愛に恋

    読んだり・見たり・聴いたり!

時代小説・歴史小説(読書録)

孤宿の人 (下)   宮部 みゆき

本作の舞台は四国の小藩、丸海藩となっているが、もちろんフィクションなので架空の藩だが、モデルは讃岐の丸亀藩で、幕末、永預けとなり明治元年の大赦を受けるまでここで流人生活を送っていた”妖怪”鳥居耀蔵で有名なところだ。上下巻併せると千ページほど…

等伯 下  安部龍太郎

本作は13年の直木賞受賞作らしい。さすがによく調べ仏教、寺社に関して盛んに出て来るのでやや読みづらい。狩野派と長谷川派が凌ぎを削る秀吉時代の繁栄と三成のあくどさが全面に出ているが、どうなんだろうか、三成は利休を自害に追い込み、等伯の長男を狩…

等伯 上 安部 龍太郎

どういうわけか最近歴史小説、時代小説ばかり読んでいる。もともとカタカナ、英語が出てこない小説が好きなのだが、歴史が趣味の私でも、絵師、または絵史に関しては全く無知で、錦絵と作品が結びつかない。さらにはその人が生きた年代も分からない。一般的…

落語小説集 芝浜   山本 一力

『芝浜』『井戸の茶碗』『百年目』『抜け雀』『中村仲蔵』と古典落語の人気演目を小説化したものだ。落語に悪党が出て来て人を殺し、そのまま逃げ通すなんていう噺はない。どの噺もエンディングは素晴らしい性格の人物像が現れ終わる。気持ちも穏やかな優し…

広重ぶるう  梶よう子

読者の中には安藤広重と覚えている方もおられようが、これは広重の本姓で正しくは、歌川門下に入ったので歌川広重が正しいらしい。私は好んで時代小説や歴史小説を読むが、戦国期や幕末維新の他はさして詳しいわけではない。ましてや錦絵に関してはずぶの素…

樅ノ木は残った  山本周五郎 上・下巻

調べてみると『樅ノ木は残った』は、昭和45年1月4日 - 12月27日まで放送されたNHK大河ドラマ全52回で放送されていたんだね。主演は平幹次郎で今や亡くなった多くの俳優さんが出演している。私はそれ以前の『赤穂浪士』と『太閤記』は見たのだが、わけあって…

魚の棲む城 田沼意次の大いなる夢  平岩 弓枝

平岩弓枝さんの名は以前から知ってはいたが作品を読むのは初めて。しかし本書のお陰で、中学のころに習った賄賂政治の悪だくみのようなような政治家のイメージが一変して、実に興味ある人物として俄然、田沼に関する他の小説も読みたくなってきた。本書によ…

腐れ梅 澤田 瞳子

いくら私が歴史好きといっても平安京の昔のことはまったく知らない。東国の平将門の兵乱、西国の藤原純友の謀反など、菅原道真が起こしたものだと思われていたらしい。また清涼殿落雷事件、相次ぐ都人の高官の死などもあって、菅原道真の祟りか、巫女の騙り…

山本周五郎名品館I おたふく 山本周五郎

例えば好きな作家の600ページ8編の短編集と、600ページ1冊の長編ならどちらを選ぶかといえば、とうぜん長編を選ぶ。私は長編が苦にならないしどれだけ長くてもいい。しかし短編集は読み進めていくうちに先の内容をわすれていってしまう。タイトルをみても思…

奸婦にあらず  諸田 玲子

10年程前、付き合っていた女性が京都の詩仙堂に行きたいというので、知らない寺だったが電車に乗って付いていったら、何と降りたところが一乗寺だった。一乗寺と言えば宮本武蔵が吉岡一門と決闘したところではないか。しかし降りてみると閑静な住宅街で、私…

山本周五郎名品館1 おたふく 山本周五郎

例えば好きな作家の600ページ8編の短編集と、600ページ1冊の長編ならどちらを選ぶかといえば、とうぜん長編を選ぶ。私は長編が苦にならないしどれだけ長くてもいい。しかし短編集は読み進めていくうちに先の内容をわすれていってしまう。タイトルをみても思…

さぶ  山本 周五郎

山本周五郎という筆名は、若尾い頃、山本周五郎質店に徒弟として住み込みで働いていたことに由来するらしい。本書のタイトルが「さぶ」である以上、当然主人公はさぶだと思うのだが、結局、最後まで前面に出ていたのは有人の英二だった。その英二が職人とし…

寂しい写楽 宇江佐真理

いくら江戸時代に興味があるといっても、私の得意とするのは前期と後期。松平定信の寛政の改革や水野忠邦の天保の改革、田沼意次の賄賂政治などはよく知らない。よって、山東京伝、北斎、歌麿、写楽、豊国、太田南畝、滝沢馬琴、十返舎一九らが同時代人で、…

のち更に咲く 澤田瞳子

この人の経歴については以前にも書いたような気がするが、同志社大学文学部文化史学専攻卒業。同志社大学大学院文学研究科博士課程前期修了とまあ輝かしいばかりで、このぐらいの学歴がないとこういう小説は書けないのか、しかし私の苦手な平安期の話。格調…

火定 澤田 瞳子

先ず、この名前からして読めなかった。ひとみこでは可笑しいと思いつつ調べてみるに「とうこ」と読むんだね、知らなかった。次に劈頭からして難しいのでどんな経歴の持ち主かと思いきや、同志社大学大学院文学研究科博士課程前期修了だってさ。このぐらいの…

