女流ノンフィクション作家として、昔は角田房子、澤地 久枝、瀬戸内晴美。
現在はノンフィクション作家、堀田恵子、梯久美子、そして森まゆみ。
この6人は絶対な存在で讃辞を送りたい。
資料を虱潰しにあたる著者の凄まじい執念は、私のように浅学の徒にはやや難解だが、それでも苦心惨憺、なんとか読了に漕ぎ着けたが、ところどころ漢文調の文章などあり読みづらいことこの上なし。
膨大な登場人物の事績を追うだけでも大変なエネルギーを要する。
時代の転換点において大きな役割を果たして上野戦争および彰義隊については、今や風化が進み、彰義隊も知らなければ、東京在住の人でも上野で戦争があったことを知らない人も多かろう。
情夫(いろ)に持つなら彰義隊なんて持て囃された隊士と違い、薩摩の侍は芋侍などと蔑まれていたが、軍事の天才、大村益次郎の登場によって僅か半日で決着がついてしまった。
土砂降りの中、黒門口で行われた凄まじい白兵戦は、あの長閑な上野公園での死闘かと思うと想像できない。
膾のように斬り刻まれた死体や首をかき切られた胴体。
著者は、あの辺り一帯を丹念に調査し、一件、一件、彰義隊のことを先祖から訊いていないかと聞いて歩いたとか。
ノンフィクション作家に必要なのは刑事のような執念だ。
まさに私が理想とする女性ではないか。