タイトルの『日本のゴーギャン』というのはミステイクではなかろうか。
どこに日本のゴーギャンたり得るものがあるのか。
ゴーギャンのタヒチに引っかけて、単に田中一村が奄美大島へ移住したというだけのこと、一村がそれに倣ったわけでもなんでもない。
また、ゴーギャンと違い、やためったら10代の少女を妻にしたような経験もなく、一村は生涯を通じて、女性関係に関しては清廉潔白、やましいところがない。
絵一筋、他の事に関しては眼中にない生活で、作風はゴーギャンなどではなく色合いなどからしてアンリ・ルソーを思わせる。
《アダンの海辺」》(1969年)
《ビロウとアカショウビン》 (1962年)
天才画家のなんという不遇な生涯。絵に殉じ、聖のように生きた一村。その生の軌跡は、気品あふれる作品群とあわせて見るとき、一段と鮮やかに光芒を放って追ってくる。
と著者は書く。
美なる自然をキャンバスに写し取る、ただそれだけに命を削る一生だった。
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