愛に恋

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ある奴隷少女に起こった出来事 ハリエット・アン ジェイコブズ

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本書は、以前の女主人から読み書きを習った奴隷少女が、自らの苛酷な体験を綴った稀有な物語で、世界的ベストセラーになった本らしいが、私は最近まで知らなかった。

これまで奴隷制度に関してそれなりに知っていたが、奴隷本人が語っているために、その体験記は生々しい。

奴隷は犬・猫と同じで、子供が出来た場合でも所有者の赴くまま、金銭売買で自由に売り買い出来、親子は否応なく引き離される場合がある。

また、主人によるレイプなどで妊娠した時なども売り飛ばされたりもする。

自分の人生は、いい主人か悪い主人か、ともあれ主人の気持ち一つ次第なのだ。

当然、逃亡を考えたくもなるが、上手く出来たもので、当時は南部の州法などで、それ

に加担した者、さらには逃亡奴隷を殺害しても法に触れない。

逃亡奴隷は捕まれば見せしめのため拷問などを加え、無惨に殺戮されるのがオチ。

生涯を主人の為に従順に尽くす、それが奴隷の運命だが、著者は主人の意向に逆らって、恋人との間に二人の子供を儲け、敢えて逃亡奴隷の道を歩むという挙に出るが、立つことも出来ない狭いスペースの屋根裏に7年半も身を潜め、協力者から食事を運んで貰い、いつか北部に逃避行して愛する二人の子供と一緒に生活できる日を夢見て本編を綴っているが、実際、嫌になるほど辛いノンフィクションで、南部の人間は獣心かと思うほど吐き気のするような者たちばかりだった。