愛に恋

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太平天国 皇帝なき中国の挫折 菊池 秀明

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そうか、「太平天国の乱」とは日本でいえば幕末に当たるわけだ。

人類史上最悪の内戦で、14年に及ぶ闘いは江蘇省だけでも死者2000万人というから凄い。

中国人は残忍だと思っていたが清朝軍も太平天国軍もまるで虫けらのように殺戮を繰り返す。

太平天国というのはキリスト教という外来思想の影響を受けながら、儒教の貧しきを憂えず、均しからざるを憂うという中国古来の伝統価値観への回帰を目指すものだが、どうもその原理主義の源が胡散臭い。

神のお告げのようなことを信じている。

天から命令を受けることは「兵権」つまり王権を与えられることであり、洪秀全の幻夢体験を聞いた信者たちは、洪秀全こそ救世主に違いないと思ったそうな。

つまり上帝会の政治結社への変容はユダヤキリスト教のメシア待望論が中国社会の文脈で読み替えられた結果なんですね。

その結果、彼らは至る所で、孟子孔子寺廟など破壊尽くす。

太平天国は「減満興漢」と言っているので、これ即ち、満州人の駆逐と我等こそ漢人であると言いたいのだろう。

そして皇帝以前の中国への回帰を目指した復古主義は南京を根城に各地を転戦。

清朝軍と激しい闘いを繰り返した結果、北京を攻略することが出来ず、主だったものは全て処刑され潰えていく。

夢、幻の栄華かな。

なんか虚しい結末だが、陥落した城内に籠る敵軍や市民など皆殺しにするなど、19世紀にあっては人の命など虫かけら同然なんですね。