愛に恋

    読んだり・見たり・聴いたり!

珍奇絶倫 小沢大写真館 小沢昭一

かれこれ40年以上前のことだが、仕事帰りにカーラジオで『小沢昭一的こころ』という番組をよく聴いていた。小沢昭一という人は落語家ではないが、めっぽう話術に長けた人で、何でもないような話を面白く聞かせる天才のような人だった。俳優どころかエッセイストとしも才能があり、放送大学客員教授日本新劇俳優協会会長と多彩な人物だ。個人的なことを言うと、男女問わず私は年上の人が好きで、戦中派以上の人の書く文章や俳優さんが好み。私の知らない時代の話を聞きたいのである。寅さんみたいに江戸弁のような言い回しが語られればなお宜しい。小沢昭一写真屋のひとり息子らしいが、親が写真屋を継がせず、もっと偉くなれと言った結果が俳優だったらしい。本書はてっきり道楽を兼ねた写真の話かと思って居たらさに非ず、トルコ嬢、ゲイボーイ、レズビアン、彫りしなど、その道で働く人の苦労話を聞いたルポルタージュのような本だった。御多分に漏れず、小沢昭一という人も昔は吉原、赤線通いに余念がなかったらしいが、その道に勤しむ人はロートレックにしても荷風にしても、人生の悲哀が付きまとう。縁なき衆生は度し難し。しかしヤツガレ、そこに、芸能が人を集める原則を求めて、こちらさんの爪の垢でもプンの垢でも頂戴したいと、はるばるやってめェりやした。向後万端、面体お見知りおかれまして、以後お引き立てお頼ン申します。ってなわけで、拝見に及んだストリップだったんですね。人生の哀歓が漂っている。