいない。 寧ろ最近では作者よりタイトルや内容で選ぶことの方が多い。 ということで今回の1冊は文壇ではそれなりに有名な人らしいが、私個人は全く知らない人だが経歴を見て…
『ないもの、あります』とはどういう事なのかと購入前には思っていたのだが。 つまり、『ないもの』を売っている店ということになるわけで。 店名はクラフト・エヴィング商会。 著者もクラフト・エヴィング商会となっている。 では、一体、どんな物が売って…
エッセイストというのは、何でもない話しを何でもあるように書き換える翻訳者みたいな職業だと思っている。 日常の生活の中で話題の種になるような事柄を見事に救い上げ料理する。 林扶美子は「翻訳とはチャーハンみたいなものかな」と言っているが、将にそ…
何とまあ煽情的なタイトル。 著者は全く無名の主婦。 しかし、どうなんだろうか、このタイトル。 表紙は購入時にカウンターに置いても恥ずかしくないよう、まるで薄化粧を施したような目立たない装丁。 内容は文字通りそのままで、つまり何と言うか互いに他…
要は『狂うひと ──「死の棘」の妻・島尾ミホ』を読む為の下見として購入した本だが意外に手間取った。 以前『妻への祈り - 島尾敏雄作品集』を読んで、そして今回の本。 その後、『死の棘』『狂うひと ──「死の棘」の妻・島尾ミホ』の流れで4冊読破するつも…
私の場合、物心付いて最も古い記憶のヒット曲と言えば守屋 浩の『僕は泣いちっち』だろうか。 ちょうど、『ダッコちゃん』『フラフープ』が爆発的人気を誇っていた第1次池田内閣時代のことで、当然のことながらテレビに出ている人だけが有名人で作曲者のこと…
もし、自分で母親を選ぶことが出来るとするならば佐藤愛子と答えるかも知れない。 私の父は大正5年生まれなので12年生まれの愛子さんとは釣り合いも取れる。 夫婦であってもおかしくない年齢差だ。 だが、実際の母子となれば喧嘩ばかりしてただろうか。 しか…