愛に恋

    読んだり・見たり・聴いたり!

ジャック白井と国際旅団 - スペイン内戦を戦った日本人 川成 洋

申し訳ないがスペイン人と聞くと、いざ戦争となればその恐ろしい残忍性が浮かんでしまう。コルテスのアステカ帝国ピサロが目をつけたインカ帝国など、彼らが何をしたか読んでみるがいい。文明を滅ぼし抹殺し殺戮と虐殺を繰り返したスペイン人は、ナポレオン戦争の時にもその残虐性を発揮している。ここに書かれたスペイン内戦は通常、攻める側が人民戦線軍といわれるが、この内戦では逆で政府軍が人民戦線軍と呼ばれている。対するファシズムを標榜するフランコ軍が決起して政府軍を攻める。世界55か国の国から多くの志願兵が集まり、総勢4万と言われるが、その中のひとりが炊事班のジャック白井だったんですね。本書は出番の少ないジャック白井とは何者だったのか、綿密な取材を試み、分かった範囲内で証言などを元に書かれている。ヨーロッパを覆うファシズムからスペインを救おうと集まって勇士は次々に死んでいき、拷問されたのちに殺害されることも多々あった。ファシズム、近代大衆社会とともに顕れたこの奇妙にして異常な現象は、危険なものと分かっていながら人々の心を捉え、人々を酔わせた。新しい意匠、ファシズムはきらびやかでドス黒く、現状打破のダイナミズムそのものであると同時に謎めいた悪の華。怒りと飢えが渦巻くときに、新体制を伴う大衆的興奮を背景に、ファシズムは暴力的噴出の道案内をする。その勢力は世界を席巻した。ジャック白井は有能な調理士だったために炊事班にまわされたが、彼は戦闘員として応募しているので、常に銃を担ぎ、その幕切れはあっけないものであったが、スペイン内戦にただひとり打倒ファシズムとして参戦した日本人として語り継がれている。