愛に恋

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ピカソになりきった男 ギィ・リブ

想像と創造に富む人は、誰だって模倣から始まると思う。

ギタリストもピアニストもいきなり作曲するのではなく、先ずは誰かの曲を弾くことから始める。

画家にしても同じことで、上手ければ上手いほど模倣そしたくなるものだろう。

個人的なことながら、私の父は、旗艦三笠の艦上に立つ有名な東郷元帥を模倣して表彰されたらしいが、絵心があれば誰だって通る道なのかも知れない。

然し、著者のギィ・リブだけは全く傑出した人生を歩むようになった。

ピカソ、ダリ、シャガールマティスルノワール、ダリ、モディリアーニマリー・ローランサン、フジタなど、名だたる画家の絵を30年間という長きにわたって贋作を作り続けた男が明かす、美術界の知られざる実態で、それを見抜けなかった絵画ファンと、見るゐて売りさばいていた画商など、実に興味深い本だった。

贋作作家というレッテルは張られたが、それほど見分けがつかないとなれば、或はそれはそれで芸術作品なのかも知れない。

誰かの家の壁に飾られている絵も、或は贋作なんていうこともある。