愛に恋

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囚人服のメロスたち 関東大震災と二十四時間の解放 坂本敏夫

江戸の昔から大火災などがあった場合は、牢獄に繋がれている囚人を三日間だったか、解き放つなんて聞いたことがあったが、関東大震災のおり横浜刑務所の典獄・椎名通蔵は、倒壊する建物に身を置く囚人たちの安全のため、世界初の完全開放処遇を決断した。条件は24時間以内に再び戻ってくること。彼らの帰りを信じる看守とそれに応える柿色の服を纏う者たちの厚い信頼関係を描いた作品。椎名通蔵の人柄が脱走者を出さず「義を見てせざるは勇無きなり」といわぬばかりに、その後の刑務所復興などに大いに役立った彼ら囚人の人情を描いている。