大名倒産 (下)浅田次郎

相対的に面白い設定で尚且つ読み応えのある内容だったが、個人的には全編シリアスな話でも良かったようにも思う。「新田の開拓」「産業の奨励」「節倹の徹底」など、苦労した末の返済にして欲しかった。七福神や福の神、貧乏神といった非現実な神々の出演は…

大名倒産 (上)浅田次郎

浅田次郎という人はとにかく博学だ。 まるで江戸時代の人が書いているようで、時代考証、武家言葉など小説の名手といっていい。この人は現代劇、時代劇と両刀使いで、とにかくよく調べている。 架空の藩である三万石の御領国・丹生山を継いだ四男の小四郎は…

漂砂のうたう 木内 昇

『櫛挽道守』で第9回中央公論文芸賞を受賞に続いて二冊目の本だが、この人、木内 昇と書いて(のぼる)ではなく(のぼり)で女性作家なんですよ。本作は直木賞受賞作で、維新から10年、武士という身分を失い、根津遊廓の美仙楼で客引きとなった定九郎。自分…

渦 妹背山婦女庭訓 魂結び 大島真寿美

第161回直木賞受賞作。「妹背山婦女庭訓」や「本朝廿四孝」などを生んだ人形浄瑠璃作者、近松半二の生涯を描いた比類なき名作! この人物は近松門左衛門と縁戚関係にあるわけではないが、大阪の儒学者・穂積以貫の次男として生まれた成章は、末楽しみな賢い子…

幕末まらそん侍  土橋章宏

幕末の安中藩士たちが行う「安政遠足(とおあし)」を題材にした小説で、五代藩主・板倉勝明が安中城から碓氷峠までの二十八キロの「遠足」を藩士に命じた記録が、1927年に刊行された群馬県教育会編の『群馬県史』に書いてあるらしい。勝明は開明的な人物で…

決算! 忠臣蔵 中村義洋 山本博文

私が生まれて初めてひとりで映画を観に行ったのは、まだ小学生の頃で、何と東映の『忠臣蔵』だった。出演は東映のオールキャストで長谷川一夫、市川雷蔵, 勝新太郎, 山本富士子, 京マチ子, 淡島千景, 木暮実千代, 若尾文子, 中村鴈治郎(二代目), 黒川弥太…

櫛挽道守  木内 昇

本作は中央公論文芸賞、柴田錬三郎賞、親鸞賞受賞作の大作で読むほどに唸るような作品だと思う。 私が審査員でも間違いなく一票を入れたであろう文句なしの小説ではなかろうか。 多少、時代考証や方言など難しいところもあるが、ストーリーなどどこまでも読…

義民が駆ける 藤沢周平

記録によると第11代将軍徳川家斉は特定されるだけで16人の妻妾を持ち、53人の子女(男子26人・女子27人)を儲けたが、そのうち成年まで存命したのは約半分の28人だったと言われる。本書はその徳川家斉の命により、三方国替えが筆頭老中水野忠邦によって断行…

引っ越し大名三千里 土橋章宏

どこまで史実に基いているのか知らないが、たまにはこういうコミカルにして軽妙なタッチの時代小説を読むのも息抜きとしてはいいね。生涯7度も国替をさせられた松平直矩、この引っ越しの差配を任ぜられたのが、うだつの上がらなかった片桐春之介、通称、引っ…

輪違屋糸里 (下)  浅田 次郎

下巻ではいよいよ近藤一派と芹沢一派の争いになるわけだが、どうも様子が今までとは少し違う解釈になっている。近藤と芹沢は仲違いしたとも思えず、意外に仲がいい。二人して祇園に出かけ飲んでは遊び、話し合いも親密だ。然し、会津中将に呼ばれた近藤一派…

悪玉伝  朝井まかて

この人の本を何冊か読んでいるが、現代では時代小説を書かせたらこれほど上手い作家もいないと思う。 もう名人の域だろう。 『恋歌』第150回直木三十五賞受賞。 『阿蘭陀西鶴』第31回織田作之助賞受賞。 『眩』第22回中山義秀文学賞受賞。 『福袋』第11回舟…

吉原手引草  松井 今朝子

直木賞作家の松井今朝子という人は、まあ、恐るべき時代小説家だよね。 経歴を見ると1953年、京都・祇園にある料亭の娘として生まれる、聖母学院中学高等学校卒、早稲田大学第一文学部演劇学科卒、同大学大学院文学研究科演劇学修士課程修了後、松竹株式会社…

方丈の孤月 梓澤 要

先ほど読んだ「貧乏は幸せにのはじまり」によれば、方丈とは一丈が約3メートルなので現在の4畳半に当たるらしい。 同時に寺の住持の部屋を「方丈」と呼ぶ。 京都賀茂御祖神社の神職の家の生まれながら、若くして父母を失い出世の道を閉ざされた鴨長命は、…

そろそろ旅に 松井今朝子

まあ、何と言うか時代小説は斯くありなんとでも申しましょうか、素晴らしい書き手ですね。 彼女の経歴を見るに1953年9月28日生まれで、早稲田大学大学院修士課程を修了とあるが、このぐらいの学歴がないと、こんな小説はかけないんでしょうか。 私が感心した…

鶴屋南北の恋 領家高子

鶴屋南北、彼の作品ほど私の少年期を苦しめたものはない。 父の言う怪談が何のことか分からず「階段」がなぜ怖いのかと薦めらるまま見たのが奈落の一丁目。 真夏の夜の「四谷怪談」、これほど恐ろしい映画もなかった。 天下の二枚目、長谷川一夫演じる田宮伊…